サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

楠木正成 上 みんなのレビュー

文庫

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー17件

みんなの評価3.9

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (7件)
  • 星 3 (7件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本

魔王と悪党

2007/01/13 17:17

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

軍略家として傑出した人物とされる正成が、なぜ天皇に忠義を尽くすような行動に出たのかという動機や背景は、関心を持たれるところだろうと思う。本作では史実には現れないその行動原理、生き様を解き明かそうとしている。当時の価値観として割り切ることなく、河内の土豪である父の影響などによって、現代人にも理解の出来る合理性を持つ人物像を生み出すことに成功している。陸路、海路の物流から上がる利益に着目するのも現代的であるし、それを河内周辺から周辺部に広げて行こうとする意欲は、ちょうどこの時期から各地の産物が流通し始め、工芸の伝統が生まれ始めることに同期していてタイムリーな設定であり、正成の慧眼を示していることも読み取れる。
その人物像の上で、鎌倉幕府制度の下での武士による統治の限界によって生まれた悪党と言われた存在に該当するのだが、これを農民と武士の中間の新しい層として位置付け、世の中の変革のための鍵とすることが正成の思想になる。ちょうどそれが後醍醐天皇(このストーリーの中ではむしろ息子の大塔宮)の倒幕の動きにリンクし、二人の結び付きが生まれる。
こういった設定が必ずしも事実であったとは言えないだろうが、人物の主体性を求めるとすれば、説得力のある答えになっている。歴史小説という形ゆえになし得たことであり、例えば司馬遼太郎らの作品が歴史上の人物に対する日本人のイメージ固着に大きな影響を与えたのと同じように、本作も古典的な作品たりうると思う。
登場人物も赤松円心、北畠顕家、伊賀の金王盛俊、それに足利尊氏、高師直(!)などが熱い心情を持って生き生きと描かれ、時代の大きなうねりを感じさせる。正成が猿楽などの芸能民を支援していたという設定も目配りが効いているし、これが最後に思わぬ展開を生むことには仰天しますよ。滅ぼされる側に立つ守護大名などの視点があまり出ないところは物足りないし、悪党の位置付け、悪党らしく生きるという正成の意識も単純化し過ぎてないかという疑念も感じるが、むやみに話を複雑にするよりはテーマを浮き出たせるだろう。
最も感銘を受けたのは、巧妙な戦術で快哉を得た千早城の戦いが、その内実は文字通り気の狂いそうになる、精神、体力ともにギリギリの籠城戦であったという描写だ。それは考えてみればその通りに違いないことを改めて気付かせられたし、正成にとっても精神遍歴上の大きなエポックになったと見る作者の眼力も見事。
ストーリーは尊氏を九州に追いやったところまでで終わっている。湊川の合戦まで描かれなかったことにはむしろ安堵する。それは読みたくない。だが正成を死すべき戦いに赴かせたのが何者であったかまでを追わなければ、本当に物語としては完結しないということもまた言える。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

1 件中 1 件~ 1 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。