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紙の本
「優秀な人間は、やろうと思えば何でも自分でできてしまう。…」
2006/02/18 12:38
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
私自身、若い頃には日本型年功制に不満を持っていた時期があるが、浅はかだったと思う。だから、若者、特に自分は「エース級」だと思っている若者に成果主義に踊らされるなと言いたい。
その理由の一つは、体力の問題である。二十代、三十代の頃はその体力がいつまでも続くような気がしている。北杜夫が『どくとるマンボウ青春期』の冒頭で書いていたり、斎藤学が『家族依存症』の「おわりに」(p249)に書いているように、自分の十年後の思いも体調も体験するまで分からないものだが、老いは確実にやってくる。そして、四十代、五十代と体力の衰えとともに、物入りな時代がやってくる。体力も金もない状態でこの時期を乗り越えるのは至難である。だから、年功制は人間的な人生を送るのに適した形態だと思うに至った。
また一つは、私はこれが一番の理由だと思っているが、「金のために働くということは、ある一定の基準をクリアできるように働くということであり、ベストを尽くすことはなくなる。…成果主義が、仕事それ自体の面白さや、楽しさも奪ってしまう」(p170)からである。特に日本においては、美意識が仕事に大きく関係していて、それによって成し遂げられた仕事の質の高さで、製品や会社の信用が築かれてきた。これを失うことは組織にとって大きな損失である。そして、美意識を失うことは人間にとってすべてを失うに等しい。
さらに、問題なのは、成果主義が必ずしも能力・実力主義でさえないことである。成果主義では、誰かが個人の成果を量的に査定しなければならない。自然科学の分野における数字や量とは違い、人が介入する限り主観が入る。その主観は以前のような複数の主観ではなく評価基準を作成する側の主観(数字で表したからといって決して客観ではない)になり、非難されずに意図的に誰かを優遇することもできるのである。そうなれば、現場の暗黙の了解(周囲の評価)と人事や査定(上司の評価)の食い違うことが減るどころか増える。そうなれば、よいフォロアーも育たなくなる。良きリーダーと良きフォロアーは一緒にしか育たない。それは、『踊る大捜査線に学ぶ組織論入門』を参照してもらえば分かるだろう。
最後に、経営陣や管理職に言いたい。アウトソーシングやパートタイムに人材を求めてはいけない。人材は育てるものなのだ。しっかりとした基幹労働力を確保し、彼らに教育費を注ぎ込むことが、長期的には組織に未来を与えるのだ。成果主義は大量のやる気のない集団とほんの一握りの思いやりのない高収入者を生む可能性が極めて高い。
紙の本
へえー、そういうことだったんだ
2004/06/20 08:02
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かえる - この投稿者のレビュー一覧を見る
何で会社のことはみんな横文字で語られるんだろうと思っていたら、これは何だか小学生のミニカー比べなんだと思うとよくわかった。
この本は人をやる気にさせるのはお金ではなく高い目的意識と安定した環境といっているように思う。これって家庭と同じ? 会社と家庭は違うっていわれそうだけど、子育てと部下そだてっておなじじゃない。成果主義ってのは子供に「次のテストに100テントったら○○を買ってあげる」というのと同じことみたい。普通、常識のある家庭では子育てするときにこういうことは言わないと思うけど、あなたのおうちではどう? テストで100点とるのは、お金やものを得るためだけではなくて、子供が人として成長するために必要なことで、それはこの社会で役に立つ人間として生存するためだとか、あなたが豊かな人生を送るために今の勉強が必要とかいうものだと思うけど。それとも、この世の中は金がすべて、成果主義のこの世の中を生き抜くためには常に鼻先ににんじんをぶら下げて、そのレースでトップになるために走り続けなくちゃならない。だから、次のテストで100点が必要だ。ということになるのかなー。
今、私の周りで中高年の男性陣が次々と希望退職という名前で、嫌々会社を去っていっている。過去の会社の成長を支えてきて、成果主義という名の下に、成果を示せないものは減給または希望退職の選択肢が示されている。会社への愛着もあるが、憎しみも同じくらい深い。この状況にたいして、アカデミックな視点からほんの少し明かりが見えてきたような気がした。
健康な家庭から健康な子供が育つように、落ち着いた会社からしか確実な成果は期待できないということがよくわかりました。
このことを事例として実証することができるともっとわかりやすいと思う。著者の次の成果を期待してます。
ところで、この手の本って何で外国の学者の名前ばかりなの?
