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紙の本
そして「ハムレット」の幕が開く
2004/05/19 00:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
既存作品を、全く別の視点から見たらどうなるか?
こういうアプローチは今までにも成されてきたが、今回著者が取り組んだのは、あのシェイクスピアの『ハムレット』。オリジナルの十ヶ月前から、物語の幕が開く。十ヶ月前といえば、まだ父王ハムレット(同じ名前)も健在だが、学究肌の息子と、どうも関係がしっくりいかない。このぎくしゃくした親子関係とは対照的に出てくるのが、本作オリジナルの登場人物として登場するスヴェンボーとその父親。といっても、ハムレット王の部下だった父親は、王の弟クローディアス(『ハムレット』では王)の不当な讒言のせいで早々と殺されてしまう。その息子であるスヴェンボーも罪人扱いされるが、彼はぐずぐずと思い悩む事なく、自分の身の証を立てようと奮闘する。「生きるべきか 死ぬべきか」と思索にふけるハムレットとは対照的に登場した「まず行動派」の彼は、オフィーリアと出逢い、ここに恋愛のトライアングルが成立する。オフィーリアは、『ハムレット』では、暴言を吐かれ、訳のわからない台詞を言わされる。ハムレットの意地悪な言葉に、「はい」「いいえ」くらいしか返せず、周りの人々に振り回されてばかりいる。脇役の宿命とはいえ、彼女が不憫でならなかった。そうしたら、どうだ。本作でのオフィーリアは、ハムレットの行動にびくびくしている気弱な少女ではない。対照的な二人の男性の間を揺れ動き、自らの意思も持っている。衝動に身を任せる女なのか、はたまた何も知らない淑女なのか、ハムレットよりよほど謎多き女性として、自由に動きまわる。これこそシェークスピア時代には決して書かれなかった、血の通ったオフィーリアである。
そして、本作は、全くオリジナルと切り離されてしまった訳ではない。対照的な二人の間で揺れ動くオフィーリアの取った行動が、後の『ハムレット』で彼女が「売女め、尼寺へ行け!」などと不当な事を言われなければならなかった理由にぴたりとはまる。更に、ここでのハムレットが父王としっくりいかなかったからこそ、その死後ハムレットが、あれだけ父の復讐に取りつかれたのだと納得できる。オフィーリアについても、後の悲劇を象徴させるような花や水が出てくるし、絶えず見る夢もまた暗示的。唐突なクローディアスとガートルードの不倫愛も遡って書かれているなど、オリジナル作品の不審点も払拭しており、エンディングは、ちゃんとあの『ハムレット』に継ぎ目なく繋がるように作られている。
「ああ、こんなオフィーリアが見たかったんだ!」と喜んでいたら、青柳いづみこさんの書評に「こんな小説が読みたかった! と女族は思い、男族は、女ってものの恐ろしさを再認識させられるんだろうか。」 と書かれていた。「やれやれ、すっかりお見通しか。」とただ苦笑。さて、男族の反応や、いかに?
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