紙の本
日本国憲法は、順守できるのなら、間違いなく世界に恥じることのないものだが…
2003/07/07 17:29
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投稿者:安之助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
憲法は国の根本となるルール。ところが、近頃どこかきな臭い。公布されてから50有余年経つと、ちょっとガタがきて、車検のようなものが必要じゃあないか−というわけで、日本国憲法を読み直してみようという本だ。
ただし、一般に知られている文そのままではない。“新訳”である。というのは、もともと日本国憲法は最初は英文で書かれていた。というのも、当時、日本は占領下にあったため、日本国憲法を起草するメンバーは、実質的にはアメリカ人だけ。それを、和訳して日本国憲法として公布したのである。
著者の新訳はあくまでも意訳である。だが、“意”を曲げては書いてはいない。「ぼくの方は法律の言葉づかいではないけれど、ほんとうの意味はこの方が伝わると思う」。例えば、日本国憲法は前文の冒頭で「主権在民」を宣言しているが、本来の「日本国憲法」と、著者訳になる「日本の憲法」を比較すると違いがよく分かる。
〈日本国憲法〉「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて、自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」
〈日本の憲法〉「私たち日本人は、国を動かす基本の力は国民みなが持ち寄って生まれるものであることを、まず宣言する。私たちはこの考えに立ってこの憲法をしっかりと制定した。これは、世界の国々と協力して作ってゆく平和な暮らしや、この国にゆきわたる自由の喜びを私たちが失うことがないように、また政府のふるまいのために恐ろしい戦争が再びこの国を襲うことがないようにと考えた上で、自分たちできちんと選んだ代表が集まる国会を通じて、自分たちと後の世代のために、決めたことである。」
まえがき、あるいは「つまり、こういうことなんだ」
新訳「日本の憲法」
翻訳について
付録 日本国憲法(和文)
日本国憲法(英文)
「まえがき」は30ページに及んでいる。「そう、やっぱりこれはずいぶんいい憲法だよ」。
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知ってるようで、意外と知らないのが日本国憲法。その内容は誰しも(一応)習っている筈だ。しかし いざ読んでみると、〈ああ、そうだったっけ〉と気づく点も多々ある。習うことと理解することとは大違い。
──で、この本だ。ひとことで言うと、日本国憲法を新たに訳出したものである。
日本国憲法が米国人の手で作られたのは有名な話。戦後統治における民主化政策の一環として憲法改正が行なわれた。自国民の手による憲法でないことが、後に改憲論の根拠とされるようになるのだが、それ自体はここで述べるべき事ではない。
実際に施行されている憲法の条文は、訳文であるがゆえに原文とは異なる(と思われる)ニュアンスを持たされた部分がある。それが最も顕著に表われているのが「自衛権」に関する「憲法解釈」で揺れる第9条だろう。
この「憲法解釈」という奴は、我々の感覚からすると非常に解りづらい。条文の文言が解りづらいのもあるが、現在主流とされる「解釈」があの条文からどの様に発生したのかが理解し得ない。だから、いちど原文へ立ち返ってみよう──というのが この本の試みである。
日本国憲法制定当時の(米国人の手で作られ、日本人が受け入れた)理想・精神を探っていけば、憲法を理解する手助けになるかも知れない。
私が〈条文を素直に読めばそうなるな〉と感じられるものと差異のない訳文だった。解りやすい。
付録として、原文(英語)と実際の憲法条文が収録されている。これにも好感を持った(この手柄は編集者のものだろうな)。訳文で気になるところがあれば、原文・現行条文の双方に基づいて考察できる。バランスのとれた編集方針だ。
この本は、今の憲法をどうすべきかという所まで踏み込んで論ずるものではない(もちろん訳者本人の意図というか、憲法に対する思いは込められているが)。もし訳者に対する批判を行なおうとするなら、まずは原文との関係においてすべきだ。特に、反論として出てきやすいと思われる、現在主流の「憲法解釈」をもってこの本を批判するのは完全な的はずれである。現在の「憲法解釈」を論評するのが この本の主眼ではないからだ。
この本で理想を読む。そして現行憲法の条文と比較することで、現実との齟齬を見つけていく。そういった考察の助けに この本はなってくれる。
その先を考えるのは、この本ではない。我々一人ひとりの役割なのだ。
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口語に訳された憲法が子どもも読みやすい文章になっています。法律勉強してる人もしてない人も、いま知らなきゃいけないことが書いてある本だと思います。
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これはイラク戦争が始まったときに出た本で、その頃は結構こういう本がちょこちょこ出ていた。
今、まさにそういうのが出てきていい気がするんだけど、あのときより少ない気がする。
やっぱり作家の言葉は美しいし力がある。
「まえがき」はこども向けの文章なのにこんなに美しい。
ついでに憲法の新訳も美しい。
後ろに英語の原文と、今の憲法が全部ついているんだけれど、読み比べるとやっぱりわかりにくいんだなあと思う。
憲法「前文」もすばらしい。
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日本憲法の新訳です。
前文が熱いですねやはり。
とても分かり易いです。
日本人なら読むべし!
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まえがきとあとがきとそれからを読むだけでも価値あるね。
池澤さんの文章がいい。わかりやすくて、でも、ちゃんと心に残る。
平和を長い間求め続けた人たちの成果。
日本国憲法は理想的だからこそ今、こんなふうに守られている。
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こちらは、前文と103条の憲法すべてを英語版から新訳したもの。意味が頭に入ってきやすい。これもアプローチのひとつとして。
あとがきに、憲法というのは、法律の中でも最も文学的な法、とある。憲法は抽象的な分だけ日常的とも。
身近に感じられれば、そのぶん考えられることはたくさんある。はず。
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池澤夏樹による日本国憲法の口語訳。
恥ずかしながら憲法の文章が、原文が英語で作成され、それを日本語訳したものだということを知らなかった。
初版は2003年だが、いまだからこそという気もする。
娘が中学生くらいになったら読ませたい。
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大好きなお店の本棚にあって読んでみた。
いいなぁ、と思った。
かなり前に出された本だけれど、今、読んでも色褪せて居ない。