紙の本
神林長平は、長距離ランナーだと思う。上手くても、短篇よりは長編がいい。でも、ちょっとセンチな短篇、それもいいかな、なんて思ったりして
2004/10/28 23:23
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装幀・挿絵装画はヲバタトモコ。ただしカバー画が素晴らしすぎて、挿絵が所詮は凡百のイラストと変わりがないのにと、逆に才能の使い方に疑問を抱いてしまうのは、やっぱり大きなお世話なんだろうなあ。でも、カバー画レベルの挿絵を一杯つけて欲しかったなあと思うのです、わたし。ちなみに出版社名については、参りました。
1980年代に発表された13の短編を集めたもの。超古代コンピュータの告げる地球の最後、ヨシアの選択「ALL CLEAR」。右ひざを痛めた永久追跡刑事ゼボンが追い求めるのは「愛しのリューラ」。実動してはいけないアッシムが暴走した、ネットワーク上のウィルス退治「ファントム」。
少年が飼っている一台の蜘蛛に似たロボット、でくのぼうライダス。人類に君臨する超高速コンピュータに挑む「過速」。障害児MとLOVEシステムとの友情「マシン・チャイルド」。石ころ生物マイク=マーシが可愛い「God be with you…」。紅大十三世の意識と十一世が十二世の脳の中で語る人類創生の物語「エデン」。夫婦喧嘩をして家を出たおれが街で見かけた店は「怒髪」。
朝起きて、スリッパを履こうとした男に襲いかかる不思議な現象、それがいつの間にか「和の君」。最後の一行の前で、思わず頭を抱えてしまった「とんでもない猿たち」。男の性を、戦争と人肉喰いとうまく混ぜ合わせた「射性」。戦争がなぜか長閑な印象の「麦撃」。父親が息子に語る遠い国の話「炎帝朱夏」。
挿絵は、あまりに児童書風で好きではないけれど、「麦撃」のなかに出てくる飛行機は、ちょうどカバー画と同じ題材なのでやけにしっくりとキマッテイル。ヲバタトモコがこの本で描く人間は、どれも機械染みて今ひとつ親しみがわかないけれど、メカはいい。線の感じが、そちら向きではないのだろうか。うーむ、再び、いらぬお世話か。
解説は、ちょっと神林を褒めすぎかな、でもよく読めば、確かにお説御尤もだよなと思わせる山田真里。この人の解説はマニアックにはならず、読者としての距離感が私たちと同じで、はっきり言って好きです。ウーム、と唸る所はないけれど、これで読みたくならなければ、あんた読書人やめなさい、といえるくらい適切なもの。
ちなみに、私が一番好きだったのは「God be with you…」、いや、「マシン・チャイルド」だろうか。長い時間をかけて全く違った形で出会う二つの意識、これはまさに歌舞伎の世界である。ちなみに小林恭二『宇田川心中』を読んでみればいい。時というものの長さ、いや短さというものが予想もしない形で理解されるはずだ。愛は、時間を超える。
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ボール紙ケースの良さが、最大限に生かされてる感じ。
中の装丁も大変かわいらしい。
ちっとも神林っぽくないところが、激しくお気に入り。
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借本。
「面白い!」の一言。
短編なので、星新一を思わせる作品もあったり、
挿絵もかわいいし、じんわりする作品もあったりで、
この本が欲しくなりました。
ただ、著者の小説が好きな人には、物足りない感じがするかも?
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神林長平の短編集。比較的読みやすいものがそろっている。
だがこの本でもっとも長い話のタイトルが『射精』というのも考え物。
学校で読むときは恥ずかしくて仕方なかった。でも読んだ。
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初めて呼んだ神林さんの作品です
コミカルなものからシリアスものまでSFってて大変面白いです
ハマリものっすね!
