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hontoレビュー

重力ピエロ

重力ピエロ みんなのレビュー

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みんなのレビュー931件

みんなの評価4.0

評価内訳

931 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

自分を肯定して生きていく為に

2006/08/02 10:57

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ポプリ - この投稿者のレビュー一覧を見る

異色なミステリーだ。28年前に30回以上の連続レイプ事件が起こり、その時美人の若い母親も強姦され妊娠した。夫は迷ったけれど心優しくて、出産の許可を出し、そして主人公である私・和泉に2歳年下の弟「春」が生まれたのが、事の始まり。幸せな家族だったが、妬みもあって近所からは強姦魔の子どもだ、との陰口が続いた。
その春が27歳の時に、昔の連続レイプ事件と同じ場所で、連続放火事件が発生した。そこに謎めいた落書きが発見され、そしてかつての強姦魔が殺された。その事件の現場には、必ず春が居合わせていたのだ…。この春は、育ての父親を深く愛し兄とも強く心が結ばれ、優しさや悪を憎む強さがかっこ良くて、読後感をとても良いものにしている。
春を追いかける整形美人のストーカーが面白いし、春の母親(レイプの被害者)は魅力的で、人物が、強姦魔以外はみな素敵で華やかに登場する。
レイプの結果生まれた子、という設定がシリアスで真正面からレイプを扱ってこの作品はゆるがない。遺伝子DNAの二重ラセンがキーワードになって少し複雑な感じがする。タイトルの「重力ピエロ」の意味は、《空中ブランコのピエロは楽しそうだから落ちるわけ無い》《楽しそうに生きていれば地球の重力なんてなくなる》、という、春の両親の会話の中にある。
読み終わって、「あ〜面白かった。本当に面白かった」と、心のそこから思えた。本当は、こんな風には生まれてきたくなかった春、自分の中にある強姦魔の遺伝子を憎む春が、自己を肯定して生きるために、赤の他人の実父を仇にするという、重いテーマだけれど、ユーモアたっぷりに楽しく書かれていて、涙が出るほど楽しめる。(あっ、つまりは、春はピエロなんだろうか、哀しく切ない憐れな、ホンモノのピエロ)

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紙の本

重厚なテーマとユーモアが織り成す物語

2005/06/22 16:50

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:和音 - この投稿者のレビュー一覧を見る

遺伝子を扱う会社に勤めている私に街の落書き消しをしている弟の春から「兄貴の会社が放火に遭うかもしれない」とメッセージが入る。そして本当に会社が放火に遭ってしまう。春は、連続放火事件のルールを見つけたという。放火現場の近くには必ず落書きがあるというのです。
過去のあまり思い出したくない事、自分の存在意義にも関わる事、と重たいテーマが全体を通して横たわっているにも関わらず、それほど重たい空気を感じずにいられるのはこの3人家族の底抜けに?明るい会話というか、相手の事をしっかり考えた上での言葉だったり、愛情が感じられる会話のせいなのかなと思う。癌やらストーカーの話をしている時だって本当に困っている風ではなく、どこか楽しんでいる感じがします。しかもそれにユーモアがある。あと、他の伊坂作品に登場した人物がゲスト出演しているのも楽しい。
途中、「後から考えると」とか「今からしてみれば」という言葉がよく出てくるので最後にこんな事が起こるのでは?と思い、だいたいその予想が当たってしまうのだけれども、それで面白さが半減してしまう事もない。少し理屈っぽい会話だと思う人もいるかもしれないけれど、私は大いに楽しめました。
この作者の本をいくつか読んできて思ったこと。ユーモアのセンスが抜群によいのではないだろうか?おじさんのダジャレのような気まずさはなくて安心して楽しめる。このユーモアの風に当たりたくてこの人の本をまた手に取ってしまうのかもしれない。

