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紙の本
こうまで人間関係がつながっちゃうと、出来過ぎだよな、とは思うんですが、でも読んじゃう。ま、女版「坊ちゃん」は違うと思いますけど
2007/07/09 20:36
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
恥ずかしながら吉屋信子といえば、『徳川の夫人たち』『女人平家』といった作品しか思い浮かばず、彼女が乙女小説の第一人者、という知識は全くありませんでした。まして、いつも新しい作家を求めている私ですから、あえて過去に目を向けなくても、同世代の作家から共鳴できる人を捜せばそれで事足りていたのです。つい、この間までは。
そんな私に、吉屋信子の存在を知らしめたのが、この国書刊行会から没後三十周年記念出版として出された吉屋信子乙女小説コレクション全3巻を監修している嶽本野ばらです。彼の何を読んでのことだったか、今でははっきりとはしませんが、嶽本は少女小説作家の第一人者として吉屋の名前をあげていました。でも、それだけでは私が吉屋の本に手を出すことにはならなかったでしょう。
娘二人が中高一貫の同じ私立女子校に行き、今も次女が高校二年生としてそこに通っている、家に帰ってきては友だちと今日、なにをした、かにを楽しんだというのを聞かされているうちに、自分の昔を思い出した、というのもあります。もう一つは私たちが現在目にする夥しい数のアニメでありコミックスです。そこではBLもGLも当たり前。そろそろ自分にも解禁しちゃおうかな、なんて思った結果の吉屋です。
構成ですが、吉屋信子のまえがき、があって目次、「紅梅」「生い立ち」以下最後の「春ふたたび」まで36章、そして最後に嶽本野ばらの解説・注釈となっています。
主人公である新任教師は伴三千代といいます。母・かよの実家は、かつて日本橋で『大紋』という大きな呉服店を営んでいたそうですが、その母も亡くなっています。そして、三千代は父親を知りません。父については、母親から「もうせん亡くなって」聞かされているだけです。一人になった三千代は伯父のもとに引き取られ、その後、寄宿舎のある学校に入り、無事今春卒業したばかりです。
そして彼女は運良く東北のさる街・印堂の、高等学校に採用されることになりました。その学校というのが、創立三〇周年という歴史をもつ貞淑女学院です。彼女は、その学校を今も名門であると思い、就職できた幸運を喜んでいましたが、その思いに冷水を浴びせたのが彼女を乗せたタクシー運転手の言葉です。
「以前は大したいい学校だったが、おばあさんの校長が引退して東京から帰ってきた北海道で金鉱探しをしている倅があとを継いでからは凋落の一途を辿っている」というのです。確かに、校舎を目にした彼女の印象は「黄昏女学校」といった趣すらあり、生徒数が減っているというのも肯けます。
そんな思いでいる三千代を待っていたのが、金鉱で一山当てることしか考えない馬鹿息子の新校長とその妻で、三千代が少女時代学んだ東京の女学院で全校生徒の憧れの的だった音楽の藤波比奈先生のやつれた姿、そして目が不自由ながらも人格者で今も生徒たちに慕われる前校長です。担任となった三年の教室にいるのが、父を失い、母の店を手伝いながら学校に通う優等生・瀬川ゆみです。
そして、その地方の本邸に残って木材業に精を出す、人呼んで源七けちんぼ、こと間島源七がいます。彼は県の多額納税者の一人でありながら、無口で黙って働き、質素(ま、それが家族にあてはまらない、というのはこの男の限界でもある)に暮らすせいで、使用人からも慕われています。
東京の高輪にある控え屋敷には、田舎ぎらいの娘を利用する形で贅沢三昧の暮らしをする妻・辰子とせっかく入った東京の女学校ですが、勉強そっちのけの学園生活を愉しみすぎ、落第を通告された女学校三年の香世子がいます。「落第」することを嫌った母娘は父親の言いつけに従い郷里の学校に転校するのですが、勿論、香世子が入るのは国語と地理を教えることになった三千代のクラスです。
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