紙の本
暴力の博覧会
2004/01/18 23:47
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投稿者:リエイチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
暴力の博覧会である。
虫を殺す暴力、風呂屋で放尿する暴力、リンチする暴力、それをもみ消す暴力、陰核を切り取られる暴力、生徒の窮地を放置する暴力、親が子を見捨てる暴力……。この本一冊の中の暴力を数え上げていたら丸一日はかかるだろう。
さらに暴力の連鎖もある。ソープ嬢を蔑みながらいたぶる高校教師の暴力、その高校教師とソープ嬢をいたぶる若者たちの暴力、若者たちの中には、教師がかつて窮地に放置したままの生徒の姿があったし、教師にひどい目に遭わされても懲りないソープ嬢は、自分を慕うやくざの男に冷酷だ。
主人公の高校教師は、ある日出会ったソープ嬢と共にどんどん堕ちていく。頭の悪い、暴力に麻痺した女の言動が、男をどんどん、投げやりで凶暴な気分にさせていくのだ。暴力の度合いはどんどん濃厚になって、けして気分のよい内容ではない。が、なぜか読後感は悪くない。凄惨な話なのだが、女の、窮地にめげないたくましさが、「人間なんて気取ってみたって、しょせんはこんなもんよ」と言っているようなのだ。
「暴力はいかん!」と普段私たちは声を大にして言うけれど、「疲れている夫を無視する暴力」や「混雑するスーパーで、駐車場を他人から奪う暴力」や、「この寒空にホームレスがいることを知っていて何もしない暴力」などを、毎日果てしなく続けている。
いちいち悩んでいては生きていけないのである。暴力は憎むべき行為である。しかし、生きるということは、被害者になったり加害者になったりしながら、傷だらけになって前に進むことなのだと、気づかされる。
抵抗と諦観を繰り返しながら、人は生きていくのだよ、との著者のメッセージを感じた。
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これも賛否が分かれそうやなと思った。目を覆いたくなるような描写も確かにあるけども、それはそれでいいと思う。
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「ブルーシートが無数の皺を伸ばしながらゴホゴホと膨らみ遥かな高みに浮いた小さな月を隠した」は脱帽。著者が、一般うけしそうな、明るーい作品を書いたら、すぐに天下を取れそうな気がするんですが。
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きらいだ。気持ち悪くて。狙ってるとこがまた嫌いだ。
中年の(しかもまだまだ全然自分は若いと勘違いしてる)おじさんの気持ち悪いとこが惜しげもなく垂れ流しだ。
だからインパクトだけは大だ。
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「爆裂地区」の次に好き。読後、テンションが異常に落ち込む感じになる。この作品は中村文則に結構似ているかも。
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高校教師である男の内面に巣くう、暴力への衝動・・。
なんなんだろう、これ。
淡々と進む物語に、暴力の意味なんて考えられない。
それがまた怖いって感じかなぁ〜・・・。
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こういうエログロ小説は初期村上龍に任せておいて、もう日本文学界には必要ないと思うのですが。
読後感がかなり悪いです。
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前歯が取れ「もほもほ」と喋る風俗の女はかわいらしいんだけど、
後半とっても痛い箇所は一度しか読めなかった。
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文体は読みやすい方なのだが、内容が痛い。縫合のシーンは辛かった。自分のS度がどのくらいなのか測ってみたい方はどうぞ。
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2007.8/4
ラストのほうが痛い。暗くて終わってる感じの話。芥川賞っぽいと思ったら本当にそうだった。
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第129回芥川賞受賞作品。なのにガッカリ。帯に山田詠美が絶賛してたからちょっと期待してたのになぁ。高校で倫理を教えてる男と風俗嬢の物語。と、まとめるのかな。不快になる表現が多く、途中で読むのを止めようかと何度思ったことか。なんだか全てにおいて「負」の雰囲気な作品。読んでて楽しいと思える箇所がなかった。
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えげつない描写の数々は、私が今まで
読んだ本の中で一番かもしれません。
マイナスのパワーをひしひしと感じます。
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もう一言でいって不快で気持ち悪い。 金原ひとみのアッシュベイビーに通じるものが。 癖がありすぎて逆に凄い。
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4年前の芥川賞受賞作〜高校の倫理の教員になってから2年。生活指導で追われる毎日で,慎一の楽しみは工事現場で行われている乱痴気をこっそり見物することだ。ソープ嬢から電話が掛かってきて成り行きで6万円を貸してやることになったが,彼女は身体で返済する様子だ。夏休みは共済組合から60万円を借りて,サチコと四国へ行き,彼女の5歳と4歳の息子と遊び,帰り際で結婚の約束をするが,自分のサディスチックな性格が判ってきた。工事現場でロープで縛って事に及ぼうとすると若者がやってきて暴力を振るわれた。その中には生徒もいたようだ〜作者は1961年大阪生まれ,実際に教壇に立っている。おかしな新人や生徒を見ていると小説のネタに困らないのだろうが,奇行で辞めさせられた者を扱うしかないよな
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「人の痛みが分かるかどうか」というのは難しい問題であるが、倫理的には「そりゃぁ分かったほうがいいだろう」ということになるに違いない。本書の描写からは、まったくといっていいほど「人の痛み」とか「悲しみ」という感情が欠落している。主人公の心情吐露も、また作者の描き方も、非常に独善的で他者を寄せ付けないものがある。それは、筆者が意図的に挿入した「倫理としての暴力」の一端なのかも知れないが、そこは読み手の判断として難しいところである。本作を「暴力的表現が過剰に盛り込まれた変態小説」という風に理解してしまうのはあまりに一元的な評価の仕方であると思うものの、それ以外に「筆者が何を描きたかったのか」ということは、非常に分かりにくい。ただひとつ、本作で描かれるような「暴力」性はわれわれの日常と非常に密接なところにあるのであり、実はそれに嫌悪感を示したり、目を背けようとする読者の行為それが、もっとも文学が対象としなければならないものなのかもしれないとは思った。