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紙の本

陳腐な言葉ではあるが、これはまさに心温まる類の話なのである。

2004/08/01 21:14

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 最初に断っておくけれど、僕がこの手の小説を褒める時はトリックや謎解きの巧さを問題にしているのではない。そういう面での評価を知りたいのであれば、他の方の書評をお読みいただきたい。で、僕はこの小説を褒めたいと思う。
 僕が小説を読む時に常に気にしているのは、ちゃんと文章が書けているか、とりわけ人物がちゃんと描けているかどうかということである。
 文章の書けない作家(これはほとんど形容矛盾を来しているが)の場合、読んでいると文章のぎこちなさに引っ掛かってなかなかストーリーに集中できない。人物をちゃんと描けない作家は、ストーリーを説明するための言葉を登場人物に喋らせたりする。そうすると人物が崩壊する。優れた小説の登場人物は、一旦形成されると作家の手を離れて勝手に歩き出したり喋り出したりするものだ。
 そういう意味で、この小説はよく書けている。とりわけ人物がちゃんと描けている。それに加えて、この作家はところどころに言わばアフォリズム(警句)のような、「ほほう」と感心するような気の利いた一節を紛れ込ませるのが巧い。参考・引用文献も多く、いろんな要素を詰め込んでなかなか欲張りな構成である。
 泉水と春の異父兄弟の話である。しかも、弟の春は強姦によって生まれたと言ういささか仰天する設定である。この2人が放火犯を追う。
 「このミステリーがすごい!2004」国内編の第3位だそうである。ただし、帯に書いてあるような「感動」とか「興奮」とかいう印象とはほど遠い。これはひとことで言うならば「心温まる」ストーリーである。そう、陳腐な言葉ではあるが、これはまさに心温まる類の話なのである。泉水も春も父も母も夏子さんも探偵も、ちょっと変わってはいるが、皆一様に明るく、常に前向きである。そういう人物形成に心が温まる。登場人物に魅力がある──それがひとえにこの本の魅力である、と僕は思うのである。
 犯人が誰かはすぐに判る。そんなことはこの小説の価値を少しも減じたりはしない。これは読んでいて生きる力の湧く小説である。心がほころぶ小説である。泉水と春という名前にそれが込められている。

by yama-a 賢い言葉のWeb

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紙の本

深刻なことは陽気に伝えるべきです。

2005/01/31 02:08

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ざれこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

伊坂氏の作品は今まで3冊読みましたが、いまのところ一番好きかな?
どの作品も軽くおしゃれな文体の中にそれなりのメッセージがこめられていて
温かい作品ばかりですが、その持ち味が一番生かされてる気がします。

遺伝子を扱う会社にいる兄、弟の春は母がレイプされて産まれた子だった。
母はすでに亡くなり、兄弟の父は癌におかされ入院中。
落書きを消す仕事をしていた春、最近の連続放火魔と落書きとの関係に気づき…

なんかなあ、こうやってストーリーをかいつまむと凄い暗い話みたいなんだが、
兄弟のしゃれた会話、そして癌までも皮肉のネタに使う父親との会話、
そんなもの中心に話は進むので全然暗くない。無理して明るくしてるわけでもない、
「深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」という春の台詞どおり、
そこには底抜けの明るさ、ポジティブさが漂っていて、
読む側も、深刻な要素を暗くなく、だけど読み流すんじゃなくて受け入れることができる。
それはなんだか不思議な感覚だった。

兄は兄で何かたくらんでいて探偵を雇い、そして春が関わってくる連続放火、
春に絡む謎の美女、そして病院で父は放火魔について安楽椅子探偵もどきに推理し、
彼らがどんどん収束していって一つの結末に至るその筋書きは、相変わらず見事。
でも今回は先が読めましたね。私のような単細胞にも読めるってことは、
推理をして欲しい物語ではないってことじゃないかな。話は読めても面白いし。

でも最後まで読むと、予測不可能の温かさで心が満たされ、
不覚にも涙しそうになりました。
遺伝子を扱う仕事をしている兄、という設定、遺伝子が散々語られつつも
血のつながりを全く無視した彼ら3人の家族愛、ほほえましいし泣けます。

それでもラストには、完全に血のつながりを無視できなかった彼らの悲しみがにじみます。
結末はざまあみろなものでしたが、それでも一抹の切なさはぬぐえず…
でもおかげで3人がいかに強い絆だったかがわかって嬉しい気持ちもあり。

