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ジャピーノのトシオ君が、少年から青年へどんどん成長していくの。
ゲリラ、誘拐、日本円、売買春、闘鶏・・・・東南アジアが充満しているお話しなのよねぇ。
こういうのを書ける方って、尊敬してしまうです。
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2003/08/16前半に関しては弛緩した印象を受けた。語り部たるフィリピンの辺境の農村の少年が幸せとは言えずとも凄く不幸とも言えないので、船戸与一の初期の南米3部作や「猛き箱舟」のような一種厭世的なピリピリした描写が感じられず牧歌的な印象を持った為だと思う。相変わらずの少年の成長譚であり、脇を彩る登場人物も、これまでの作品のキャラクターを踏襲したものばかりだ。しかし、そう思って読み続けていてもクライマックスの一連の展開と帰結には本当に参ってしまった。まるでサム・ペキンパーの映画のクライマックスで得られるカタルシスと詠嘆に等価なのである。やはり当代随一のアクション作家だと思った。
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フィリピン・セブ島のガルソボンガ地区で育つ、少年トシオ・マナハンの成長譚である。父親は日本人だが、フィリピン人の母親を孕ませた後、姿を消してしまった。母親はトシオを育てる為、娼婦となり、エイズで死んでしまう。そんな逆境にも負けず、ジャピーノ(日本人との混血)と呼ばれても気にせず、逞しく生きていく。そんな少年の13歳(1998年)から15歳(2000年)の5月にスポットをあてた作品である。
虹の谷とはガルソボンガの奥地にある谷で、空を見上げると、まん丸の虹が出るという地。ホセ・マンガハスという元新人民軍のゲリラが住みついている。毎年5月に、この虹の谷へ行こうとすると、なぜか事件が起こってしまう。自分の失敗でホセを窮地に陥れてしまったりするのだが、それらの事件を通してトシオは少年から青年へと成長していく。最初は、「おいら」で始まる語り口調に若干の抵抗を覚えたが、慣れてくると気にならなくなった。そのうち、本書が成長譚であるなら、一人称も「おれ」に変わるのではないかと思っていたら、やはり、15歳のトシオは「おれ」に成長していた。また、ホセが少年への呼びかけを「ぼうず」から「トシオ」へ変えたのも印象深かった。
物語を読み進めていて気になったのが、父親の忘れ形見であるセイコーの時計。至るところでトシオが時間を確かめるのだが、それがまるで、自分自身の成長を刻んでいくかのように感じた。もう一つ象徴的なのが「人喰い花」 正式にはタイタンアルムというらしいが、35年間種子として地中に眠り、発芽して1ヶ月で強烈な臭いを発する花を咲かせ、2週間後に萎れて枯れる。ホセはこの花を「暗示的な植物だな」とゲリラに見たてている。「ゲリラも地下に潜って耐えているときはいい。しかし、表にひきずり出されて強い陽差しを浴びると、たいていがイヤな臭いを放ち始める」と。
ラストは爽やかである。悲しい死の一方で、明るい性を描き、「性」が「生」に通じていく。猿喰い鷲という鳥に名づけられた、アサム(希望)とダガン(誇り)。本書は、悲しくも誇り高き、希望に満ち溢れた作品である。
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直木賞を受賞した本作。ゲリラの闘争の中に次第に巻き込まれていく主人公の少年の行方が手に汗握る。最後は爽やかな読後感。日本の小説家が描く外国を舞台にした小説は、成功するとその場に居合わせたかのような妙な臨場感がある。素晴らしい小説だった。
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このミス、ベスト10、2001年版6位。直木賞受賞作。この人の本はいつも同じ感じ。これと言って盛り上がるわけでもないけど、まあ、安心して読める。ちょっと退屈さが勝ったかも。
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ジャピーノと呼ばれたトシオ・マナハンの成長の記録。
フィリピンの実情が鮮明に描かれ、色彩のある作品であった。
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びっくりするほどのスピードでオトナになっていくトシオ。まわりの愛しい人たちが次々と亡くなって独りぼっちに。メグまで日本に行ってしまうなんて。闘鶏はあるけど これから どうなるんだろう。
ボリュームはあるけど 一気に読んだ。面白かった。
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内容紹介
去年も一昨年も虹の谷で銃声が響いた。だからおれはもう、だれも案内をしない。そんなある日、ドクトル・ナカノが誘拐された! 少年の慟哭とあふれる想いを描く、誇りと希望の一大叙事詩。(解説・小田光雄)
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フィリピンのセブ島付近の小さな街の中学生トシオが主人公。とても心が綺麗な少年で、周りを囲む人物も素敵だ。ちょっぴり悲しいストーリーな部分もあるけれど、ハートウォーミングな名作。心が汚れたらまた読みたい
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締め方がちょっと雑では?これで正解?
物足りなく感じたのは、それだけ面白く読み進めたからなのかもしれない。
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じっとしているだけで汗が滲み出てくるフィリピンの密林や孤高のゲリラの設定がハードボイルド感を盛り上げてくれる。 虹の谷などでの戦闘や密林の中での息が詰まる緊迫感がたまらない。 今回も船戸ワールドを楽しませていただいた。(o^^o)v
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トシオはメグはどんな大人になっただろう。
ガルソボンガ地区は今は。
主人公は私より5歳若いセブ島の山あいの町に住むトシオ。
1998年から2000年にかけてのフィリピン・セブ島の山間の田舎を舞台に13歳から15歳に成長していくトシオ。日本の当時と比べ物にならないくらい過酷。
日本人の父に逃げられ、母はエイズで若くして亡くなり、かつて抗日ゲリラだったガブリエル爺と闘鶏を生業に細々と暮らす。
トシオは丸い虹が架かる谷に住む元反政府ゲリラのホセを尊敬している。
腐敗した自治と警察、共通価値はお金だけ。かろうじて保たれていた均衡がクィーンの帰国を機に崩れていく。彼女は年上の日本人画家と結婚し遺産を相続して地元に邸宅を建てる。
一人称で語られるトシオの心の成長が言葉使いと思考から伝わり、子供の成長を喜ぶような気持ちで読める。それはこの話の数少ない救いである。
突破口が見つかりそうになりながら、次の瞬間に見失う展開の繰り返しは重く悲しく、ゆえに美しさと残酷さが心に残る。
冒険小説であり、ガブリエル、トシオ、クイーンを生み出した日本の責任がのしかかってくる歴史ドラマでもある。
日本がフィリピンにしたことが尾を引いていることを忘れさせない。ひとつの楽園でセブ島を終わらせてはいけない理由がわかった。
参考文献も5冊掲載。周到な調査を背景にした小説が投げかけるものは大きい。