紙の本
エスプリの刺客、仰天の寄書
2003/07/26 19:31
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランスでミリオンセラーになり、その後世界各国で翻訳され、韓国でも70万部のベストセラーになったという、この本。どうやら今、世界中が「蟻」ブームらしいよ。
解説で養老孟司は、アリの世界は「本当に不思議で面白いんだから」と言う。地球上の二大文明である、人間の文明と、アリの文明、これまではそれそれがお互いに知らないふりをしていたが、しかしいつかその日は来る。二つの文明が初めて接触(コンタクト)する日が。
パリに住む主人公の伯父で生物学者だったエドモン・ウェルズ遺した謎の地下室、そして「相対的かつ絶対的知の百科事典」。冒頭、その原稿からの抜粋された「アリにまつわる用語解説」から、我々の意識は徐々に蟻の世界にシフトしていく。例えば「番兵アリ」「カースト」「眼」「蟻酸」、「アリの分布密度」では、ヨーロッパでは1平方メートルにつき8万匹生息しているという。そして先を読み進んでいけば、徐々に頬がひきつってくることはうけあいだ。
アリは眼だけでなく、匂いで世界を認識する、これだけで人間と蟻の世界認識に大きな違いがあるのは間違いないだろう。それに温度、食性、体重、外敵などなど、文明の基礎になる諸々の要素の違いも膨大である。
そして、入った者が次々に行方不明になる、地下室の謎を巡る探索行、蟻の世界の謀略と闘争と冒険、これらが収束点に向かって一気に突っ走る。文明の接触はどのようなものになるのか。理解か、あるいは戦争か。
「アリとサソリだけは1945年の原子爆弾にも生き延びた」「紀元前8千万年から3千万年の間、白アリ対赤アリの世界戦争は地球全体に飛び火した」「64の都市は125Kmにわたって掘られた通路網と、780Kmにおよぶ匂いの通路によってお互いに連結している」
落語「まんじゅうこわい」は長屋の面々が自分の恐いものを披露するという話だが、一人はアリが怖いと言う。アリが2匹でいると、こそこそ俺の悪口を言ってるんじゃないかって気がするというのだが、アリなんざぁごはんに乗せてふりかけにして食っちまうと言われる。この本を読んだ後でもまだ笑えるだろうか。
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子供ができたら読ませたい本No.1!
これを読んでアリに自分はハマりました。3部作の1作目ですが、これがおそらくシリーズ最高でしょう。アリの生態を描写してるだけでこんなに面白いなんてっ!
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うーんこの本はある意味攻撃的な本である
蟻の生態を借りて 社会組織論 思想 言語 宗教論 情報統制の在り様を記述した
社会原理論であると思う。
どこまでが真実の蟻の生理・蟻の行動を学問的に論証しているのかは不明確ではあるが
SFという位置づけなので そこは言及しません。
言語のセンシングと此処で述べている蟻の社会文化構成論と複雑系選択論は理解できる
ただ 蟻の社会を近代日本に照らし合わせて説明しているのは如何なものかと思う。
日本を描写している箇所を引用する。
”島国の民族である日本人は、何世紀にも渡って、自給自足の習慣を持っていました。
彼らにとって、世界は二つに分かれています。すなわち日本人と非日本人。”
なるほど。
”彼らの死生観は我々のものとは違います。日本では、、個人の死は。あまり大きな重要性を持ちません。
彼らが気にしている事は、物を生産する人間がすくなくなるという事のほうです。死になれる為には。日本人は、
戦いの技術を追求をすることを好みます。剣道が低学年から教えられています。”
正しいんじゃないの 今の現代の日本人には当てはまらない。?いや現在の日本の家庭崩壊はその延長?
