紙の本
ウェル・ディファインド・ミステリー
2004/06/22 21:05
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投稿者:GG - この投稿者のレビュー一覧を見る
密室殺人という不可能犯罪。謎に挑むのは、若く美しい女性弁護士と謎を秘めた防犯コンサルタントのコンビ。ハイテクノロジーで構成された地上十二階の完全密室の謎はどう解かれるのか。…
本格探偵小説として、アオリ文句を考えると上のようになるだろう。実際、本書は本格マニアの細かい詮索にも耐えるように細部に気を遣って構成されている。もし、古典的な探偵小説作法を遵守するなら、第一部終わりに「読者への挑戦」が挟まれてもよいくらいである。第二部は、これも本格ファンを意識した倒叙形式となっている。
ことほど左様にパズラーとしての魅力を十二分に備えた本書だが、トリック以外の部分をとても面白く読ませるところが流石だと思う。『青の炎』や『天使の囀り』でもそうだったが、現代日本に舞台設定するときの細部が非常に具体的なのである。出てくる固有名詞や専門用語が作品の迫真性をぐっと盛り上げる役目を担っている。旧作『天使の囀り』で私が一番感心したのは、「横歩取り」という将棋の戦法がある場面で効果的に使われていたことだった。そういうディテイルがあればこそ、ホラーとしての大きな仕掛けも決まるのだと思う。
本書においても、同様の筆法(開巻すぐのビル警備員の描写など)が巧みに用いられていて、悪くすると単なるゲームとなってしまう密室の謎がある種のアクチュアリティを持って迫ってくる。貴志祐介の名は知っていても、ホラーには興味のなかった読者は、本格ミステリーとして楽しめる本書を手にとってはどうだろう。週末一日の楽しみというミステリ本来の味わいプラスアルファを楽しむことができます(プラスアルファを何に感じるかは読者次第)。
あえて難を言えば、今回の小説、謎解きの主人公二人の書き込みがやや不足している感じである。この二人ではシリーズ化は難しいだろう。
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●貴志祐介氏の久々の新刊。今回は今までとはガラッと変わり、本格推理小説だった。二時間ドラマ風で、火サス進出狙ってるんじゃないか?と思わせる展開。
しかしいつもながらに執念深い専門知識の収集と、緻密に組まれた犯罪方法は、まさに貴志氏ならではといった感じ。防犯探偵は少々キザっぽすぎる演出だったが、キャラ設定がアニメっぽいのは彼の作品の特徴だし、彼が書くとどうしてか安っぽくならない。
あらすじは、防犯探偵の男がとある会社の殺人事件と隠された秘密を暴くため「空き巣のプロ」としての知識と技術(!)を駆使していくというもの。パッと見ホームズのような洒落た行動をする主人公だが、やることがやることなだけにルパンのような印象も受ける。ラストは少し犯人側に同情してしまうところがあるが、主人公の軽妙なキャラになだめられてしまう傾向あり。
タイトルにも相変わらず深い意味が含まれており、それを探すだけでも楽しめるかも。
読後は、まさかこんな大胆なタイトルをつけるなんてなぁ、と感心した。
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エレベーターに暗証番号、廊下に監視カメラ、隣室に役員。厳戒なセキュリティ網を破り、社長は撲殺された。凶器は? 殺害方法は? 弁護士純子は、逮捕された専務の無実を信じ、防犯コンサルタント榎本のもとを訪れるが…。
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そもそもの設定に疑問を残しつつも…二人のコンビが良い。個々のキャラが立ってる。続編が出ら是非読みたい作品。
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密室内で殺された、株式上場前の会社の社長。
唯一殺す機会のあった専務が逮捕されるが、彼は無実を訴える。
弁護士の純子は彼の無実を信じ、防犯ショップの店長榎本と共に捜査に乗り出す。
まさに本格ミステリ。
この本の楽しみ方は、だまされる事にあると思うのです。
1の「犯行当日」を読みながら「ここが怪しい」と端々を記憶にとどめておいてください。だまされる快感を味わえます。
トリックは結構ずるい部分もありますが(監視カメラの部分)ほかは途中で漠然と感づけたりもします。
動機は難しいけれど、推理しながら読むのも、一興です。
?が犯行から推理まで。
?が、犯行の動機を犯人の視点から追うお話。
という二部構成。この構成も、これしかない、というくらい巧いです。
ただ、著者の作品にしては、インパクトが弱い。
良質な本格ミステリではありますが。
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「黒い家」や「青い炎」が映画かされた貴志祐介の作品。
初めて読んだ「天使の囀り」がおもしろかったのでそれ以来貴志祐介の小説は買ってるんだけど、これは一番つまんなかったな。
犯人と対面するクライマックスがあまりにも淡々としてて、何か一気に熱が冷めてしまうような感じだった。期待はずれの一品。
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図書館で300件待ちでやっときました。全体で500ページ弱。300ページまで読み進めば、怒涛の展開、綿密なトリック準備に心理描写が待っています。
読み進んでいくうちに題名がどうトリックに結びつくのかも
わかります。(ちょっと解りやす過ぎか?)
