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紙の本
東欧SFアンソロジー
2011/10/28 21:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアソ連SFアンソロジーを編んだ深見弾編による東欧SF選集。こちらはさすがに深見氏だけではなく、沼野充義、ルーマニア文学の翻訳等で知られる住谷春也、ユーゴでは波津博明といった訳者が協力している。重訳かどうかの説明はないけど、さすがに全部原語訳ということはなかろうと思われる。
こちらは新しめの作品を重点的に選んでいる点が対照的。そもそもSFの紹介が遅れていたりした国々なので、英米等のSFの体系的な紹介が行われてきてからのものを選んだと言うことだろう。また、扱っている国が多いために、十ページほどの短い作品が多くなっていて、やや読み応えの点で難があるのと、その国のSF史を感じられるほど分量がないというマイナスポイントがある。
特にポーランド、ハンガリー、ブルガリアをカバーする上巻は二十篇近い作品が収録されているので、その傾向が強い。つまらないわけではなく、わりと面白くても短い作品が多いと印象に残りづらい。
なかでも読み応えがあるのはハンガリーのチェルナ・イョジェフによる「脳移植」。脳を他人の身体に移植する技術を秘密裏に開発していた医師の病院に、偶然事故に遭った独裁者が運び込まれてくる。死を避けることはできない容態なのに、政府側近は絶対に治療しろと圧力を掛けてくる。医師は元々反体制組織に関わっていて、これを好機と独裁者の身体に自分の脳を移植しようと計画する、という話。なかなか政治的に挑戦的。
あとアントン・ドネフの「金剛石の煙」は、統計的には全く同じ性格の人間は六世代ごとに現れる、というだけの根拠で未来においてホームズとワトソンそっくりの曾孫がまたも二人一緒に行動しているというホームズパロディ。未来社会であることを逆手にとって、土星に住んでいる人間特有の癖とか、読者の与り知らぬ根拠を使っての自由すぎる推理をサクサク展開していくのが笑える。ショートショートならではのユーモアSF。
なかなか味のある作品を書いているパーヴェル・ヴェージノフは短篇集が邦訳されている。未読だけれど、SFではないものの幻想小説よりの雰囲気のようだ。
下巻はチェコスロヴァキア、ユーゴ、東ドイツ、ルーマニアをカバーする。この巻は作品数を絞っていて各作品なかなか面白い。チャペックも短い作品が二つ載っている。
面白いのはルーマニア編のホリア・アラーマ「アイクサよ永遠に」だ。これは全体の半分ほどを占めていて、短い長篇くらいの長さを持っている。希少鉱物をもとめて緑一杯の星、アイクサへと出発した先発隊が音信を絶ち、第二陣がその謎を解明するためにアイクサへと降り立つところから始まる。そして、そこでもまた隊員たちがひとりまたひとりと消えていくという「そして誰もいなくなった」展開のSFミステリだ。ある程度オチというか犯人の想像はつくだろうけれど、ラストの展開に全体主義批判が感じられるのは東欧という色眼鏡で見すぎなせいだろうか。
各巻末の東欧圏SF事情の解説もかなり詳しい。ユーゴSF事情のところでゾルタン・ジフコーヴィチという人物が出てくるのだけれど、この人は経歴その他から考えて、ゾラン・ジフコヴィッチ(あるいはゾラン・ジヴコヴィチ)その人だろう。『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』という薄い短篇集が一冊出ている(bk1では扱っていない)。
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