”かかがんでいる男が両手で短刀を自分の腹に向けています。{技師的な自殺です。切腹は日本の文化のもう一つの側面ですが、
これを理解するのは大変難しい事です。・・・・・」。
ウェルベルは蟻を通して、彼が思い描く日本人を現してその特異性社会を近未来に蟻(昆虫)日本人と欧米文化のコミュニケーション
そして闘争論を描こうとしていたのだと思う。
非常に興味深い本です。
ただもし日本の国粋主義者がこれをよんだら いや 対極の左よりの人間もこの本の内容を知れば、一定のアレルギー反応を持つはずなのですが。
その手の人たちはまだ読んでいないようですw
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登録は文庫版だが、実際の読了は、
ジャンニ・コミュニケーションズの単行本版上・下巻。
登録不可能らしいので、文庫版の登録にて代用する。
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フランスの三部作ですが第一作のこれが一番完成度が高いです。
ある孤独な研究家の書いた百科事典と
その家族の住む家には入った人間が誰一人でてこない地下へと続く穴があり、
それとは全く関係ないように見える、蟻塚の蟻たちの戦争。
3つの線が同時進行しながら進んで、最後にはひとつの驚異的な結末が待っています。
科学小説として読むもよし、ミステリーとして読むもよし、
何回読んでも飽きない隠れた名作です。
蟻の描写だけでも素晴らしいです、文庫になりましたのでぜひご一読を。
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作者のベルナール・ウェルベルは蟻の生態を13年間もかけてこの蟻3部作を書きました。
人間の文化と蟻の文化の決定的な違いにハラハラする話です。
これを読み終えると、足元に蟻が居ないか気になるようになってしまうので不思議です。
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失業中のカギ職人ジョナサンは、伯父が遺したアパートに引っ越した。その地下室には立ち入り禁止と書かれてあったが、好奇心に負けた彼はその禁を破り姿を消す。その後に続き妻のルーシー、息子のニコラも姿を消す。そしてその捜索隊たちも。
一方、蟻の王国の話も同時に進む。蟻同士の戦い、やがてくる旅立ちと新しい女王の誕生と王国の形成。
この二つの話がどこでどう交わるのか。
ある意味SFであるが、非常に哲学的な話でもある。この話が現実になれば非常に面白く、一方では非常に恐ろしい。
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虫ものSF!
読ませる、かなり面白い。
思わず、アリの生態について、調べてしまった。
麻薬を与えるハネカクシは本当なのね。
蛇足だけど、文明論についても作者は作中人物に、いろいろと語らせていて、結構、興味深い。
たとえば。
『アリたちは、ファシストでもアナーキストでも王政主義でもなく、まず、アリなのです。われわれの世界とはまったく違うのです。それこそが、彼らの世界の豊かなところなのです。』
『…間違っています。アリたちを人間的な理解のわくにはめこもうとするからです。』
これ、
アリ:日本人、チベット人、ヒンドゥー教徒
人間:西欧人
に置換して読むと面白いよ!
さらに、
『われわれは、日本人、チベット人、ヒンドゥー教徒などを理解することはできませんが、その文明や音楽や哲学は興味深いものです。たとえそれが、西欧的理解によって変形された理解にしても!』
ふ~ん、やっぱりそうなんだ。西欧人!
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アリ好きの人に勧められて読んだ。
確かにアリ好きな人には堪らないだろうなぁと思うほど、アリの生態がみっちり書いてあった。それだけではなく、人の世界の失踪事件とアリの世界の話がうまく繋がってるところが見事。面白かった。
異文化コミュニケーションなSFとしても読めるように思えた。
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出だしは疎遠な叔父から相続した家の開かずの地下室、陳腐ながらもオーソドックスな設定でいいんじゃない。それが途中から、アリの帝国・・・?
ファーブルとかシートンとかお好きな向きにはよろしいかも。私は生憎、文系なんで。話としてはちゃんと集約されていくんですけど・・・
まあ、この、なんと言うか、大上段な結末にとってつけた幕切れはナニでしょう。「え??これで終わるか?!」と思いましたよ。
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蟻にキノコ栽培を行う種がいる事や蟻とアブラムシとの共生関係についてはよく知られていることである。
作中では勿論前述の描写がある他、戦車を発明したりカタツムリの唾液を体に塗ったりなどもしているが、どこまでが事実でどこからが創作なのだろうか。
先に『アント・ワールド ~アリの世界(エドワード・O・ウィルソン著)』を読んで予習しておけばよかったと読みながら少々後悔する。
人間が思う以上に他生物は強かで賢く、特に蟻は社会的で高度な文明を持っている。仮に本書の内容が小説ではなく全て事実だと言われたとしても私は驚かないだろう。
“サイエンスホラーミステリ”とあるが、ホラー感は強くない。
物語は地下室に消えていく“人”目線、地下に棲む“蟻”目線で紡がれ、度々作中の昆虫学者が著した『相対的かつ絶対的知の百科事典』が引用として挿し込まれる。これが恐らく補足の役割となり、昆虫について詳しくなくても楽しめる作品となっている。
第一巻である本書では、人と蟻との交流は終盤に少し書かれるにとどまる。物語はまだ序章に過ぎず次巻からいよいよ人vs蟻の展開になっていきそう。
シリ・プー・ニ改め新しいベロ・キウ・キウニに一読者である私も問いたい。
「岩の下に住んでいる人間はどうしますか?」
その答えは次巻で書かれるのだろうか。
103683号や801号の活躍はまた見られるのか?
新本は入手困難なためバリューブックスにアクセスする。