紙の本
ワニの孤独
2018/10/28 16:50
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投稿者:まな - この投稿者のレビュー一覧を見る
人の知恵を身につけたカメレオンと出会うことで、ワニの運命が変わってしまいます
絵本ではありますが、絵と文章でここまで考えさせられるものかと思わせるものがあります。
人の数だけ解釈が生まれる作品でありつつ、同じ読み手であっても読むタイミングによっては受け取り方や作品の印象すらもガラッと変わってしまうような、不思議な絵本です。
紙の本
著者コメント
2004/02/17 12:30
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投稿者:梨木香歩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
相手を呑み込むか、自分が呑み込まれるか。取り込むか取り込まれるか。
どちらかを喪うことなしには、他者との関係を結ぶことも切ることも出来ないワニの宿命的な葛藤を、何とか昇華させてあげる道はないものだろうか、と考えていましたが、出久根さんの、力強くエネルギーに満ち、同時に静かな絵に助けられて、出版にいたりました。
ワニ自身思いもよらぬ終わり方だったでしょうが、以来、真夜中、斜め後ろにでへへと笑うワニの気配を感じます。近寄らないでほしいのですが、彼なりに懸命に生きた一生でした。そこが憎めないところでもあります。独特の味わいが、圧倒的な存在感です。頭を撫でてあげられるかどうかが、私の人間的成長の指標にもなるでしょう。
細部まで手を抜かない、深々とした絵です。どうかゆっくりお時間をかけて、味わっていただけたらと思います。
(梨木 香歩)
【著者紹介】
〈梨木〉1959年生まれ。児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事。著書に「西の魔女が死んだ」(日本児童文学者協会新人賞等)、「裏庭」(児童文学ファンタジー大賞)など。
〈出久根〉1969年生まれ。98年ボローニャ国際絵本原画展入選。2003年BIB(ブラティスラヴァ世界絵本原画展)グランプリ受賞。絵本に「あめふらし」(グリム・作)「ペンキや」など。
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投稿者:風花 - この投稿者のレビュー一覧を見る
・母ワニと子ワニの関係
・カメレオンの意味
・ライオンと子ワニの関係
すべての要素から考えさせられるのは「境界線」ということだと思う。
他者と自分の境界線を引くとはどういうことなのか、
境界線をなくすことを突き詰めたらどうなるのか(子ワニとカメレオン)
境界線がないと思っていたところに、実は存在した境界線(母ワニと子ワニ、子ワニとライオン)…など
出久根育さんの挿絵は、細かい所で色々発見があった。それは梨木香歩さんの本文と似ているのかも。
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梨木香歩・文、出久根育・絵。
自己中心と他者尊重の境界を問う一冊・・・・ということで、絵本とはいえ、小学校高学年から大人までを対象にした、ちょっと哲学的な1冊。
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この本で梨木香歩さんはすごいと再確認。梨木さんの絵本を読んだのは初めてだったが、ワニ・ジャングルの生き方、そして成り立ちが深く描かれていた。
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出久根育の鮮やかなジャングルの絵に惹かれた。内容は梨木香歩らしい深読みを誘う奥深さがあるが、なによりも出久根育の描く絵の力にまずは触れてほしい。
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絵が、とにかく素晴らしい。美しい。
この物語の根底を流れる恐ろしさ、怖さを、さらに引き立てている気がして、もう、釘付けでした。
一体、何がエゴで、何が摂理なんだろう?人間社会を風刺しているような、そうでないような?読み終わった後、ぼんやりと考え込んでしまった一冊でした。
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梨木さんの文章に雰囲気のある出久根さんの絵があわさり
素敵な絵本に仕上がっている。
ジャングルの中のお話のようだが、これは人間世界にも
いえることで。
食うか食われるか。なかなか深い絵本だと思う。
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自分と他者との線引きのおはなし。
弱肉強食のシビアな世界・ジャングルで兄弟でさえ食べて生きてきたワニ。
生存に対する解釈は哲学的でさえあるかも。
言っておきマスが、読後の後味の悪さは1級デス。
でもそれだけでない何かが残りマス。
何回も読み返してしまって、いろいろなことを深く考えさせられる本デス。
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自分と他人の区別だけで
生きている
「斬新で最先端の存在」の
ワニは、
仲間を食べ、兄弟を食べ、
最後に自分の親友だと
思い込んでいるライオンに
食べられる。
食べられて一部になれば仲間。
無関心なライオンの
「なるほどねぇ」
というつぶやき。
「どこからどこまでが
『自分たち』なのか
はっきりできない・・・
そんないいかげんな
平和条約のようなもの」
というワニのことば。
絵本だから、
絵にもおもしろい含みが多い。
最後の絵は
草原の片隅で食べられているワニ。
食べているライオンの群れ。
シマウマの群れ。
象の群れ。
川沿いに一人のワニ母。
ワニの腹から逃げ出した
カメレオン一人。
空から眺めるハゲタカの視点。
世界はこんなものだ。
そんな最後の絵。
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また、梨木香歩さんの絵本を図書館で見つけて借りました。シブイ絵本です。(シブすぎると次女に言われてしまいました)むりやり昨夜、寝る前に読んで聞かせながら味わってみました。ふしぎなお話?かもしれません。くすっと笑える部分もありました(おなかのカメレオンの声のところ!)当分、梨木ワールドで遊びます…
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ぎゃ〜。待て待て、落ち着け自分。自然の事なので、こういうのも有りです。絵本は楽しいとか優しいとかあったかい等のイメージでしたので、動揺してしまいました。大人の絵本かな。
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この作品に関してはなんともコメントしがたい感じ。
複雑なテーマを幾層にも重ねてあって、多様な読みができるという点に関しては、『ペンキや』と通じる点もあるのだが、難解すぎて、絵本には消化しきれなかった印象がある。
梨木さんの作品はおおむねこういう理解に苦しむ作品が多いな。
それが本筋であって、『西の魔女が死んだ』なんかは、梨木さん的には大衆に歩み寄ってくれたのだろうな、などど、最近、梨木さんの本を読むと、思ったりするこの頃。
出久根さんの絵は素晴らしい。
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何かの暗喩だなあというのは感じるけれど
あえて深読みはしないでそのまま読んだ。
生き物が生きるってこういうこと。
残酷で容赦なくて怖い。
絵が美しくて、物語の突き放したような雰囲気とあいまって
何とも言えない色気ムンムン。
(11.11.13)
近い方の図書館
(11.11.13)
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生き物と人間のはざま、のような。
最終的には、人間も生き物で、
中途半端に悩んだりするけど、やっぱり生き物で、
だからこそ、哀しくもいとおしい。
馬鹿にできないのは仲間意識かしら。