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紙の本

薩摩という可能性

2006/12/17 18:56

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:唐賢士 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 わが国の幕末において、三百諸侯中、最も古風な「鎌倉以来」の武家文化を誇りつつ(歴史の長さでは、徳川など相手にもならない)、同時に最も先進的な科学技術をも採用しつつあったのが、西南の雄藩・薩摩島津家であったことは今日では周知のことだが、その薩摩に生まれた天才的な狙撃手・砲術研究家・銃器開発者として、帝国陸軍制式採用「村田式」に名を残したのが、村田経芳であり、本書は彼の「薩摩時代」「戊辰戦争」「西欧視察」「西南戦争」に焦点を当てた伝記小説となっている。
幕末に特異な性格を発揮した雄藩である、薩摩島津家を対象とした時代小説は多いが、本書は、デビュー当事より、刀剣類や銃器類に造詣の深い(要するにマニア?)ことで良く知られる東郷隆氏の小説だけあって、幕末薩摩における諸派砲術の比較や、伝統銃器と輸入洋銃との構造や戦術の比較など、当事の薩摩に根を下ろしつつあった「先端科学技術」の観点から、あらためて薩摩の士風や藩組織の性格の「特異性」を浮き彫りにすることに成功している。
いわば、「幕末の薩摩隼人」とは、示現流や薬丸流などの実戦武術によって個人的な心身を鍛錬し、幼少より二才組などの団体組織の中で「最も古風な武士道の練磨」に努めつつ、西欧より輸入した最新鋭の兵器・戦術思想・科学技術で武装することにいち早く適応した戦士集団だったのであって、「最先端の科学で武装した、最も古風な日本武士」と表現することもできるのではないだろうか。その意味で、本書の主人公である村田経芳は、それらの、自身の伝統をバックボーンとしつつ、先端技術を理解し、駆使し、独自の研究と改良すら行うことのできた「薩摩武士」の一つのモデルとして読むことができるように思うし、それはまた、日本人全体にとっての理想的なモデルになり得たようにも思う。
これらの、伝統と変革の狭間の時代に発生した「一つの『理想的な日本人』のモデル」としての薩摩隼人は、その後、薩摩の特異性そのものによって発生した西南戦争によって有能な人材に甚大な被害を受ける結果となり、「『薩摩隼人』という日本人のモデル」は、歴史の一時期に一瞬だけ光を放った「可能性」としてのみ、とどまることになった。
しかし、現在、歴史上において最もその民族の性格が衰弱し、とめどもない「植民地化」に追い込まれてゆきつつある「日本人」が、再び、「独立した国家」「独立した民族」(そもそも、今生きている日本人の「ほとんど」は、日本が独立した国家であり、日本人が独立した民族として行動していた「記憶」を持てないままで成人している。そんな民族が再度「独立」できるだろうか、という深刻な自問こそが、必要である)として世界史上に生存してゆくことを欲するとするならば、強烈な伝統と先端技術の間で、幕末の薩摩藩が挑戦した「試み」についての、深刻な考察と反省が求められているのではないだろうか。
あくまで伝統に根づいた、科学技術の豊かな活用。
たゆまぬ鍛錬に基づいた個人の自強とプライド。
それらの個人に支えられた、開放的でありながら、鍛えられた鋼のような柔軟な強さを持った組織としての地域と国家。
これらの目標を実現するための具体的なヒントを、幕末の薩摩藩の「試み」、その成功と失敗の中から、早急に発見し、自分の身の回りから実践していくこと、それこそが、私がこの伝記小説から得た有意義な思考だったように思う。

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