- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
切なく、心をあたたかなもので満たしてくれる物語
2004/04/25 00:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語の肌触りがよかったのです。ぬくもりを感じたり、しみじみと切ない気持ちになったり。
第一部、第二部と、ゆっくりと進んでいく話のテンポ。はじめのうちは、ちょっとまどろっこしいと思っていたんだけれど、いつしかそのゆったりした話のペースに馴染んで行きました。そして、「時」と「時」が結ばれ、寄り添っていく話の展開からこっち、もう目頭が熱くなってしまって。
こういう話には、昔から弱いんだなあ。時を超えためぐり逢いを描いた、こういう話には。読みながら、そして最後の一頁を閉じて、胸がいっぱいになりました。
獅子座流星群というのが、話にうまくからんでくるんですよね。
そして、あの《フライ返し》の場面ときては……(ポロリ)。
さらに、ドイツ語の歌の場面がやって来て……(そうこなくっちゃ!)。
切なくて、心をあたたかなもので満たしてくれる、そんな物語。
北村薫さんの『リセット』。とても素敵でした。
紙の本
星です。わたしの最初の記憶は、流れる星なのです。
2017/12/27 18:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
時と人のシリーズ第三作。
シリーズといっても、それぞれが独立しています。
時の秘密を忍ばせた三部作です。
そしてこの作品は──── 永遠の時の記憶を封じ込めたのです。
第一部の主人公は真澄。
夕暮れ時、お線香をつけて薄闇の中で振ります。
橙色の点になった端が、手の動きにつれて、すっ、すっと流れました。
─── ね、こんな風にお星さまが流れたんだよね
獅子座流星群。
お父様と見た星の記憶。
三十三年ごとに現れる流れる星たちは、真澄の心の中に
大切な光景となって残るのです。
神戸の芦屋が舞台です。お父様は六甲ハミガキに勤めていて、
転勤で横浜から引っ越してきました。
芦屋には社主が住んでいて、そのお嬢様が八千代さん。
学校のお友だちの優子さん。三人でかるた遊びをしていて、
いとこの修一を読み手として連れてきます。
三人で遊ぶかるたは、石川啄木の短歌で作ってあります。
絵札には、朝顔の種のような黒い大きな瞳の女の子たちが
描かれています。中原純一さんという描き手です。
少女の友の新年号の付録についていました。
絵の女の子が化け物みたいという修一に、八千代さんは、
そんなことないよ、これなんかわたしみたいでしょう、
と一枚のかるたを手に取ります。
次は優子さん。
そして真澄が似ているのはと、修一が選んだ絵札には、
紺鼠のセーラー服を着た短髪の子がいました。
かるたには取り字が書いてあります。
> ことばはいまも
時代の波にもまれ、戦争へと突き進んでいく日本。
二人はやがて勤労学生となり、神戸の軍需工場で
働くようになります。
リセットからは、やり直すという意味が連想されます。
しかし北村薫さんの思い描くニュアンスとは少しずれるようです。
巻末は解説代わりに朋友の宮部みゆきさんとの
対談になっていて、その中で主旨が語られます。
リセットとは、
ゲームで失敗したらちゃらにすればいい、
そんな軽い意味ではないのです。
誰しも、生まれるときの環境を選べないのです。
その中で精一杯生きて、次に生れた世界では、
めぐりめぐって戻ってきます。
北村薫さんは、リセットという言葉の中に、
不条理に対する救いのようなものを託されているのです。
二人に芽生えた淡い気持ちは、永遠の時を駆けるのでしょうか。
青春小説です。
紙の本
いつかまた出会うと信じて
2007/10/01 23:53
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「スキップ」「ターン」を読んできて、それぞれに感動を覚えました。本作も感動。
でも冒頭と半ばと最後で異なる印象を持ち、それが最終的に繋がっていく所に一番感動しました。
素晴らしい表現力!
北村さんの作品はいつも温かい気持ちになるので好きです。
戦争の実態も垣間見ました。
紙の本
安定感と優しさ
2003/07/05 15:14
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
「スキップ」「ターン」に続く≪時と人≫シリーズの第3弾である。ここまで読者を引っ張れるのは何を措いても第1弾の「スキップ」が面白かったからに他ならず、何を隠そう僕もそういう経緯でここまで読み進んできた口だ。
時の歪みをストーリーに織り込んだ作品は北村薫以外の作家にもたくさんあるが、例えば東野圭吾の「秘密」なんかと比べると作家としての力量が格段に違う。北村の場合は文章や構成の下手さによって読んでいてつっかえてしまうようなことが全くなく、淀みなくストーリーを追わせてくれるのである。
この第3弾においては、前2作に比べて遥かに多くの文献に当たって時代の背景を克明に描いている。あとがき(宮部みゆきとの対談)を読んで、小学生時代の自分の日記まで入れ込んでいると知り、なるほどなあと思った。
この人の持ち味は、ミステリっぽい筋運びでありながらしっとりとした文章と展開であって、読んでいてハラハラドキドキというものではない。僕は音楽でも本でも、安らぎを求めるのではなく刺激を求めて手を出すほうなので、そういう意味では僕向きの作家ではないのだが、まあ、でもこの安定感は捨てがたい。宮部みゆきは「3作のなかで、この『リセット』がいちばん好きかもしれません」と言っているが、それはこの作品の持つ独特の優しさのせいではないだろうか。
これから読む人のことを考えて一切ストーリーのことを書いていないので、どんな本だかよく判らないかもしれないが、僕は安心してお勧めする。全く読んだことがないのであれば、まず「スキップ」をお読みになってはいかがだろうか。
紙の本
意外な展開
2004/05/18 12:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:より - この投稿者のレビュー一覧を見る
北村 薫さんとの出会いです。
私の苦手とする戦争分野だったので、第一章もあまり気乗りしないまま読み進みました。
第2章…「ん??」 この語り始めた男性が誰か全くつかめずに探りながら読みました。
そうきたか…という展開。
今までの作品を読んでいれば想像できたかもしれませんがとにかく意外でした。
案外似たようなことが自分が気づかないだけで起こっているのかもしれないわ…と思いをはせました。
紙の本
かの時に言いそびれたる大切の言葉は今も胸にのこれど
2019/11/12 19:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争によって絶たれた思いがあまりにも悲しく、切ないです。最後は怒涛の展開で一気に読めました。八千代さんの悪意のなさが、クリスティーの登場人物のようで怖かったです。
紙の本
3部作の中で最も難易度が高い。
2021/10/17 21:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『スキップ』『ターン』『リセット』と、著作順通りに3部作を読んできました。個人的にはこの順に読んできて良かったと思います。内容がこの順に複雑化してきているからです。
正直読了直後(まさにこのレビューを書いているタイミングなのですが)としては頭がボーッと淀んでいる感じです。本篇424ページのうち347ページまでは平坦な道のりでした。換言すると退屈な内容でした。ところが347ページからは急転直下、怒濤の快進撃が始まります。そのページまでの平坦な道のりに鏤められた数々の伏線が一気に回収され、あまりのスピード感にちょっと強引さを覚える程でした。
ただ私自身には中々『リセット』の意味が今一つ理解に及びませんでした。何が『リセット』されたのか、ついていけませんでした。再読すれば解るのでしょうが、何せ平坦な道のりが長い点と描かれている時代が現代よりも一世代古い為に難渋するので、徒労感があります。
伏線の回収がきっちりあり、怒濤感は楽しめたので感想としてはまずまずです。