紙の本
ああ、これがDNAだ!
2007/07/01 09:56
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶにゃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年(2007年)5月、ワトソン博士は自分のゲノムを公開したそうである。自分の遺伝子情報をまるごと公開するというのは、素っ裸で群衆の前に立ちはだかるようなものであろうか。そこに羞恥心を持つか、恐怖心を持つか、あるいは快感を持つかは、まさにその人その人のDNAの一片に刻まれているのかも知れない。ワトソン博士の場合はどうであろうか。おそらくは、本書でも熱く語られているように、遺伝子治療の発展への果てなき希望がその動機の根底にあるに違いない。
それはともかく、この本は大変に読みやすい。高度な内容であるにもかかわらず、僕のような門外漢でも、遺伝子を取りまく世界が少しわかったような気になる。わずかでも知的好奇心を持っていさえすれば、充分に知的興奮を得ることができるものなのだなと、今更のように得心した書物である。
遺伝子探求の歴史、バイオテクノロジーの誕生(遺伝子が特許になるとは驚きであった)、遺伝子組み換え、DNA鑑定、遺伝子治療等々、記述は細胞の世界のなかだけにとどまらず、歴史、経済、社会、法学、医学、そして哲学、倫理学をも包含する。「生命とは、互いに絡み合った膨大な化学反応の体系にほかならない」と断言するワトソン博士にそのまま相づちを打つかどうかは別として、ことがすべての生命体に存在する遺伝子の問題であるだけに、この本を読む者は、人類の未来にまで考えを巡らせることになるだろう。
本文に関係はないが、ページをめくってすぐ、ワトソン博士が父親と妹と一緒になって笑っている家族写真が目に入る。見た瞬間、「ああ、これがDNAだ!」と笑ってしまった。3人ともそっくりなのである。この写真、一見の価値がある。きっと楽しくなってくるだろうから。
紙の本
解き明かされる神秘の鎖
2004/01/22 23:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北祭 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「DNA(デオキシリボ核酸)の二重らせん構造」の発見は、20世紀最大の科学的な事件であった。この業績(1953年に論文を発表)により、1962年にフランシス・クリック、モーリス・ウィルキンスと共にノーベル生理医学賞を受賞したのが本書の著者ジェームズ・D・ワトソンである。
本書は、「二重らせん」の発見から50周年記念事業の一環として企画されたものであるが、その堅苦しい建て前とは裏腹に、内容はずばぬけて分かりやすい。ワトソンはこの企画が上がったとき「せっかく本を書くからには、ただ単に過去50年の出来事をふり返るだけではなく、DNAのこれまでと現在、さらには未来をも展望できるようなものにしたい」「また、広く一般の読者の手にとってもらえるよう、分かりやすい記述を心がけた」と語ったが、それは見事に成功している。ワトソンが本書の執筆にあたりサイエンス・ライターとしても活躍中の進化生物学者アンドリュー・ベリーの協力を得ていることは勝因であるが、翻訳者が『フェルマーの最終定理』『暗号解読』といったいずれも読みやすい名著を仕上げた青木薫である点も見逃せない。
本書で特筆すべきポイントは3つ。
一つに、「遺伝という現象が分子レベルで解き明かされるまでの道のり」における“明解さ”である。ワトソンは分子生物学というものを世界中で最も深く理解する一人であろう。その当人によって時に美しい図版などを用いた解説がなされるのである。これだけ有り難いことはない。そして感動は「道のり」つまり幾多の鮮やかな実験に仕込まれている。
たとえば、細胞分裂の際、染色体のDNA分子がファスナーを開くようにして二本の鎖に、こんがらがりもせずに分かれるのは本当なのか。電子顕微鏡のない時代に、どのように実験による証明ができたのか?(この実験は「生物学でもっとも美しい実験」といわれる)
あるいは、DNAはたった4つの塩基(A,T,G,C)の配列からなるという。この塩基配列をアミノ酸の並びに変換する規則が不明であったとき、シドニー・ブレナーとクリックはどのような発想でこれを証明したのか?
