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関西弁は言語学の研究対象であり、特に日本語の歴史を研究する上では上方の言語であった関西弁が唯一の対象となり得る。ところが、現代はメディアが東京に集中しており、そのような当たり前の事実でもなかなか通りが悪い。ましてや、所謂「大阪弁」に対する蔑視や偏見がひどい。大阪弁で話し始めたとたんに知的話題の対象から除外されるという思考回路を備えた人々すら見受けられる。
本書は言語学的な知見を多く引用し、関西・四国方言の京阪式アクセントは「音調言語」であり韓国語南部方言や日本語琉球方言、中国語との親和性が強いと位置づけられるようで、東日本方言や中国・九州方言とは異なるアクセント体系を持つ。そのため、関西方言と東日本方言(標準語)を使い分けることが困難なのは言語学的に根拠のあることだとしている。
我が国の歴史・文化に関心のある人に本書を読んで欲しいと思う。
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関西弁についての本。自分が話している言葉は標準語に近いと思っていたが、関西弁だったと分かった。
関西弁の使用人口はデンマーク語の使用人口よりも、多いと指摘。そこからも関西弁を一方言と考えるだけでなく、言語として研究すべきだとしている。
面白い本。
ただ、私が関西弁を使うので、音声などを研究されていても、当たり前やんと思ってしまい、ピンとこない。というか、未だにアクセントは分からない。
ちなみに著者は関西弁を使う。そして、そこかしこに関西のノリが書かれているので、気軽に読めます。
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「関西弁」を音声、文法、単語の面から、言語学的に分析したもの。さらに関西弁の成り立ちや日本語にみられる諸方言の有り様についても解説されている。言語学的と言っても、決して難しくはなく、一般向け読み物となっている。
実はおれは兵庫県尼崎出身、中高は大阪の学校に行っていた。でも今では「関東の人ですか?」と言われるほど、関西弁はまったく出ない。時々関西弁についての話になると、一応「ネイティブ」として、断片的な知識について、関西弁を語ることはできるが、言語学的にどうなのか、音声や文法がどういう仕組みになっているのかを勉強したいと思っていたので、軽い読み物にもなっているこの本は格好の本だと思い、買った。(でもブックオフの半額セールで見つけたんだけど)
まず、単純に近畿二府五県の人口を足すとスウェーデン語話者の数と同じくらいになるというのが、面白い。次に音声のところで、L類とH類というのがあるが、これがピンとこない。関西人のおれですら、おれの関西弁を内省してなんとなくわかる程度だから、関西弁を話さない人にはもっと難しいと思う。いっそ小さいCDとかをつけて欲しいくらい。けど、このL類とH類がつかめないと、先に進んでも、例文の語句ごとにH0とかL2とか符号が書いてあるので、結局関西弁がイメージできないまま終わってしまうということになると思う。それにしても、音声から文法まで、ネイティブだけに気付かないこと、というのが多い。「きれいな黒い髪の少女」の話とか、「うちのおとうちゃん」が発音の差で2つの意味になるとか、言われてみたらそうか、と思う。
あとは、関西弁の中でのバリエーションも色々あるようで面白い。ちなみにおれは、「来る」の否定形は「こーへん」、「する」の否定形「せーへん」だった。京都人と大阪人の見分け方、というのも、誰かにやってみたい。関西弁内のバリエーションは、まだフィールドワークの余地がたくさん残されているのだろうか、と思った。(12/02/01)