紙の本
簡略にまとめられた概説書
2016/02/27 18:38
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩漬屋稼業 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は三部構成になっている。
それぞれ、ギリシアの思想、ヘブライの信仰、ヨーロッパ哲学のあゆみ、と題されている。
類書と比較して特筆に値するのが、ヘブライの信仰と題された第二部で、ユダヤ-キリスト教の概説にも均等にページが割かれていることだろう。
類書の定型だとギリシア哲学の後は中世哲学で、キリスト教に関してはアウグスティヌスあたりをネタにさらっと触れると、さっさとデカルト、カントへ移行するといった印象があったので、本書はその辺りの歴史的な位置づけが違って見えたのだ。
ユダヤ-キリスト教の系譜が辿られて、終幕はレヴィナスという本ですから、主題的には倫理の側面に焦点があてられる。
その書きぶりからも、読後感はどこか清々しいものがある。
ところで、こうして思想の歴史というものを概観すると、人間の思索というものは四百年や五百年くらい平気で停滞したままなんだなと思える。
生まれてこのかた停滞したままの頭脳を抱える評者としてはちょっと慰められるところがありました。
ところで、その停滞の何百年かに一度くらい突出した点のような劇的変化が起こるように見える。
しかし、そう見えるのも結局は系譜学的な遠近法が産み出すものに過ぎないのだろうか?
紙の本
ギリシア発、ヘブライ経由、ヨーロッパ行き
2021/08/31 22:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヨーロッパの哲学を、
ギリシアの思想とヘブライの信仰の
上に立つものとして解説している小冊です。
中高生向けを謳っていますけれど、
中身は大学の教養課程で扱っても
おかしくない程度のものではないかと。
紙の本
ヨーロッパ思想の今日までを,全速力で駆け抜ける
2005/12/16 10:42
8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:phi - この投稿者のレビュー一覧を見る
評判が良い書籍だったので,期待したのですが,んんん……。
内容ですが,先ず,第 1 部は「ギリシアの思想」と題され,ここで,ギリシア人の気質から始まり,文学として,ホメロスの叙事詩・ギリシア悲劇が,思想として,ソクラテス,プラトン,アリストテレスら哲学者が,足早に語られます。
第 2 部は「ヘブライの信仰」。「A 旧約聖書」と「B 新約聖書」とに分けられ,それぞれの信仰のコアのみを観ます。
そして,以上の 2 つのパートを踏まえて,第 3 部「ヨーロッパ哲学のあゆみ」へと入る訳ですが……,このパートが凄い,何せ,アウグスティヌスからレヴィナスまでを,僅か 100 ペイジ足らずで語ろう,というのですから。この量でヨーロッパの近・現代思想を語り尽すことが出来る筈は当然有りません。取り上げられているのは,上記 2 人の他に,アクィナス,オッカム,ルター,デカルト,カント,ロック,ロールズ,キルケゴール,ニーチェ,ハイデガーなどです。これらの人々の思想に,駆足……などでは決してなく,全力疾走で触れて行くのです。上の「凄い」の意味がお判りになるでしょう? 岩田氏には失礼ですが,もう,「無謀」と言わざるを得ません。
しかし,著者の言いたいことは伝わりました。詰り,ヨーロッパ思想を知るには,先ずギリシアと『聖書』から始めろ,そして,以後の思想を観る時にも,それらを,常に念頭に置いておけ──これが,バック・カヴァにも記されている通り,本書の要点ですね。
これは,そのタイトル:『ヨーロッパ思想入門』の為ではなく,“ヨーロッパ思想入門に入門する”のに適した本でしょう。■
投稿元:
レビューを見る
ジュニア新書だからってナメちゃいけない。意外にためになる政治思想入門書。ただ、中世が手薄すぎるのが少し気になる。
投稿元:
レビューを見る
ヨーロッパ思想の礎石としての、ギリシアの思想とヘブライの信仰。
ギリシア1)自由と平等
2)理性主義
ヘブライ1)唯一の超越神
2)「自己の似姿」としての人間
3)神の「優しさ」
投稿元:
レビューを見る
ギリシャ哲学から、聖書、そして、レヴィナスまでの流れを判り易く紹介している。
大学一年の春に読めば、後が楽だよね。
投稿元:
レビューを見る
西洋の思想を貫くギリシャとヘブライの思想、さらにそこを源流とした近代の思想を加えた三章立て。amazonで評価を参考に購入した。
著者はキリスト者なんだろうか?宗教を信じるものからすれば自然な流れとして納得できることはその情熱に任せて書いているように思えた。したがって私のようにキリスト者ではなく熱心な他宗教の信者でもない者にはわかりにくい部分があった。また、やたら難しい言い回しを多用しているので少し読みにくかった。
