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ダ・ヴィンチ・コード 上 みんなのレビュー
- ダン・ブラウン (著), 越前 敏弥 (訳)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:角川書店
- 発売日:2004/06/02
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紙の本
聖書の中の事実と真実
2006/03/16 20:47
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:吉田照彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書に記されているイエス・キリストの「秘密」については、同名映画の公開を前に、米カトリック司教会議が反論サイトを立ち上げるなど、各方面に波紋が広がっているようだが、おそらく、多くの良識あるキリスト教徒にとっては、それほど深刻な問題ではないのではないかという気がする。
そもそも、著者自身が作中で、主人公にこういわしめている。
「ソフィー、世界じゅうのすべての信仰は虚構に基づいているんだよ。(中略)信仰を真に理解する者は、その種の挿話が比喩にすぎないと承知しているはずだ」
人ぞれぞれ解釈の仕方は違うかもしれないが、僕はこの部分を、事実と信仰は別ものであり、本書に記された「秘密」がたとえ歴史的な事実であったとしても、真の意味での信仰には影響がないはずだ、との表現と読む。
奇しくも、生前敬虔なカトリック信徒として知られた遠藤周作氏が『イエスの生涯』という作品の中で、イエスのベツレヘム(ベトレヘム)生誕説について、こう述べている。
「私達は聖書を読む時、この事実ではないが魂の真実であるものを、今日の聖書学者たちの多くがなすように否定することはできぬ」
真実と事実の違い。——実はこれと同様の表現が『司馬遼太郎全講演[1]』にある。
「つまり、史実は空想、想像の触媒として重要なのであって、史実の延長線上に歴史を語らせる歴史家の仕事と、作家の仕事とは違うわけなのです。
史実という触媒でもって、全く違う化学変化が起きなければ、小説にはならないわけです。
といっても、別にうそ話を書くという意味じゃありませんよ。小説はあくまでも人間のための芸術ですから、人間のトゥルーを探るためだけに、ファクトが必要なのです」
司馬氏のいう「史実」と「小説」を、遠藤氏のいう「事実」と「真実」に置き換えて読んでみると、その共通点が見えて来はしないだろうか。実際、司馬氏が別の講演の中で、「宗教とはフィクションである」と述べているのを考え合わせると、なお興味深い。
僕のような異教徒は、本書の明かす「秘密」がキリスト信仰に与える影響というものにどこか底意地の悪い興味めいたものを覚えないでもないが、おそらく、多くのクリスチャンにとっては、事実と真実とは別ものであり、「秘密」の真贋が信仰に影響を与えることはないのだろうと思う。
紙の本
歴史と謎と絵画と
2005/05/04 23:30
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あん - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史、絵画、音楽、謎いずれかへの興味がある人ならば誰でも楽しめるのでは。
ルーブル美術館へは5年ほど前に行きましたが、本作の描写を読んで、記憶にあるルーブルの映像がまざまざと蘇ってきました。原作者もさることながら、訳者の表現力も素晴らしい。違和感なく最後まで読めました。
ミステリーとしてのみならず、フランスやパリが登場するので、旅情の趣もあり楽しめます。
しかし何と言っても、「聖杯」(変換されない!)の正体とそれを巡る歴史が衝撃的で、先入観を打ち砕かれました。多少の知識があれば、私程“びっくり”じゃないのでしょうが…。
売れる本には売れるなりの訳があります。
紙の本
レオナルド・ダ・ヴィンチの残した暗号はいったい何を示しているのか
2004/11/28 21:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作『天使と悪魔』から約一年後の設定.舞台はパリ.ルーブル美術館の館長,ソニエールが殺される.たまたまパリに講演で来ていて,当夜館長と合う約束をしていたラングドンが,フランス警察から協力を求められる.複雑怪奇なダイイング・メッセージの解読のためだけではない.実は,そこの最後には,ラングドンを呼べと,血で書かれていたのだ.そして,やはり現場に駆けつけた暗号解読官のソフィーは,… 以後,殺人の罪を疑われたラングドンとソフィーの暗号探しの逃避行が始まる.
なぜか前作のヒロインヴィットリアとは一年以上もあっていないらしい.オプス・デイなる超保守的キリスト教秘密結社と異教の女神を崇める最高の集団とも言うべきシオン修道会の戦いとも言っていいようであるが,殺人の動機は上巻ではわからない.
前作同様,秘密儀式や芸術に関する事項はすべて事実であるというが,以下のような話はまさに驚きのオンパレードである.つい,ほんとにほんとうかどうか,調べたくなってくる.また,以下のように書くと退屈な話のように思えるかもしれないが,やはり事実の重みからくるのか,実に興味深く,スピード感もあいまって,退屈することはない.一つの暗号を解くと,すぐにまた次へ,という追いかけっこが前作同様で,またか,という感もあるのだが….