いずれの謎解きも極単純で美しい。多くのノーベル賞ものの完璧なる実験とその成果によって垣間見るDNAの神秘が堪能できる。
二つに、「バイオテクノロジーの誕生から現在まで」「ヒトゲノム計画とそれに関する話題」「遺伝病との戦い」「行動遺伝学」という本書の流れにあって、これまでに起こった世界的に有名で重要なトピックが網羅されているという“一大総括的な面”である。分子生物学の歩み、その正史がまっすぐに語られる。
三つに、分子生物学の様々な面への応用、食物や人の遺伝子に対する「人間の介入」という重大な問題へのワトソンの思いが読みとれる点である。遺伝子治療の分野はまだ始まったばかりで致命的な失敗もあり、それを推し進めることに対する人々の危惧はいや増している。しかしワトソンは立ち止まらない。その言葉の端々からは「科学者を信じて欲しい」との意志が伝わる。進化が人の細胞に組みこんでくれた生命の神秘に対する畏怖の念と同じくらい「気まぐれに襲いかかる残酷な遺伝子のハンデと欠陥、とくに子どもたちを痛めつけるそれに対する苦しみ」に心を痛めていることをワトソンは告白する。立ち止まってはならない、希望を捨ててはならない、救わねばならない−。
DNAの明かす真実を恐れず凛然と立ち向かう科学者がここにいる。
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DNAの二重螺旋構造を解明したJ.D.ワトソンとクリックは有名なのできっと知っているはず。この本はそのワトソンの著書。DNA二重螺旋構造の発見に至るまでの話やDNA技術の将来性などについて分かり易く、科学的に書いてある。
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(未完)
(書誌情報)
タイトル DNA : すべてはここから始まった
責任表示 ジェームス・D.ワトソン,アンドリュー・ベリー著
責任表示 青木薫訳
出版地 東京
出版者 講談社‖コウダンシャ
出版年 2003.12
形態 521p ; 20cm
注記 原タイトル: DNA.
ISBN 4-06-212172-7
入手条件・定価 2400円
全国書誌番号 20540719
個人著者標目 Watson,James Dewey (1928-)
個人著者標目 Berry,Andrew.
個人著者標目 青木, 薫 (1956-)‖アオキ,カオル
普通件名 分子遺伝学‖ブンシイデンガク
→: 上位語: 遺伝学‖イデンガク
→: 上位語: 分子生物学‖ブンシセイブツガク
→: 関連語: 神経病学‖シンケイビョウガク
普通件名 遺伝子‖イデンシ
→: 下位語: プラスミド
→: 関連語: 染色体‖センショクタイ
→: 関連語: ゲノム
→: 関連語: 核酸‖カクサン
→: 関連語: バイオインフォマティクス
→: 関連語: 細胞遺伝学‖サイボウイデンガク
→: 関連語: 遺伝子工学‖イデンシコウガク
→: 関連語: 遺伝子資源‖イデンシシゲン
普通件名 DNA‖DNA = ディーエヌエー
→: 上位語: 染色体‖センショクタイ
→: 上位語: クロマチン
→: 上位語: 核酸‖カクサン
→: 関連語: ポリメラーゼ連鎖反応法‖ポリメラーゼレンサハンノウホウ
→: 関連語: DNA鑑定‖DNAカンテイ = ディーエヌエイカンテイ
→: 関連語: 転写(遺伝学)‖テンシャ(イデンガク)
→: 関連語: デオキシ糖‖デオキシトウ
→: 関連語: DNAチップ
NDLC RA111
NDC(9) 467.21
本文の言語コード jpn: 日本語
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第一人者が書いている本だけあって、研究の現場のエピソードがとても面白いし、専門的な内容だけど非常にわかりやすい。
コールドスプリングハーバー研究所がこの分野の最先端の研究を沢山しているんだと初めて知りました、恥ずかしながら。
遺伝の問題は、人間のルーツから病気、生殖、様々な社会問題にまで関係しているので、正しい知識を持つことはほんとに大切。他人事じゃなく、自分自身に深く関わる問題だと改めて認識した次第です。
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二重らせんの発見からヒトの遺伝子への応用まで、DNAに関するあらゆるドラマが分かりやすく語られている。内容が内容だけにこれ1冊だけでは駆け足になってしまっているが、興味のあるテーマはそれぞれもっと詳しい書物を読めばいいと思う。
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図書館にて借読。
ノンフィクションの中に隠される人間ドラマにに大変自分が弱いことを自覚してからこういう読み物に惹かれがちです。