紙の本
経営者こそ査定されよ
2004/11/27 23:21
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高杉親知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
成果主義が給与削減のための方便であるのは周知の事実だ。成果主義を導入して、社員の給与合計が増えた会社など一つもない。これだけでも社員のことを考えてのことではないと分かる。だが成果主義の本当の問題はそこにあるのではない。未来傾斜原理に反するから、成果主義は有害なのである。未来傾斜原理とは、現在だけでなく未来も大切にするということだ。成果主義を導入する最近の経営者は、そもそもなぜ人が集まって仕事をするのか知らないのだろうか。人々が協力すれば、一人一人より大きな力を出せるからこそ協力するのである。そして今協力するには、未来でも協力し合っていることが確信できなければならない。裏切られる可能性があるところで協力はできない。成果主義を導入し、終身雇用を否定するのは、社員が一時不調になれば切り捨てるというのと同じだ。そんな会社で、全力で働きたい、長期的視点で働きたいと思うだろうか。適当に給料分だけ働いて、機を見て転職したい思うのが普通だ。長期的な信頼こそが、社員にも会社にも有益なのだ。
経済学的に言っても、需要不足の不景気に苦しむ今の日本で、成果主義と給与格差を導入するのは正気の沙汰ではない。収入格差が広がれば需要が衰えるというのは経済学の常識である。年収 500 万円の人 10 人がいたら、パソコンが 10 台売れるだろう。しかし年収 200 万円の人 9 人と年収 3200 万円の人 1 人がいたら、パソコンは 1 台しか売れない。売れるのは安い食料品と、役に立たない高級品だけである。成り金にあこがれ、格差を当然視する今の日本人は、自分の首を絞めていることに気付いていない。アメリカ経済の活力に目がくらんだのかもしれないが、アメリカは格差を減らせばもっと良い国になるということを忘れている。
だが、本書を手放しで礼賛するわけにもいかない。信頼を裏切る者の存在に触れていないからだ。それは終身雇用を隠れ蓑にして未来傾斜原理に反することをする者たちである。例えば社員を酷使して報いない会社、女性差別する会社、失敗の責任をとらない役員、部下を育てない管理職などがそうだ。成果主義を批判するのは正しい。だからといって年功制が必ずしも良いわけではない。人々が協力するのに必要なのは長期的な信頼であって、それを破壊するものは何であれ悪なのだ。駄目な会社は成果主義にしたところで駄目だが、もしどうしても成果主義を導入したいなら、まず経営陣に適用するべきだ。
紙の本
成果主義の誤りと,日本型の年功制の良さを論理的に説く.
2004/02/09 00:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
誰もがおかしいと感じてはいるものの,雰囲気におされ,かつ,単純に考えれば正しいとも思えるために,ただ黙って受け入れている成果主義.そして,企業は徐々にうまくいかなくなってきている.著者は,その成果主義の誤りを実験結果に基づいた論理により,科学的に証明し,日本的な年功制の復活を提唱している.
すなわち『外的報酬(金銭的報酬)は,内発的動機付けを低下させる.さらに,成果主義は,仕事それ自体の面白さや,楽しさを奪ってしまう』,ということである.
そして,『日本型年功制は,その「未来の持つ力」を引き出すために設計・運用されてきた.見通しがあれば,従業員の職務満足は向上し,退出願望は弱まる.そして,実は,将来の見通しさえ立てば,もはや現在の職場への満足すら必要なくなる』,という点は,聞けばなるほどととは思うものの,データと共に示されると,なかなかに,衝撃的である.そして,
『チャレンジを確保するためには見通しこそが重要なのである.さらに,達成度を気にしたとたん,目標は単なるノルマと化す.つまり,成果主義の下では,目標を酢召すことは,見通しにとっては逆効果になってしまっているのだ.』
成果主義のダメさを報酬の観点からしか論じていないのはいま一つ,不満.あとがきにある,成果は一人であげられうるものではない,という当たり前のことを経営者はわかっていないのだから,この点をもっと論理的に説明してほしかった.
大企業の経営者よ,年俸制を導入して意味があるのは,以下の二つだけとまで断言されている.
- 誕生してまだ間もなく,中途採用の社員の社員が主力となる企業.
- 会社の経営状態が危なく,昇給の原資がないか,賃金カットも必要になるような企業.
反論できるか.
紙の本
内容紹介
2004/01/23 10:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日経BP社* - この投稿者のレビュー一覧を見る
揺れるトップ、悩める人事、落ち込む一般社員におくる、学問的立場からの初の「成果主義」粉砕の書。著者は、経営学・経営組織論を専門とする気鋭の東大経済学研究科教授の高橋伸夫氏。精力的な企業フィールドワーク、実態調査に基づく実証的な研究、鋭利な理論構築で知られる。その高橋教授が、学問としての経営組織論の最新の定説を踏まえながら、様々な企業現場でのエピソードもまじえつつ、軽妙な語り口で「成果主義」の無惨で愚かしい正体を解き明かす。草木もなびくその流行、普及を目の当りにしながも、長く「成果主義」への疑念が頭を離れなかったサラリーマンが本書を読み出せば、平明で説得的な内容に魅せられて一気に読了し、必ずや仕事への勇気が与えられるはずである。
■目次
はじめに
第1章 日本型年功制のどこが悪いというのか
1成果主義の赤裸々な実像
2日本型の「年功制」とは
3人は金のみにて働くにあらず
4元気に働くための要素
5成長を選択するために
第2章 日本的経営の評価をめぐる右往左往
1けじめはつけておかねばならない
2いい加減に懲りるべきではないか?
3日本的経営論の系譜を辿ってみよう
4やがて付けが回ってくる
第3章 人が働く理由を知っていますか?
1仕事への思いを解剖する
2自発性は信用しうるか
3満足と生産性の関係の二転三転
4期待理論の登場とその限界
5内発的動機づけの理論
第4章 未来の持つ力を引き出す
1今何が本当に必要なのだろう
2「見通し」が与える活力
3終身コミットメントの意義
4未来傾斜原理をめぐって
5揺らぐトップが会社をダメにする
あとがき——幼稚な発想からの覚醒を
参考文献