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紙の本
二階堂黎人ってこんなに面白かったんだ、ちょっと本格し過ぎているのはナンダけど、クイーン命の私には、やっぱり嬉しいね
2003/09/20 21:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
おなじみ、大嶽恵一の写真と、京極夏彦 with Fisco の装丁の名コンビが生み出す現代センス抜群のブックデザインの本格ミステリ・マスターズ。最後の頁の注に「この作品は、パソコン環境における日本語入力に最適な親指シフト・キーボードを用いて執筆しました。」とあるのが、なんとも、ナントモ…
二部構成で第一部は「十年後からすれば十年前」、第二部は「十年前からすれば十年後」で、第二部はプロローグと十九の章からなる。各章のタイトルを読んでいるだけで思わず顔がほころんできてしまう。なんていうか、私の働く産婦人科でかわいい赤ちゃんを見たときの気持ちに似ているとでも言ったらいいのかしらん。二階堂さんて、こんなに楽しい作風だったの?と思ってしまう。
その気持ちは、本文を読み始めても少しも変わらない。主人公は水乃紗杜瑠、29歳。この小説のワトソン役である美並由加里と同じ《日本アンタレス旅行社》に勤務している。大学時代は《百のサークルに所属する男》という異名をもつ多趣味な男、そしておお坊ちゃま、勿論三高(古いね)。で、事件は1995年彼らがスキーに出かける前に始まっている。
四谷駅の満員のホームで、北里真理恵に社員旅行の件で相談を持ちかけられていた由加里、突然、それならば《熱海がいい》と話し掛けてきた老人がホームから突き落とされた。その件で、由加里たちに事情聴取に来たのが大学時代の先輩で警視庁の刑事 馬田権之介だった。
馬田にヒントを与えた紗杜瑠は、そのまま由加里と福島県裏磐梯にあるスキー・リゾート《スノーランド猪苗代》に向かう。そこで起きる連続殺人事件。リゾート開発で巨富を得たとされる有力者が、惨殺された。現場には、《処刑魔》と名乗る人間の制裁を告げる宣言文が。それは10年前に起きた四つの連続殺人事件に酷似していた。
小池啓介の解説が親切で、確かに今までの二階堂ファンには物足りないかもしれないけれど、最近、二階堂を知ったなどという読者には、格好の案内だろう。私のように『宇宙神の不思議』で、やっとこの作家を読んだという人間には、もうひとつの蘭子シリーズがあって、それがより本格味の強いものだということも教えてもらった。多分、そちらを読んでいたら、私はこの作品を読まなかったかもしれない。私には、紗杜瑠シリーズのもつ軽妙さが好きなのだ。
それから、対談がいい。二階堂の考えがよく伝わって、例えば乱歩の作品でも「二銭銅貨」より「一枚の切符」のほうが好きだというあたり、同じ気持ちの私が、思わず拍手をしたくなってしまったほどだ。こういう意見を言う人は、本当に稀なのだ。この対談は、シリーズ中でもベストに近いのではないだろうか。
個人的には、紗杜瑠が警察の捜査に絡んでいくシーンだけは、いくら本格推理でも現代を舞台にした場合は、成り立たないのではと思ってしまう。これが許されるなら、何をやっても許される気がするからだし、その傲慢さが、彼の軽妙な性格と合わない気がするからだ。『宇宙神の不思議』は強引なまとめ方が気になったけれど、今回は悪くはない。文章が軽いので、密度は感じないけれど、イヤミがない点でも、後期のクイーンを彷彿とさせて、クイーン命の私は、それだけでハッピーである。
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