春がまた、なんだかとても魅力的です。私だって惚れるわよ。
細かいことですが春は犬が大好きで、道で出会うと落ち着かないほどらしく、
同じくそうである私はとても共感しました。犬好きに悪い人はいないのさー

それから会話の洒落っぷりはもう素晴らしいですね。
身もだえするほど洒落てます。

それから、伊坂氏の作品は仙台が舞台、そしてかなりつながりがあるようで、
今まで読んだ「オーデュボンの祈り」のあの人も、
「ラッシュライフ」のあの人も、今度は探偵で登場です。探偵がまたカッコいいのよ。
多分ほかの本を読めば、あ、あの本のあの人も出てた、って
ことになるんだろうな、とか思いつつ。
ますます彼の本を読む楽しさが増えそうです。

小説は話の面白さも大切だけど、キャラに惚れさせてなんぼ、ってとこがあると思うから、
そういう意味では彼の作品に出てくる人は(悪役除き)全員カッコいいし魅力的。
すごいことだ。

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紙の本

心地よい読書

2003/06/02 19:20

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:笹岡さら - この投稿者のレビュー一覧を見る

とっても心地いい。読み終えた後に、体にじんわりと染み込んでくる
あたたかさが、たまらなく私を幸福にしてくれる。
ああ、読書と言うのはこう言うものなのだ、だからやめられないのだと
人に大声で宣言したいような、けれどこっそり自分の胸だけに
留めておきたいような。
決して派手ではない。けれど、確かな感触、感覚。
たっぷり味わえる、登場人物たちの交わす言葉の数々。
ユーモアに満ちていて、優しくて、不思議な雰囲気をそれぞれまとった
登場人物たちがとてもいとおしい。
何でこう言う作品が書けてしまうのだろう、とただただ感嘆。
百冊本があって、似たような雰囲気の本があって、ただ並べられていても、
「伊坂幸太郎さんが書いた本は、これだ」と言い切れるほどの、
優しく、不思議で、痛くて、けれどほんわかした独特の雰囲気に満ちた作品です。

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紙の本

出だしから印象的

2015/08/31 21:07

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:FUMI - この投稿者のレビュー一覧を見る

出だしから印象的な作品。
 設定も複雑な家族構成・・・
 重たいテーマ性でありながらも、そんなに暗くなりすぎずに読み進めることができる作品。

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紙の本

明快な魅力で見せる、最上の「父性」とその秘密。

2003/08/04 23:34

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:3307 - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、「胸に残り、護り導く言葉」の贈り手である
理想の父親が、守り通した家族の物語です。

『オーデュボンの祈り』で噴出したイメージの塊。
『ラッシュライフ』で証明した構成力。
これに続く本書だけに、魅力も読み易さも保証つき。
先がどんどん知りたい一冊に仕上がっています。

  数回会って会話をする程度では、父の価値は分からない。
  (本書P65から引用)

尊敬を込めて長男からこう評される彼は、
その生き方で、その言葉で、家族を護ります。

悪意や暴力ではなく、美しい何かを自分の中から
引き出そうとする生き方は、贅沢なのでしょうか。

「お前も人間じゃないか。イイかっこするなよ」

いじわるな笑みを浮かべた神様が、その人の耳元で
こんな風に届かない言葉を呟いて、人生で出会う
理不尽のさじ加減を多めに調整している気さえします。

命や人生を尊敬して生きることは、贅沢なのかもしれません。

でも、この父親は、この家族は、そんな泣き言を漏らしません。
正解が無いことを承知の上で、自ら選んだことを自覚しているからです。

かといって、悲壮感を漂わせて歯を食いしばることもしません。

  「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」春は、
  誰に言うわけでもなさそうだった。
  「重いものを背負いながらタップを踏むように」
   詩のように聞こえた。
  「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、みんな重力のことを
  忘れているんだ」
  (本書P75から引用)

