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紙の本

ナショナリズムは楽しくないが、紙背を読むのは楽しい

2003/06/13 20:20

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:pipi姫 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 埴谷雄高『死霊』文庫本第1巻を読み終えたあと、そのまま第2巻に突入すると病気になりそうだったので気分転換に手にしたのがこの本だ。
 まぁ実に読みやすい。さすがは作家だけあって文章は巧いし、最後まで読ませてしまう。それにしてもこの文体、この口調、どっかで読んだ事があるような気が……。あ、チョムスキーか。でもチョムスキーよりずっと文章が巧いし内容もある。

 ただし、本書を読んでもナショナリズムについてのお勉強にはあまり役立たない。新しい知見や大向こうをうならせるような卓見が書かれているわけではないからだ。とはいえ、偏狭なナショナリズムを舌鋒鋭く批判していく軽快な口調は心地よい。

 ところがこの本、著者島田雅彦と天皇制との微妙な関係を反映して、皇室について言及したくだりになると急に切れ味が悪くなる。島田は、新しい小説がお蔵入りになったまま出版の目処が立っていないということを本書で告白した。出版できない理由は、その作品が皇室のプライバシーに関連し、皇太子妃の過去を彷彿させる内容を含むからだ。右翼の襲撃恐喝を恐れた出版社は及び腰となり、島田も家族を危険にさらしてまで出版するつもりはないという。その判断は正しい。

 この国にはタブーがある。言論の自由があると思われている日本にも、ただ一つのタブーがある。天皇制について自由にものが言えないようでは日本が自由な国だとは言えない。
 したがって、本書で天皇制についての論評が口篭もるような歯切れ悪さを見せていることを非難してもだめなのだ。読者が行間を目を皿のようにして読み、紙背を深読みしなければならない。なんだ、島田は左翼のくせに皇室に媚びているな、などと思ってはいけない。このビミョーな距離の取り方、このスタンス、これをこそハラハラドキドキしながら堪能しなくては本書を読んだ面白みが半減するではないか。
 そして、島田のいう、「一民族専門の王権から、より普遍的な役割、たとえばローマ法王とかチベットのダライ・ラマのごとき役割を果たし得るのであれば、これまでとまったく違う天皇像が生まれるだろう」という発言は、「五族共和」「八紘一宇」へと容易に転落する危うさを含みながらもおもしろい提案だ。ただし、肝心の他民族がそれを受け入れるかどうかは別問題。

 本書は確かにナショナリズムについて考えるとっかかりになるし、島田雅彦自身が左翼ナショナリストを自認しているので、いわゆる右翼的な愛国心とはどこが違うのか、考えるヒントはたくさん仕込んである。

 小説家の評論はおもしろくないという先入観があったが、それを撤回することにしよう。
 それにしても未刊の小説『美しい魂』が読みたくてたまらなくなった。読みたい読みたい!

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紙の本

美しい魂としてのナショナリズム

2003/06/28 12:37

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 何十年振りに関西に居を構えて落ち着いて見れば、東京を中心とした【ニッポン】と何かが違うと思った。
 <個人と国民が直結していて、あいだに村民とか市民といった中間的な帰属がないと、実体なきナショナリズムがはびこる。何事においても、東京の流儀にケチをつける大阪、京都のローカル・ナショナリズムの方が、市民たちの生活習慣に根ざしている分、ナショナリズムの世界標準に近い。日本は単一の島国ではなく、差異に満ちた群島なのである。群島には無数のナショナリズムの根拠があってしかるべきなのだ。>(123頁)

 右であると思われている福田和也が「天皇抜きのナショナリズム」を考察しているが、四十年振りに京の町を徘徊すると、東京と比べて、変らなさが目立つ。島田が言うように祇園には元禄時代から、今日まで現役で続いている風俗産業があるし、アメリカで二百万部のベストセラーになった『さゆり』は祇園が舞台だ。おばんざいの食生活も東京とは違う。老舗も和ブランドとして残っているし、震災、戦災にも会わず、東京を中心とした日本国家と別の流れで、平安公家社会から、脈々と京の都が生き続けている気がする。福田の「京都遷幸論」も非現実的ではない。

 私の居間に中国人の扁額が掲げられている。【滅私奉公 中華民国二八年一月 ○○】と見事な能書である。このアナクロな額は亡き父の形見である。「え! あなたの一家はウヨクなのか、」と誤解されかねないが、私はオヤジの意志を尊重して、秘密に読み替えているのです。
 私のモットーは「奉私奉公」。小熊英二の『民主と愛国』に掲載されているように統制経済の下、「滅私奉公」を声高にアナウンスする官僚、高級軍人達が、その地位を利用して、物資の横流し等、「奉私滅公」で国を敗戦に導いた。そして、為政者のアジテーションによって動員されたのは、多分、「滅私」を素直にか、家族を守るため戦場に赴いた兵士達は、結果として「滅公」で一億総懺悔を余儀なくされる。
 ちょっと、ややこしくなった。
 1)「奉私奉公」(私のモットー、民主主義の原則)
 2)「奉私滅公」(亡国の徒としての政治屋、官僚屋)
 3)「滅私滅公」(政治無関心層)
 4)「滅私奉公」(パターリズムが有効に作用している共同体、幕藩体制)
 一番、質が悪いのは「奉私滅公」型の権力を私物化した輩である。だけど、戦前も戦後も2)項に群がる人々が多いのも事実である。亡きオヤジは、少なくとも、心音は4)の「滅私奉公」型であろう。2・26事件の青年将校達もそうであろう。ならば、2)の「奉私滅公ども」(ならずもの)に対して、手を繋いだ戦い挑むことは可能だ。恐らく、この場合、「私」を巡る考察で「他者を取り込んだ私」か「他者はすべて赤の他人で自意識だけの私」かによって、枝分かれするのであろう。

 2050年になると、世界の人口は百億人で、日本の人口は少子化で何千万人と減少するはず。難民、移民を受け入れざるを得なくなり、天皇の象徴性も揺らぐことが考えられる。
 島田は提言する。<たとえば、平和憲法の原理を守る役割を天皇が自任したとすると、日本国民でなくとも平和憲法の原理に共感し得る者は、他民族であろうと天皇を支持するであろう。つまり、日本人だけを救うとか日本人だけのために存在するというローカルな一民族専門の王権から、より普遍的な役割、たとえばローマ法王とかチベットのダライ・ラマのごとき役割を果たし得るのであれば、これまでと全く違う天皇像が生まれるだろう。>

 早く、島田雅彦の小説『美しい魂』が発刊されるのを願っています。

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