「ISOLA」「黒い家」「青の炎」の作家さんで個人的には友達に
薦められて読んだ(これしか読んでない)「青の炎」が傑作でした。
この作家さんは、主人公の心理描写と殺人に至るまでの細かな過程に引き込まれる人です。「青い炎」ほどの一気に読ませる感じはありませんでしたが、作家さんらしさが出ている作品でした。
次回作が出たらまた読んではみようと思います。できたらハードカバー400ページ位だと読みやすいんだけどなぁ。。時間に余裕ができたらさかのぼって「黒い家」を読みたし。
ということで、「青の炎」が★3つであれば、これは★2つかなぁ、って感じです。
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幾重にも護られた密室。万全のセキュリティ。ほんの一握りの限られた人々以外、蟻の入り込む隙もなさそうに見える社長室である。だが、防犯コンサルタント・榎本は 忍び込みの技術を活かして次々とセキュリティを掻い潜る方法を見つけ出す。
読みながら 何度犯人に近づいたと思わされたことだろう。喜々として次の章に進むと そこに待っているのは推理や証拠の不備だったりするのだ。何度も推理の山を登り崩され、意外なところに辿り着く。
最後の最後にタイトルの意味がわかるのである。
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貴志祐介さんのファンってたくさんいるのでしょうね。待ちに待った期待の本格ミステリーで「あなたにはこの密室は解けない」って本屋さんの手書きのキャッチコピーを見て、キャッチされてしまいました(笑)。
私自身は貴志さんの本を読むのは初めて(買ったのは2冊目だけど、もう1冊はまだ読書待ち)ですけど、読む前からホラー小説の印象があって(黒い家の文庫本の表紙なども怖そうです(^^;)、かなり身構えていましたが、内容はホラーじゃないにしても、さまざまなシーンや登場人物など、意外にオーソドックでアクのないものでした。
2部構成で、1部は探偵と弁護士が、密室の謎に挑戦と言うことで、どのように誰が殺したかって言う謎が中心になり、それが壁にぶつかるたびに強固な密室であることが証明されます。それを受けて2部ではいきなり犯人側からの記述で、犯人が分かるので戸惑っちゃいますが、2部では、どのようになぜ殺したかが中心になります。
こんな凝った構成なので楽しめますが、後半の犯人側からの記述は、少し弱い感じで、感情移入できないまま、、あっさりタイプでした。殺す動機も弱いような気もしました。
本屋さんの言うように、密室は解けなかったけど、、、(^^;
2004.6.6
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「天使の囀り」で食欲不振になり、「黒い家」で人間不信になった私が、再度懲りずに手を出した貴志祐介。今回は保安に不安になりました。セコムセコム。
事件はあるビルの中で発生する。一階には警備員、エレベータには暗証番号、窓は「はめ殺し」で、ガラスは頑丈な防犯用合わせガラス。外部からの侵入が考えにくい状況で、最上階の会社の社長の遺体が発見される。犯人は誰なのか?そして、密室トリックはいかにして築かれたのか?
第一部は「探偵徹底推理篇」。探偵役は「犯罪コンサルタント」、榎本 径。彼は怪しい前歴による経験と知識を生かして、あらゆる進入経路と方法を模索する。即席合鍵を作り、カメラを攪乱し、闇に紛れて活動する。ここで示される多種多様な推理の山は、もう勿体無いとか贅沢とか言いたくなる。弁護士が思いつくトンデモ案から、榎本が足で稼いだ地道なアイデアまで、その数……勘定する気にならない。少なくとも、売れない作家ならこのパートだけで3冊くらい水増しした本を書きそうなほどある。
第二部は「事件以前〜篇」。倒叙で語られる事件の全貌である。犯人とトリックが詳細に語られる140ページ。
散々褒めておいてなんだが、「なんじゃそりゃ」と思う箇所もあった。犯人の「防犯カメラ避け」の手段って、本当に有効なのか?実際にそれが可能なら、それに気付かない探偵ってどうよ。最後の社会派な一言は蛇足では?それ以前に少しも触れられていなかったため、かなり唐突に感じた。しかし、充分堪能した。こういうのもっと読みたいなあ。
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日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号。廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。
【感想】
http://plaza.rakuten.co.jp/tarotadasuke/diary/200504040000/
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貴志祐介の久々の新作。
この人のは、やはり「黒い家」や「青い炎」も面白かった
そういえば、両方映画になっているけど、原作しか読んでないなぁ。
今回は約600ページの長編。
前半は、完全な密室トリックの謎を解く!という感じであまりにもトリックを解くことばかりに集中していて、正直言って辛かった。トリックを自分で解こうとする人には面白いのかもしれないけど、私はどっちかって言うと「早く答えを教えて〜」タイプなので、自分で解く気力なし。
でも、長編ミステリーはそこを我慢して読まないとソンをする。後半の謎解きはやはり面白かった。
それにしてもコレ読むと防犯対策の勉強になる。我が家の防犯対策、手ぬるくて怖くなってしまう。オートロックでも、二重鍵でも全然意味ないんだな〜。
マンションだけど角部屋で他の部屋に比べて進入経路多いし・・。
怖〜。
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流行の話題が書かれていて、その辺りには興味が持てました。
防犯って、いくらやってもキリが無くて、しかも追いかける方が足が速い追いかけっこなのね、とか。
ただ、登場人物の魅力が今イチ。
読後一日も経ってませんが、もう印象が薄れてきている・・・。
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【ブログ版ぶっくリストより】『青の炎』ぶりの貴志先生の新作です。
本格密室トリックで、『青の炎』のような犯人側の心理叙述もあります。トリックの発想がすごい。思いつかないあれは…。
前作買った方々、今作も読んでみてはドウデスカ?(笑)
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貴志作品は初めてで不安もあったが、見事にツボにハマった。語り口がいい。簡潔でシンプルだが力があるので、一気に読ませてくれる。榎本を探偵役にしたのがいい。謎多き人物だがすごく好感がもてる。真相に辿り着くまでに何通りかの殺害方法が出てくるが、どれもこれも斬新。そう考えると、最初から実に緻密にストーリーを練ってあることがわかる。いくつかの「謎」は残ったままたが、howdunitモノとしては、かなり完成度が高い。