軽やかに、温かく、笑いも忘れない、言葉。
だから、胸まで届く言葉。

それは、闇夜の嵐が続いて、どんなに迷っても必ず
その場所まで戻れば一息つける、起点になる灯り。

そんな言葉を、どの子の胸にも灯してあげることは困難です。

なぜなら、狙って贈る言葉ではなく、暮らしの中に
満ちた言葉から、その子自身が選ぶ物だからです。

それだけに、父性から発することができる
最も確かな愛情になるのでは無いでしょうか。


軽々と、理想的な父性を発揮して見せるこの父親。

その魅力は理解できても、一つの完成を見た
彼の姿だけでは、「ある立派な人が居ました」
というだけの話で終わります。

でも、大丈夫。物語は受け継がれます。

際だって美しい謎めいた弟に振り回された兄。
彼がもがく姿は、きっとそのまま、この父親が
かつて通った道なのでしょう。

だからこの物語を読み通すと、強く報われた気持ちを覚えます。


家族の記憶がもたらす、濃密な喜びにひたる一冊。

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紙の本

最近はね、北上次郎が褒めてる、って聞くとね、それだけでちょっと待てよ、って思うことにしている。やっぱり、今信じられるのは自分の目、というよりは勘かな。結構外しまくるけど

2003/07/06 23:41

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

何が良いって、やっぱブックデザインでしょ。この佇まいを見てミステリを思う人はいない、そういったレベルの本だね。夢のあるカバー写真は三谷龍三、装幀はブックデザインに冴えを見せ続ける新潮社装幀室。その美しさは、完全にクレストブック。本の色合いはポール・オースター、漂う静けさはイアン・マッキュアーンのそれといってもおかしくない。

で、この本、やけに評判が良い。まず文章、少しの軽薄さもなく、緊密なそれは、一種純文学の香りがする。しかも、ミステリ仕立ての割に、あんまりトリックに頼っていない。血、と言うものをテーマにしながら、そこに幾重もの現代的な事件を詰め込んでいく。しかも印象は静か。闇がまとわりつくような感じだ。

舞台は現代の仙台。泉水は遺伝子情報を扱う会社「ジーン・コーポレーション」に勤める独身の男性。1971年生まれとあるから、小説では30の大台に乗ったか乗らないかギリギリのところ。彼には春という2歳年下の弟がいる。春は、母親が未成年の暴行魔にレイプされてできた子供で、当然、泉水と血の繋がりはない。父親は公務員だけれど、今は胃癌の手術のために入院している。十代の頃からモデルをしていて美人で評判だった母親は既にない。

春は、未成年だったために名前も明かされていないレイプ魔の血を受け継いだのか、それとも父の言うように彼の生まれた1973年4月8日がパブロ・ピカソが亡くなった日にあたるせいか、絵画に天才的な才能を見せる美男子だが、自分の出生のせいだろう、性というものに嫌悪感を抱いている。

泉水に、弟から掛かってきた電話は、兄の勤める会社が入っている建物が火事になるかもしれないというものだった。予言通りの火災に遭った泉水は、落書き消しを仕事とする春に予言の根拠を尋ねるが。仙台に連続する放火事件。事件を告げるかのような謎の印。高校以来再び絵筆をとるようになった弟が見せる輝くような才気。そして泉水に近寄る謎の美女。

手抜き気味にキーワードを羅列すると、私立探偵の黒沢、謎の組織、残された文字、遺伝子情報、テロメア、ネアンデルタール人とクロマニヨン、レイプ、ゴダール、ゴルティエ、未成年の犯罪、宙を舞うピエロ、泉水が好きなクロスワード、女子高生に売春をさせる男、仁リッチと自ら名乗る社長。町に氾濫するグラフィティアート。

推理小説としては標準的だけれど、読ませる力はある。なんといっても『オーデュボンの祈り』で、喋る案山子をマジで登場させ、おまけに殺人?事件の被害者にしてしまった伊坂。といっても文章は、舞城王太郎や京極夏彦の、新しい時代を告げるものとは明らかに違うオーソドックスなもの。

