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紙の本
得るものと失うものの物語
2004/09/21 13:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲレゲレ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代は定かではない。戦国時代であろうか。
狼にひろわれ、行者に育てられたワタルは「立派な人間になりたい」と思い旅をしていた。ある時、さらわれた娘、鏡子(かがみこ)を夜盗の手から救う。鏡子は生まれた時に持っていた鏡を失ったため過去の記憶がない。ワタルと鏡子、ふたりの旅は鏡子の家探しの旅。その途中、さまざまな事件に出会う。
鏡子はワタルのことを「自分のことを救ってくれる人」と直感し、ワタルから離れない。ワタルは修行の旅に女は妨げ、と考えたが、純真な鏡子をじょじょに好きになる。
第七話「白比丘尼」。途中、何度も生まれ変わり、何千年を生きる白比丘尼にふたりは出会う。白比丘尼は「この娘が知恵を持った時、おまえたちは別れ別れになるであろう」と予言する。
結末部分が12年間書かれなかった未完の名作だが、今回著者が加筆しワタルと鏡子の最後が語られる。
あとがきで著者はこの話を「得るものと失うものの物語」と書いている。各話の登場人物それぞれに得るものと失うものがある。ワタルもまた望みである立派な人間にはなれていないし、鏡子も鏡(過去の記憶)を失った状態。失ったものを得た時にふたりはどうなるのか?
決して上手とはいえない素朴なタッチの絵が、人生を一気に縮図化し、自分自身をも振り返らせてくれる。私は億単位のお金を持ちになりたい。けれども、それが実現した後はどうなるか? そんなことは実現していない人にはわからない話なのだ。
紙の本
祝完結
2015/03/29 20:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:衒学舎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
近藤ようこ女史が「アスカ」誌で連載していた中世伝奇ロマンです。狼に育てられた少年が人間となる為に、記憶を失った少女が己を探す為に、一緒に旅をします。
「アスカ」では突然の打ち切りであったようで、近藤女史にはかなり辛かったようです。描き終わった作品は終わった作品、と言う近藤女史も気懸かりだったのでしょう。
その後、「旅は続く」イメージの12ページを足した下巻が刊行されました。
そして描き下ろしの完結編を加えた本書が出来ました。記憶が戻った少女と少年は離れることになりましたが、それはそれで好かったのでしょう。二人はそれぞれの人生を歩き出したのですから。
ところで、この絵の、特に線には、エロティシズムが込められていると感じます。少数派かも知れませんが。
紙の本
ワタルと鏡子の不思議な旅
2006/08/22 20:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書については、新聞の書評の漫画コーナーで知りました。
ネットで知らべたのですが古典の「水鏡」とは
鎌倉時代の初期に成立したと言われるもので、
修験者が出てきたり、不思議な話を扱っていたり、
このマンガと関連性はかなり高いです。
このマンガは、狼に育てられたワタルという青年と
盗賊にかどかわされた、女の子、鏡子(”かがみこ”と、読みます)
が、経験する不思議な旅です。
日本の中世が持つ、自然や不思議なことが、
その内包する世界の豊かさとともに、美しい筆致で描かれています。
日本の中世的土俗ファンタジーとしては、
「犬夜叉」と比較されそうですが、
根本的なものが決定的に違いますね、、。
ワタルと鏡子は、いつもお腹減っているんですよね、、。
連載が中断していたものに、
加筆され完結して一冊になったのですが、
ワタルと鏡子の旅が終わらない方が、良かった気もしますが
著者が一番好きな作品というぐらいで、きちっと形にして
終わらせたかったのかもしれませんね、、。
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