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かぐわしき天使 みんなのレビュー
- アン・グレイシー (作), 江田 さだえ (訳)
- 税込価格:946円(8pt)
- 出版社:ハーパーコリンズ・ジャパン
- 発行年月:2004.3
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新書
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紙の本
牧師の娘と元陸軍少佐、互いにトラウマを越えて。19世紀初頭、英国摂政時代が舞台のロマンス。
2005/07/19 22:11
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:三度目の正直 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハーレクインの本の中でも人気が高いヒストリカルシリーズ。主にヨーロッパを舞台に、中世ものから18、19世紀ものまでロマンス小説好きの心をくすぐるような粒揃いである。
アン・グレイシーの著作はまだ少なく、日本語に翻訳されている分に至っては片手で数えられる程しかない。けれど、秀作揃いなうえに、温かな読後感が最高で、最も注目なヒストリカル作家の一人。
大人気を博した前作『氷の伯爵』では、思わず微笑んでしまう可愛いらしいヒロインだったが、本書も負けず劣らずに初々しく可愛いヒロインが描かれている。
1812年イギリス。
牧師の娘ケイトは、父と兄を亡くし天涯孤独の身に。仕事を探していたところ、一人の老貴婦人が訪ねてきて、自分のところで暮らし社交界にも披露すると言ってきた。社交界に出入りしたくないつらい過去があるケイトは老貴婦人の申し出を断るが、なんと彼女は老貴婦人に誘拐され、荒れ果てた屋敷に連れて来られる。そこは、人を寄せ付けず部屋に閉じこもっている老貴婦人の孫ジャックの屋敷だった。
ケイトはなぜ自分がこの屋敷に連れてこられたのか、ジャックの方も突然現われたケイトがいったい何者なのか分からないままに二人の出会いは幕を開ける。
裏表紙に書かれているあらすじを読んだだけでも面白さが伝わってくるが、実際はその何十倍も面白い。ストーリーの運びがとにかくうまく、え?なになに?っと、1ページ目からぐいぐい引っ張り込まれてしまった。しかも、あらすじからは予想もつかない裏事情がわんさか出てきては、あらぬ方向に物語が展開していくので目が離せなくなる。退屈なんて言葉とは全く無縁の作品である。
良家の娘が下働きの仕事をするなど考えられなかった時代。それでもケイトは、誰にも世話にならずに自分で生活費を稼ぎたいという自尊心の強い女性。その頑固さには、ジャックもジャックの祖母のレディ・カーヒルも舌を巻く。特に調理場の床を磨くことをめぐってのケイトとジャックのしつこい程の押し問答には、呆れるやら笑えるやらで、どっちでもいいやん!と思わずツッコミを入れてしまった。
ケイトの過去には、思わず同情せずにはいられないような悲惨な出来事がある。倒れそうになる体に自分で鞭を打ちながら、毅然と顎を上げ、大地に両足をつけ必死に踏ん張っているかのような彼女の姿は、強がっているのが見え見えな分だけとても痛々しい。
最後に、彼女がとても恐れ避けていた過去の悪夢と再び対峙する場面では、逃げ出しそうになる心と体を必死に抑えるその姿に、そして、彼女の勇気とジャックを含め一部の人々の優しさに思わず泣いてしまった。ジャックも反対に、ケイトのお陰でトラウマを乗り越えることができる。
お互いの支えで、お互いにトラウマを乗り越えることができた二人の絆と未来は確かなもの。本当に素敵な読後感を残してくれる傑作だった。
また、実直で、ずけずけとしたものの言い方が気持ちのいいジャックの祖母のレディ・カーヒルなど、脇を固める登場人物たちもとても味があって魅力的。
願わくば、ジャックの友人フランシスを主人公にしたスピンオフ作品を読んでみたいと思った読者は私だけではないだろう。アン・グレイシーさま、お願いします。
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