伊坂の独自性は、彼がメフィストを舞台にして出てきた作家ではないこと、今、全盛を謳歌する京大を筆頭にした関西勢力(いやあ、今年はタイガースの快進撃があって、もっと気勢をあげてるかもね)ではなく、東北大学(なんと、あの田中耕一さんと同じ、ま、田中さんも結局は京都にいるんだけどね)法学部出身ということにも関係するのかもしれない。リズムで読ませるよりは、じっくり字面を追わせる文章が、ノベルズ作家花盛りに飽いた読者を擽っての高評価、私はそう読む。

だから私は、どちらかと言うと伏線がうまく生きている、ちょっと出来すぎの感がある『陽気なギャングが地球を回す』のほうに肩入れするし、やっぱり伊坂のベストと言えば『オーデュボンの祈り』と言いたい。はやく、その書評が投稿できるようにしてくだせい、お代官様、いや、新潮社さまあ、おねげえだあ。

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紙の本

必要なもの

2007/09/10 12:31

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夢の砦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

前向きな小説である。小説を読む意義は何かと問われれば、答えは幾通りも存在しうるであろうが、「明るく前向きに進んでいくために必要なもの」という解答も許容範囲であろう。現代社会の閉塞感を笑い飛ばすためには、このような小説が今必要とされていると思う。

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紙の本

「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」

2003/10/24 21:45

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:nory - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公の男性には2歳違いの弟と癌で入院している父親がいる。弟は母親がレイプされたときに宿った子だ。当時、少年だったレイプ犯を見つけだした主人公は復讐を企てるが、弟の方が先に事を運ぶ。

これだけ重いテーマをこれだけ軽やかに描くことができるとは、首をかしげてしまうくらい不思議である。その秘けつは小説の中に出てくる「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」という一点にある。
深刻なことをを深刻に伝えても、人は耳を貸そうとしない。凍り付いた笑顔のピエロの空中ブランコなんて見たくもない。楽しそうに飛んでこそ、そこにある重力は消える。

宿命ともいうべき荷物を背負った家族だが、一番の被害者であった母親も含めて本当に楽しそうに生きている。楽しく生きることによって、宿命を吹き飛ばしている。
実の親と育ての親などど世間はいうが、この父親はあらゆる意味において実の父親だ。たったひとつの違いは遺伝子だけなのだ。どんなときも息子を受け入れ、力になり、守る。しかも軽やかに。これを父といわずして、何をいうのか。

もうひとついえば、兄の名前は「泉水」、弟の名前は「春」である。どちらも英語では「スプリング」だ。ここにも出生はどうであれ、親の公平さが表れている。
そして最後に父はいうのだ。「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」と。ここでも父は軽やかに息子を救う。重力を消したピエロのように。

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紙の本

「おもしろい本ない?」と聞かれたら薦めたい本

2003/06/02 01:59

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:とみきち - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「おもしろい本ない?」と尋ねられて困ることが多い。普段から本の情報を交換している友人になら即座に答えられるが、何を読んでいるのかもよくわからず、一体本など読むことがあるのだろうかと思われる人に「おもしろい本」と言われて、何を薦めればよいのだろうと。が、しかし、この本はその答えとして最適だ!と読み終えてすぐに思った。読み物としておもしろいので、読書習慣のない人にも薦められるし、力のある作者だという点で、本好きの友人の感想も聞きたい本であるからだ。
 弟の春から「兄貴の会社が放火に遭うかもしれない」と電話を受けた翌日、実際に放火が起きた。春の言によれば、壁にスプレーによる落書きがあれば、その近くで放火が起きるというルールがあるらしい。兄弟で、放火犯人を捕まえようと謎解きを開始する。
 「春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ。俺たちは最強の家族だ」と断言した父親は、「地味で、目立たず、特技もないが」、凄いと春の兄である私は感じている。そう、このストーリーの核となるのは、母親が未成年にレイプされたことで生を受けた春の出生事情なのである。主人公の勤務する遺伝子の関係の会社、性的なものを嫌う春の性質等と絡んで展開していく。
 というと、くらーい話のようだが、どっこい、全体のトーンは読者サービス満載の劇画調の読み物になっている。目次を見てみれば、それは一目瞭然。細かく章立てされたそのサブタイトルは、例えば「ジョーダンバット」「トースト」「父の憂鬱とシャガール」といった具合。
 極端に性格づけされた多くの人物が作中に登場するが、人間として上質の人と下等な人とに大きく二分されており、上質な人間が下等な人間に最終的に勝利するという、単純な勧善懲悪の冒険物語とも言える。ストーリーを書くとおもしろみが半減するので控えるが、個人的な感想としては、ガンジーを愛し、哲学的な言葉をはき、社会の何からも言動が規制されない、芸術的センスを持った春という人間への作者の強い憧憬が感じられて興味深かった。

