キャラクター作成ガイド ヒーロー・ビルダーズ・ガイドブック みんなのレビュー

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投稿者：苦楽　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　本書は会話型ロールプレイングゲーム、ダンジョンズ＆ドラゴンズ用のサプリメントである。会話型ロールプレイングゲームは、その処理を人間が行うという違いこそあれ、ゲーム機やパソコンのRPGと同種の楽しみを有する。すなわち、敵を倒し、自分のキャラクターを成長させ、あるいは強化して次の冒険に挑む。
　しかし、人間が集まって楽しむ会話型ロールプレイングゲームの楽しみはそれだけに留まらない。モンスターや冒険に関わるその他の人々などの様々なキャラクターを動かすダンジョンマスターと主人公達であるプレイヤーキャラクターを動かすプレイヤー達が会話によって様々な物語を協力して紡ぎ出すという、他のゲームに見られない独特の楽しみが存在する。本書はそのような楽しみをより引き出すためのガイドブックである。

　本書を活用することで、様々なキャラクターの肉付けを行って魅力を引き出すことができる。「ダイス・ロールと能力値の決定」では、低い能力値とどう付き合うか──ゲーム機などのRPGにおいては往々にして低い能力値は失望の対象にしかならない──が語られ、低い能力値をむしろ個性として楽しむ方法が提示されている。キャラクターにとって低い能力というのは魅力的な個性になりうるのである。少なくとも万能の超人よりは。
「キャラクターの種族とクラスの選択」においては、各種族におけるクラスの位置づけや評価が語られ、皆で集まって騒ぐことが好きなハーフリングの社会では、孤独な行動を行うレンジャーが異端児であること、魔法に対する偏見を持つドワーフの社会で魔術師であることが如何に大変であるかが理解できる。これらの記述はキャラクターの立ち位置を理解するのに非常に役に立つ。
　そして、それ以上に有益なのが、「個人履歴の作成」である。様々な表からダイスを用いて決定する、あるいは選択することで、共同体や宗教との関わり、家柄、家族・親族、友人、師匠、宿敵、あるいは人生を彩る様々な出来事といった個人の経歴が簡単に決定できる。この章はダンジョンズ＆ドラゴンズで遊ぶ時に留まらず、他のゲームでキャラクターの背景を考える時、あるいは小説を書こうと思った時にも参考になるだろう。
　その他の章も有益な示唆や記述に満ちている。「属性の選択」は善と悪、秩序と混沌という属性に関して考える時のガイドラインの一つになりうるし、「将来の計画」はプレイヤーズハンドブックの範囲内でキャラクターを成長させる際のサンプルが記載されており、叩き台としても使用できる。
　何より、最後の「命名規則」は 誰もが一度は悩むであろう、キャラクターの命名に関して、種族ごとの氏族名、個人名のサンプルと命名の傾向、そして一般的な注意事項が示されている。これらの記述が如何に有益なものであるかは、ファンタジー世界に存在するキャラクターを作成しようとした人には直ぐに理解できるだろう。“らしい”名前を付けるのは本当に大変なのである。

　このように、本書は会話型ロールプレイングゲームであるダンジョンズ＆ドラゴンズの魅力を引き出してくれる一冊であると共に、それに留まらず、ファンタジー世界に存在するキャラクターを作成する際に有用な資料だと言える。