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八ケ岳の食卓 Flavours from the forest 簡素でおいしいレシピ美しく愛しい普通の一日 みんなのレビュー
- 萩尾 エリ子 (著)
- 税込価格:1,572円(14pt)
- 出版社:西海出版
- 発行年月:2003.8
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文庫
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紙の本
滋味あふれるスローライフなエッセイ
2003/11/27 10:09
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:甲斐小泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
八ケ岳山麓の蓼科ハーバルノートのオーナーである著者が地元の長野日報で連載していたエッセイとレシピをまとめた分厚い文庫本である。
面白い本を見つけると、一気に読む習性のある私なのだが、この本に限っては、毎日少しずつ読んでいた。それは、絶対につまらないからではないのだ。地元のとれたての野菜、ハーブ、果物などを中心に、八ケ岳山麓の風物や、著者が時折訪れる各地の描写などが加わった短めの文書なのだが、あたたかい落ち着いた語り口で、しみじみと味わいながら読むために、一気読みが出来ないのである。
新聞連載のコラムだけあって、一つ一つが短いので、どこから、いつ読んでも、きちんとした一つのまとまりになっているので一気に読まなくても、脈絡がつかめなくなる懸念がないというのも、のんびり読書が出来る理由として大きいと思う。
レシピについても、いわゆる料理本と違って、こまごまとした決め事がなく実におおらか。料理下手を自認する私にも「ひとつ作ってみたいな」という気持ちを起こさせてくれる。著者の身の回りの素材のおいしそうな描写に、そんなイキイキとした材料で作られた料理はさぞおいしいだろうなぁ、と思う。が、だからといって、決して自分から遠いものとは思われないのである。おおらかなレシピを読んでいると、例え地元産の新鮮な素材がなくて、自分の身の回りで調達できる野菜や果物でも、それなりの味わいのものが出来るだろうなぁ、と思われて来るのである。また、時にはレシピなしのコラムもあるのだが、それはそれで味わいがある。
各コラムごとにスタッフの方々による線描のイラストも添えられ、シンプルでおいしそうな料理を引き立てているのも、じっくり一つ一つ読んで楽しめる理由かと思う。
書店に並ぶベストセラー本の中にはスピードを要求される現代に相応しく、時流に合う、いわばファーストフード的な趣の本も多いが、このエッセイとレシピは、いつ読んでみても、ほのぼのとあたたかくなる、いわばスローフードな本だと思う。
寒さがつのり、家の中で過ごしがちになる晩秋から真冬にかけて、あたたかい飲み物を片手にこの本を読むと、ほかほかな気分を味わえる事と思うし、春先から読めば、近所の野山に足をのばしてみたい気分にさせられる事と思う。
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