理系には学生時代さっぱり興味を示さなかったのが悔やまれるくらいおもしろかった。
自分で考えることは出来ないがこうやって知識として汲み取るには大変興味をそそられた。
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めちゃくちゃおもしろかった。小説のようにおもしろく、教科書のように知識がつき、新聞のように考えさせらるので、1冊で3倍ぐらい得した気分になれる。
2重螺旋の発見でノーベル賞を受賞した、ジェームズ・ワトソンが、アンドリュー・ベリーという生物学者でもあるライターとともに書いた本である。2重螺旋の構造から、遺伝学の歴史、遺伝学の問題、今後の展望を彼独自の視点でまくし立てている。
専門的なことを述べている部分はまったくついていけないところもあったが、わからなくても読み進められる。なにより、ワトソンの学者としての遺伝学への情熱がひしひしと伝わってくる。ただ、この本はあくまで一人の遺伝学者の考えを述べている本である。たとえば、遺伝子組み換え作物の問題など、「なんでも反対屋さんの罪」はもっともだと思うが、彼の考え方自体は科学至上主義ので、偏りがあるように思う。ビジネスや倫理の問題などは、老人の愚痴とも思えるような記述も多い。それでも、彼の遺伝学に対する愛情を持った記述には心を動かされるし、これまで持っていたさまざまな偏見を正す良い機会になったと思う。少なくとも、(抑えきれてはないが)感情を抑えて、理路整然と実証された事実のみを書くように心がけてあり、中途半端なことや、エセ科学的なことは書いてない。
なにより、この本を読んでいると、学問に対する愛情がわいてくる。この本を読んで、学者になりたい、なればよかった・・・と思う人は多いのではないだろうか。そう思わせるほど、この本からは彼の熱意や愛情が伝わってくる。また、ライターが共著しているためか、文章もとてもうまく、引き込まれて夢中になって読んでしまった。
後で調べたところによると、ワトソンは、実直に物を言い過ぎることによって批判も多いらしい。実際、この本の中でもタブー視されそうな問題についてもずかずかと率直に意見を述べている。若くしてノーベル賞をとって地位を築いた人だからこそ許されることだと思うが、中途半端にもったいをつけずに、自分の意見を意見としてストレートに伝えているところには非常に好感がもてた。
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遺伝子について勉強せずに「遺伝子組み換え食品はキケンだ!」という人は、まだ議論の土台に立ってもいませんよ。
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遺伝子組み替え作物は別に怖くないのだなということがわかった。生物を全く知らなくてもわかりやすく遺伝子の面白さを解説してくれる。バイオテクノロジーを恐れるのはよく知らないからなのだな、と思った。
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著者のジェームス・ワトソンとフランシス・クリックによるDNA二重らせん構造の発見からまだ61年しか経っていないがその間にヒトゲノムの全塩基解析が終わり、バイオテクノロジーは大きな産業となった。まだこれからの技術も含めそのワトソンが遺伝学の始まりから現在までをレビューしたのが本書なのだが最も気になるのがその二重らせん構造を発見したいきさつをどう描いたかだった。
1951年にはDNA骨格の構造が非常に規則的であることがわかってきていた。ワトソンが博士論文を書き上げDNAを研究できるコペンハーゲンの研究所に移ったのが1950年、翌51年に期待せずに出たX線解析の小さな会議でノーベル賞を同時受賞したケンブリッジ大キングスカレッジのモーリス・ウィルキンスが発表した写真が極めて規則的な結晶構造を示しているのを見たがこの時点ではまだ何も見つかってはいない。ワトソンはウィルキンスに手伝いたいと申し出るが相手にされていない。ちょうどこのころアメリカではライナス・ポーリングが分子模型を作るという今では当たり前の方法によりタンパク質の構造をアルファらせんだと推測し、わずか1週間後にその正しさが確かめられた。
51年秋DNAの構造を解明するためにX線構造解析を学ぼうとキャベンディッシュ研究所に移ったワトソンは23歳でここで同じ部屋を使うフランシス・クリックと出会った。ワトソンはポーリングの模型をDNAに適応できないかとクリックに尋ね、クリックは旧友のウィルキンスを呼び進展を聴くことになった。このころウィルキンスはらせん構造を予想していたがそれは三重鎖だった。ウィルキンスの同僚ロザリンド・フランクリンは模型作りに反対しウィルキンスとは大げんかをしていたためウィルキンスはフランクリンの実験の進捗を知らず、フランクリンのセミナーに出席したワトソンがその内容をヒントに三重鎖のモデルを作ったのだが、結晶学の初心者だったワトソンはセミナーの内容を勘違いしDNAが水分を含まないモデルで模型を作ったためフランクリンは一瞥してそのモデルは間違っていると指摘しますます模型作りに反対するようになった。そしてワトソン=クリックはDNAのモデル作りから手を引き構造解析はキングスカレッジに任せるように言い渡されてしまっている。