- フィボナッチ数列の二つの数字の比は黄金比に限りなく近づいていく.
- モナリザの名称は男の神アモンと,女の神リザを合わせて並べたものである.
- 今日の形に聖書をまとめたのは,異教徒のローマ皇帝であったコンスタンティヌス帝である.
- 日曜日は異教の太陽神を祝福する聖なる曜日である.sunday(日曜日).
- イエスが神となったのは,ニケーア公会議における,僅差の投票結果による.
紙の本
謎は探すもの、作るもの、解き明かすもの
2004/09/03 02:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな物語を書いたら、それこそバチカンの暗殺者に狙われるのでは…と思ったりしてしまいますが、アチラの映画や本ではこの手のテーマをよく題材にしていますよね。キリスト教など宗教を実感的に見ることが出来ないので傍観者のような受け止め方しかできませんが、当たり前にその世界に身を置いている読者はどんな感想を持つだろうか興味あります。
ストーリーはルーブル美術館の館長が殺害され、奇妙なダイイングメッセージを残した事から始まります。たまたまフランスを訪れていたハーバード大学の宗教象徴幾何学教授のランドンは犯人と疑われますが、フランス司法警察、暗号解読官で館長の孫娘ソフィーと共に余儀なく逃亡し、館長殺害の犯人を追いながら歴史を揺るがしかねない壮大な謎に挑戦…と、来れば面白くないわけないです。映画のカット割りのように展開されるストーリーはテンポが良く、時間経過もわかりやすいです。目の前に浮かび上がるような描写は鮮明。
テンプル騎士団、キーストーン、聖杯、にバチカン、オプス・デイ、そしてシオン修道会とワクワクするフレーズは歴史ドラマ。シオン修道会の歴代総長にレオナルド・ダ・ヴィンチ、アイザック・ニュートン、ヴイクトル・ユーゴが名を連ねているなんてすごいです。そんな公表されている事実、確認できる事象に現存されている物品、そこへ新解釈を当てはめて行くわけで、まるで理論物理学。「ベストセラーなんて」と見ない振りをしたくなる天の邪鬼ですが、素直に読んで良かったぁ。
紙の本
歴史仕様のマイクル・クライトン
2004/07/10 18:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ディック - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハーバード大学の宗教象徴学教授ラングトンは、パリのホテルで就寝中にフロントからの電話でたたき起こされた。訪問者は司法警察の警部補で、殺人現場へと任意同行を求められる。その現場とはなんとルーブル美術館で、殺されたのは美術館長なのだが、館長は死の間際に自らの身体を使い奇怪な暗号を残していた。
その暗号を解くのを手伝えと言われるのかと思っていたら、現場に現れた暗号解読担当の女性捜査官が、ひそかにラングトンの注意をひこうとする。館長のスケジュールには死亡時間にラングトンと会う約束が記録されており、自らが容疑者なのだと彼女から知らされた。
温厚な学者であるラングトンだったが、この女性捜査官にそそのかされて気が変わり、美術館からの脱走を決意してしまう。
このときから、逃亡と追跡劇がスタート。奇怪な暗号の謎解きをしつつ、秘密結社が隠したと伝えられる聖杯探索の冒険も絡んで、上下2巻という長さながら、まったく退屈させないめまぐるしい物語が始まる。
『ダ・ヴィンチ・コード』という小説のおもしろさは、マイクル・クライトンの小説と似ている。
マイクル・クライトンの場合、最先端科学のアイデアと知識がちりばめられてあって、それが小説のアイデアの骨格をなしているが、本書ではマイクル・クライトンの「科学」が「宗教・美術工芸・歴史」に切り替わっている、と考えればよい。
そう理解すればあとのつくりはさほど変わらない。
多彩な登場人物が上手に描き分けられているものの、人物像の掘り下げは深くない。物語の展開がはやく、十数ページごとに新たな展開が起きるよう、著者自らがルールを課して書いたのではないかと思われるほどである。予想もつかない方向へストーリーが展開するので、読書を中断するのはかなり決心がいる。
小説というよりは映画に最適の作りだが、次々と現れる暗号の謎解きをしながら宗教建築や美術作品に隠された歴史の暗部を探るということが、本書のおもしろさの重要なファクターになっており、この部分は映画に作りかえたら楽しみが薄れてしまうかも知れない。
ダ・ヴィンチの絵画でも有名な、イエスの最期の晩餐に使われた聖杯は実在するのか。それとも何かの象徴であるのかなど、歴史の謎を探求するおもしろさは、確かに本書の最大のポイントである。
読後感は「ああ、おもしろかった」というもので、登場人物への感情移入から生まれてくる小説特有の深い味わい、というようなものを期待してはいけない。善かれ悪しかれマイクル・クライトン風なのだ。