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ブーニン作品集 3 たゆたう春/夜 みんなのレビュー

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みんなのレビュー2件

みんなの評価5.0

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紙の本

冷静な頭脳とあふれる情熱。

2006/07/24 19:31

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 イワン・アレクセーエヴィチ・ブーニンは、ロシア人で初のノーベル文学賞受賞者である。これを知った時、トルストイが受賞していないのが意外だったが。
 ブーニン作品集第3巻の本書には、12短編が収められている。ソビエト革命の混乱からフランスへと亡命した後に書かれた作品は、絶望感と孤独感に覆われたものが多く、作者の受けた衝撃の大きさを物語っている。
 「たゆたう春」では、革命後のブーニンの心情を端的に感じ取ることができる。そこに漂う喪失感、孤独感は、美しい自然描写と相まって、静謐で端正な作品に仕上がっている。
 「夜」は、ブーニンの思想、とりわけ死生観、芸術観を一人称で直接的に描いた作品で、本書の中では異色である。
 エッセイのように縦横無尽に展開される思索は、ブッダやトルストイから影響を受けた、作者の深い哲学性が感じられる。夜、一人静かに物思いにふける様子は、幻想的で叙情的だ。
 本書に収められた作品の大半は恋愛小説である。それも、非永続的・非日常的・不安定な恋愛で、実にドラマティックに進行する。その、燃えあがるような熱い思いは、登場人物に別れと死をもたらし、ハッピーエンドにはならない。これらの作品は、“恋愛”の持つ狂気性を、極限まで高めたものといえるのではないだろうか。
 ブーニンの描く恋愛は情熱的なのに、どこか冷めた目で客観的に見つめているところがある。その絶妙なバランスが心地よい。
 私が一番好きな作品は、「日射病」だ。
ほんの10ページの短い物語で、行きずりの恋の顛末が情熱的に描かれる。目が回るような展開にクラクラさせられてしまうが、これはたった一日の出来事なのだ。読者をも日射病にさせてしまう、不思議な魔力を持った作品である。そして、ラスト一行も見事。
 なんといっても、ブーニン作品の魅力は、ラストの巧さである。
 特に、最後の一文に痺れてしまう。二股をかけた男の恋の行方を描いた「ナタリー」の一行は、何ページ分にも相当する重みがある。
 一文の持つ力というものを、ブーニンの作品を読んで知った気がする。

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2009/06/03 13:57

投稿元:ブクログ

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