53年に入るとポーリングが三重鎖モデルを発表したが、この論文には明らかな欠陥があった。ワトソンはウィルキンスとフランクリンにらせんモデルを説明するがフランクリンは取り合わない。そこで今ならもの凄い批判を浴びるやり方だが、ウィルキンスはフランクリンには内緒でX線写真を見せた。後にウィルキンスは元々自分にフランクリンのデーターの閲覧権があったと釈明しているのだが。この時までワトソンが知らなかったB型DNAの写真には十字形の影が写っており明らかにらせん構造を支持していた。後はどういうモデルを作るか、しかしこの時点でもワトソンは塩基が互いに水素結合をしているというデーターを無視していた。それはワトソンが持っていた核酸の教科書が間違っていたためで2月27日にその間違いを教えられたワトソンは模型の水素原子の一を変更し翌28日に正しいモデルが完成した。それはシャルガフのデーターを元にクリックが予測していたアデニン=チミン���グアニン=シトシンのペアを裏付けるものでもあった。
ノーベル賞の元となったワトソン=クリックの短い論文はわずか1ページ、以前に発表された三重鎖モデルの欠陥を指摘し二重らせんモデルのペア構造を説明したものだ。そしてその論文はウィルキンスとフランクリンのデーターとアイデアに刺激されたと結ばれている。フランクリンが生きていれば同時受賞者は彼女だったかも知れないと本書では書いているが、別の本ではワトソンはフランクリンには二重らせん構造は発見できないとばっさり言い切っている。この本でもフランクリンを誉めてたりその功績を認めてるわけではない。(「二重らせん」はまだ読んでませんがそっちではもっとぼろくそだとか。「ロザリンド・フランクリンとDNA-盗まれた栄光」「ダークレディと呼ばれて 二重らせん発見とロザリンド・フランクリンの真実」「二重らせん第三の男」も合わせて読みたいのだが・・・)
直感に基づいてモデルを作り上げたワトソンの功績はセレンディピティと言うにはあまりにも強引だ、それにしても自前のデーターは何もない。ただその直感は正しかったということだ。
他に紹介しているのはDNA鑑定、遺伝子治療、遺伝子組み換え技術からイブの7人の娘の話もあり各章だけでも1冊の本が書ける内容だ。ちなみにワトソンは遺伝子治療には条件付き賛成で組み替え作物は問題なく賛成。一方で企業が解析した病原遺伝子の情報を特許化するのには反対している。なかなか良い人とは言いにくいし、あまり一緒に働きたいタイプではないがこの本の内容はすばらしい。まあ共著者がサイエンス・ライターなのでそこで上手くまとめてるのかも知れないのだが。
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本書は1953年にDNAの二重らせん構造を発見しノーベル医学・生理学賞を受賞したジェームス・ワトソン博士が、研究の歴史と未来を解説したもの。
まずは遺伝を科学の領域で捉えようとしたメンデルの業績から、二重らせん構造の発見、その後の「ヒトゲノム計画」の歴史を振り返る。方程式や化学記号が並ぶ専門書とは異なるのは、人間の社会的営みや歴史的背景の中での意義や批判を軸とした解説を加えている点だ。ナチスの思想に代表される「優生学」の暗い歴史や、先端研究に影響を与える政治的思惑についても、けれん味なく言及する。そのうえで「遺伝は行動や能力を『決定』する因子ではなく、いわばポテンシャル」という見解を示し、遺伝か環境かの議論が時代遅れであることを証明する。
遺伝子組み換え農作物や塩基配列特許の是非論、DNA鑑定など今日的課題についても深い見識を示す。
(日経ビジネス 2004/02/09 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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わたしの瞳は琥珀色で、それは南アメリカ大陸から来ていた。すっきり。
医師のDNAを以ってして、勉強はしなくてもできること。だけど、3歳のとき肺炎になり、死に損ない。オードリー・ヘップバーンはわたしの理解者だった。彼女の社会的活動によって、わたしは身体の脆弱を受け入れることが出来たのだ。
ティファニーで朝食を。わたしはまんまに滑べった。そして、前前前世の君の名はとして生きている。それもしあわせ。