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13篇のショートショート。久しぶりに思弁小説ではない神林。ただ紙や文字組などは童話的体裁を取っているのに、文体や主張のそれはしっかりと神林していました。
体裁や短さも相まって比較的内容が分かりやすいです。雪風読んだ後だと特にそう思います。
個人的には「愛しのリューラ」が一番面白かったです。これは中篇〜長編で読んでみたい内容。残りは長さ的に丁度よかったです。個人的に収穫だと思ったのは「射性」。神林氏にしては珍しいまでに露骨な内容。ファンとしては一読の価値はあるかも。神林的カタルシスを味わうには「麦撃」。異色作「とんでもない猿たち」、「和の君」。その他、どれも短いながらも随所に神林を感じる事の出来る内容でした。
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今ここではない近未来や異星が舞台となる短編集。淡々とシビアな現実が突き付けられるが、グロテスクには思えない。救いなどは特にないが、残る話が多い。
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神林さんのロジカルSFショートショート集。
「ALL CLEAR」・・・地球最後の男女が出会った超古代コンピューターとの問答
「愛しのリューラ」・・・殺人を犯した女を永遠に追跡する機械刑事の正体とは
「ファントム」・・・極秘ソフトウェアの暴走を食い止めるには。
「過速」・・・少年の友達、ローカルロボットのマイダスの活躍
「マシン・チャイルド」・・・コンピューターのような人間と、人間のようなコンピューター
「God be with you・・・」・・・滅びる地球を後にした少年。地球に残った下等生物・マーシとの約束
「エデン」・・・地球に再び降りるため、何世代も計画的に生成されてきたクローン体。彼を誘惑するのは蜥蜴型のロボットで・・・。
「怒髪」・・・狭い路地の奇妙な店。怒りを発散させる行動もほどほどに。
「和の君」・・・日本古来の生活復古?
「とんでもない猿たち」・・・お行儀の悪い猿たちと、彼らを笑う○○のお話
「射性」・・・性欲を感じると頭部が破裂する監獄星。記者としてそこに入り込んだ男が見たものは。
「麦撃」・・・麦を燃料に爆撃機を飛ばす二つの村。彼らは何のために戦うのか。麦は何のために作られるのか。
「炎帝朱夏」・・・遠いおとぎ話を懐かしむ、雪の日の休日。
以上13編。
「God be with you・・・」は文句なく素敵な作品でしたね。
「マシン・チャイルド」と「射性」も怖面白かった。
「麦撃」は考えさせられるものがありました。
「炎帝朱夏」、暖炉のそばで読むのにふさわしいお話。でもこの話も単なるお話と片づけられない部分がありますね。
これを80年代に書かれたってのがすごい。
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パッケージを含めた『本』としてはとても魅力的で所有欲をそそる本。
雑誌で桜庭一樹がお勧めしていたので前々から興味があり、でもどこにも売ってないのでしかたなくAmazonで買い、でも買ってからも短編なので少しずつ読んでいたら気がついたら何年も経っていた。
内容は色々なSFの短編でハードな話もあるが時折出てくるイラストの効果もあって全編絵本を読んでいるのに近い印象を持った。
そこまで残る物語はなかったがこれはずっと持っておきたいなと思えるほどパッケージ、タイトルが好きだ。
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何かあれやこれやの元になったような話が多いですね「愛しのリューラ」とか。「マシン・チャイルド」単なるアスペルガー症候群じゃないか。これ心理的な療法いくら試しても無駄じゃない?「ファントム」しかしコンピュータの違いを無視して割り込めるとか無理がないか?それぞれのコンピュータに対応するデータを持ってなきゃならんだろうし。そうなったらデータ量が膨大になる。「エデン」創世記まんまじゃないか。異常だと感じた時点で、13世消してればよかったのにね。「射性」まんこに射精する話。無用なエロス。別にぶっかけは好きじゃない。
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SF。短編集。
何冊か挑戦し、挫折していた作家さん。はじめて読了。
最初の6話が素晴らしい。
「ALL CLEAR」の残酷さ、「過速」の蜘蛛型ロボットマイダスの設定など、本当に好み。
中盤からは雰囲気が変わって少し苦手かも。
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SFのショートショート集ですが、さらりと読むには難しい濃密さがあり、これが“神林長平”だよな! とファン大満足の内容です
そして絵がとてもかわいい
本文中の絵だけでなく、箱の絵と本体表紙の“麦撃機”のぬいぐるみの写真がめちゃくちゃかわいいです
収録されている“麦撃”はとても過酷な戦場の話ですし
“射性”はわりと性的な話ですし、好きだけど読んで読んで~とはなりにくいのですが、個人的には神林長平さんのファンブックのような気持ちで思い入れを持っている作品です