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紙の本

何が彼らを、私たちを救うのか…。

2004/06/30 15:57

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る

 弟は母親がレイプされて出来てしまった子だった。父親は生む決意をした。そして、母親が亡くなり今父親は癌で入院中である。そんな時、弟がボク(語り手)に街で起きている放火事件と塀の落書きの関係について奇妙な話を持ってきた。謎を追究していくと…。

 …と、まあ、こんなお話であります。兄と弟の関係、どのように二人が現在まで付き合ってきたか、が二人の軽妙な蘊蓄有る会話で浮き彫りにされ、またそれがふたりの存在感を深めています。ストーリーは何となく先が読めてしまう程、謎はあるもののシンプルだと思います。母親のレイプ事件以外に(それを含めても)衝撃的な描写など無いので底に流れているテーマも見えにくく派手な展開も無いので見逃しそうになるのですが、実は重いテーマを抱えています。実はその辺に身を置かないと感動も得られないので、以外と評価の分かれる本じゃないかと思います。

 1997年神戸酒鬼薔薇事件は今思えば新世紀犯罪の幕開けを暗示する事件だったのかもしれません。昨今の新聞では中学生が数十人にリンチされ埋められた死体が発見されたとのこと。アレからもどんな小説をも上回る悲惨な事件がどれほど有ったでしょうか。松本サリン事件の教訓から被害者の人権が守られてきたでしょうか? 犯した罪に見合う罰が加害者に与えられたでしょうか? 少年法は改正されたのでしょうか?
 犯罪は増加し検挙率は低下し善良な市民の安全は脅かされ殺伐とした暗澹たる世界は益々広がってきて、犯罪を抑止する為の手段などとられる事もなく際限なく起きる事件の前でボクらはただ立ちすくむだけなのです。

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紙の本

ノックの音

2003/04/30 21:50

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投稿者:なゆた - この投稿者のレビュー一覧を見る

これは放火事件の話だ。
これは落書きの話だ。
これは家族の話だ。

そしてこれは最強の話だ。

ある連続放火事件が起こり、弟が見つけてきた証拠を元に
父と兄は推理を始める。初めは遊び半分に。次第にのめり込んで。

のめり込むのは、読者である僕たちもおんなじだ。
飲み口の良いカクテルみたいな会話。ストレートで飲み干すエピソード。
圧倒的な力で読者のハートをがつんがつんとノックしながら進んでいく
その響きは、苦しいのか辛いのか切ないのか、きっと優しいのか。

ピエロは重力を忘れて空中ブランコに挑む。
作者のつむぐまっすぐな地平線の上で、僕はこの物語を忘れることはない。
それが傑作ってもんだ。それが最強ってもんだ。

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紙の本

著者コメント

2003/05/19 18:26

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投稿者:伊坂 幸太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 これはある兄弟の冒険を描いたお話です。そして僕が、小説と映画の違いは何だろうな、と考えながら書いた本です。
 これを書いている間の僕は、幸せな気分で一杯でした。おそらく、この物語に出てくる兄弟のことが、気に入っていたからだと思います。いったい彼らはどこへ行くのだろう、と毎日楽しみながら書いていました。書き終わった今も、彼らはどうしているのかな、と想像したりしています。
 作者が楽しく書いたからといって、作品の出来が良いとは限らないのでしょうが、それでも、読んでくれた人たちが少しでも楽しめるものになっていればいいな、と今は祈っています。

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2005/01/24 19:10

投稿元:ブクログ

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