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紙の本
「家族」は解体しない
2003/10/06 22:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さいとうゆう - この投稿者のレビュー一覧を見る
初版が発行されたのが1988年だからもう15年も前の本になるのだが、この度出版社を替えて再版されることになったようだ。私は今回が初読である。扱われている時事的なものは時代を感じさせるところがないでもないが、「家族」なるものの〈本質〉を見極めていこうとするその姿勢自体は、15年経った現在においても全く古びていないように思われる。
大雑把に言ってしまうと、「自分のことは自分で決める」という考えに基づいた狭義の個人主義にとって、「家族」というものは立ちはだかる壁として感じられる部分が少なくなく、そのような個人意識の発達と浸透によって、これまで強固な基盤を誇ってきた「家族」なるものが崩壊の危機に面しているのではないかという思いは、21世紀に入った現在においてもかなり一般性を持っているであろう。
現に、「自由で自立した個人概念」を旗印に、「家族解体論」を展開する知識人も未だよく目にするし、世代を越えた同居世帯の減少や増加する離婚率なども血縁意識からの離脱と受け止められなくもない。ただ、「家族」という「非常に特殊な共同性」について考えようとするとき、「家族なるものが段々解体していくのは歴史的必然である」という思い込みに著者はある留保をつける。
《むしろ、〈家族〉というテーマとの関わりで歴史的進展を云々するなら、近代は、性を基礎とするこの私的な領域を、ハードな社会的制度との癒着的構造から切りはなして解放したと考えるべきなのである》(p.37)
例えば、新聞の見出しなどでも見かける一世帯あたりの子ども数の減少は、予期に反して起こりうる妊娠・出産・養育というリスクに満ちたプロセスを、自ら意識的にコントロールしようとする近代人特有の現象なのであって、そこに働いている力学は家族の解体どころか一層濃密な関係性への凝縮へと向っており、そこには〈再編〉の可能性さえ胚胎している、と言うのだ。
《近代は、制度としての家族を未解決の課題として残したのではなく、家族そのものに固有の原理を自立化させ、前面に押し出したのである》(同上)
近代が家族を解体へと導いていくのではなく、逆に近代が「家族」という形態へ個々人の意識が焦点化されるような趨勢を持ちえていただとするならば、「……主義」がどのような社会的影響力を持とうともそれらとは無縁な形で、「家族」という共同性のあり方は存在し続けることになる。
《だれしもある親の子であるという意味において…家族関係を作らない人などは存在しない》(p.64)
《家族とは、一対の男女の性的親和および性的産出を核として、互いが互いのことをその特定の固定した位置関係にもとづいて「気にかける」ところに成り立っている共同性である》(p.81)
世のお父さんお母さん達は思い出してみて欲しい。自らが「家族からの自由」を欲し、そして己が手にしたものが新たな「家族への自由」であったことを。
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