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平沢計七作品集

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2014/05/18 12:30

投稿元:ブクログ

叫びたい叫びたい大海よ 暗い夜の大海よ
 平澤計七

「たとえ立派な法律が出来ていても之を使う人がなきゃ何にもなりゃしねえ」。裏長屋に住む老人が、そう声を荒げる。このセリフは、1916年(大正5年)作、平澤計七による戯曲「工場法」のものだ。
 日本で初めて労働劇団を創立した平澤は、1889年(明治22年)、新潟生まれ。工員、兵役を経て労働団体友愛会に入会し、その機関誌の記者となった。「生協」の前身にあたる消費生活組合や、労働金庫の設立にもかかわり、多くの労働争議の指導にもあたったという。
 平澤のユニークな点は、労働運動は同時に文化運動だとし、文化活動の意義を熱心に説いたこと。だが、大卒エリートの運動家らには、なかなか理解されなかった。理論派の大卒エリートは、運動の舵取りは得意だが、内部分裂を起こしがち。そんな彼らと生粋の労働者の足並みをどう揃えていくか―苦心も多かったことだろう。
 大和田茂・藤田富士男両氏による丹念な評伝を読み、平澤の現実的な発想に共感をおぼえた。日本の労働運動は、けっして外国からの翻訳・移入ではなく、文化運動と共に歩むべきだという考え。また、労使協調をいとわず、地道な対話路線を模索していた点も興味深い。
 20編以上の戯曲はじめ、掲出歌のような、破調だが肉声に近い短歌も残している。
 一線で活躍中の1923年(大正12年)、関東大震災直後に亀戸署で刺殺された、いわゆる「亀戸事件」の犠牲者。享年わずか34であった。

(2014年5月18日掲載)

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