現代文学論を読むときに訳が分からなかったのだが、それはこの本で紹介されているような知識を全く知らなかったからであることが改めて分かった。ヘーゲルとか、カントとか。
ヨーロッパの思想を押さえるときの一つの指針として頭が整理できた気がする。キリスト教の愛についての解説はもう一回読むべきかもしれない。ヨーロッパの個人主義を理解する手がかりがありそうだった。
投稿元:
レビューを見る
レポート制作のため読みました。
ギリシアとヘブライの思想をわかりやすく説明してくれてる本で、興味を持ち始めたばかりのひとや、講義でこの2つの文化について学ぶ人が先に読んでおくと後々先生の話が理解しやすくていいかもって感じです。ここの分野についてかじったことがある人には少し物足りないかも・・・。
講義でよくわからなかった私には丁度良かったです。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
デカルト、カント、ハイデガーらが説く多彩な哲学はすべて二つの土台の上に立つ。
それはギリシアの思想とヘブライの信仰である。
本書は、二つの源泉の本質は何かを、文学や美術、「聖書」などから探り、さらに近現代の哲学の深部にどう入りこんでいるかを分析。
ヨーロッパ思想の核心がクリアーに見えてくる。
[ 目次 ]
第1部 ギリシアの思想(ギリシア人とはなにか ホメロス ギリシア悲劇 ほか)
第2部 ヘブライの信仰(旧約聖書 新約聖書)
第3部 ヨーロッパ哲学のあゆみ(中世のキリスト教哲学 理性主義の系譜 経験主義の系譜 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
主にギリシア哲学とヘブライ信仰についての説明。
ギリシア悲劇の部分が興味深かった。
□アイスキュロス「アガメムノン」→「供養する女神たち」→「恵みの女神たち」
・・・罪と罰。神々の専決事項であった正義を人間の判断力の上に立て直す。
□ソフォクレス「トラキスの女たち」「オイディプス王」
・・・幻想の生徒運命(悲劇的アイロニー)
キルケゴールの人生の三段階説も面白かったし、半分は納得できた。
□第一段階(美的段階):感覚的悦楽の赴くままに浮遊、自己を喪失。自己分散が自由と思い込んでいる。型にはまるのを嫌がりつつも、漠然とした不安を感じている。
□第二段階(倫理的段階):自己を回復せねばという促しを自覚。普遍的な道徳法則により、自分の生に確とした形と整合性を求める。ただし、人間の弱さを意志の力で克服できると人間の倫理的自足を信じている。(実際は人間は自力で完全な徳に達せない)
□第三段階(宗教的段階):罪の自覚→神への跳躍。不確実なものを盲信する、という賭け。
それにしても、哲学で頭をいっぱいにするとしんどくなる。ニーチェが発狂したのも分からなくない。
投稿元:
レビューを見る
ヨーロッパの哲学の流れをおおまかにギリシア思想とヘブライ信仰の観点から詳しく説明しています。
僕は哲学に関してはまったくの素人ですがとてもわかりやすく、読みやすかったです。
哲学の入門書としてはぴったりだと思います
投稿元:
レビューを見る
「ギリシアの思想」と「ヘブライの信仰」。
この2本柱を基軸に、ヨーロッパ思想は樹形図的に発展していく。
本書を足がかりに、より専門的な書籍へ進んでいくのもよい。
まさにヨーロッパ思想の入門書決定版。
私は本書をきっかけに、
http://booklog.jp/asin/4061488341
http://booklog.jp/asin/4061492101
と読み進んだ。
投稿元:
レビューを見る
難しい内容だけど、平易に伝えようとしているのは伝わる。
ヨーロッパ思想の根底に流れているものがギリシア思想とヘブライ信仰というのは、
これから哲学書を読んでいくうえで大きな理解の補助になると思う。
第三部の現代に繋がる諸哲学者のくだりは難しくて骨が折れたが、
1部、2部でヨーロッパ思想のエッセンスを読みとるだけでも
非常に価値のある本だと思う。
投稿元:
レビューを見る
ギリシャの思想、ヘブライの信仰まではよかった。
中世以降の哲学はどんどん複雑になり理解するのが難しくなってくる。
キルコゲールによると、『神を「信じる」とは、客観的に不確実なものへ、全情熱を挙げて自分自身を賭ける』ということだが、そんなに情熱が必要なほど、信じることにって難しいんだろうか?
そんなことを考えた。
各人が色々な思考を試みているのは分かるが、
自分としてはイエスまでの思想を知るだけで十分役に立つと思う。
投稿元:
レビューを見る
思想・哲学史を概観する。
1,2部でのギリシャ思想、ヘブライ信仰の説明は素晴らしい。
3部の哲学史は、紙幅の都合上さすがに駆け足だが、それでも概観という点では見事。これ以上を求めるなら専門書に頼るしかないだろう。