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19 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

「生まれ」は「育ち」を通して

2010/02/03 22:06

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

人間の性質を決めるのは生まれか育ちか、というのは昔から大きな議論の対象となってきた。男女問題から政治問題まで広い範囲で厄介な問題を含むため、議論はしばしば紛糾する。

たとえば、女性と男性の性差を決定的だと見なす人々にとっては、性別役割分業を正当化する強い根拠となるし、遺伝子によって人間の優劣が決まるとなれば、優生学への誘惑が強まるだろう。また、生物学的にはすでに捨てられている分類手法であるという「人種」間での優劣を根拠づけようと言う言動にもつながっていく。

前世紀の後半になると、根強い遺伝決定論への反動として、環境決定論的な論調が強まる。ある学者は、自分に健康な赤子をくれれば、学者にも犯罪者にも育ててみせると豪語したし、ソ連の農政失敗の原因となったルイセンコの遺伝学説も、環境決定論の一例だろう。ジェンダー論などでも、構築主義だとかブランク・スレート説は、環境に人間の性質の原因を求めるものと言える。

そうした生まれか育ちかの二項対立、言い換えれば遺伝と環境の対立を、マット・リドレーは本書で一貫して批判する。たとえばこういう風に。

「つまり、恵まれない境遇で生まれ育った人を差別したり、普通でない家庭で育った人を警戒したりするのは、根拠のないことなのである。貧しい子ども時代を送った人が、必ずある種の性格になるのではない。環境決定論は、どう見ても遺伝決定論と同じぐらい冷酷な信条なのだ」118P

本書の主張はしごくシンプルで言われてみれば当たり前だと思えるようなことだ。それは、Nature VS Nurture(生まれか育ちか)ではなく、Nature via Nurture(生まれは育ちを通して。本書の原題)ということだ。

遺伝子は確かに、人の多くの部分を規定する。遺伝子の命令によって脳や身体が形作られる以上、人間の様々な性質は遺伝子に端を発すると言えるだろう。趣味趣向、性格、行動、思考は脳の配線の仕方に原因を求めることができる。そう考えれば、その人のすべては遺伝子によって決定されていると考えられる。

しかし、遺伝子はいわば人体のレシピだ。そのレシピのスイッチがオンになり、レシピに応じたアミノ酸、タンパク質の生成が行われなければならない。さらに、遺伝子のセットからはつねに同じものが生成されるわけではなく、スプライシングという工程によって、ある遺伝子からはいくつものレシピを引き出すことが可能だという。遺伝子が同じだとしても、どのレシピが機能し、何が生成されるかはその時々の環境の影響を強く受ける。遺伝子は環境を通じて発現する、ということだ。マット・リドレーはこれを「生まれは育ちを通して」、と表現した。

遺伝子はすべてを決定するわけでもないけれど、環境次第で人がどんな風にもなれるわけでもない。スティーヴン・ジェイ・グールドの言い方をヒントに言い換えれば、遺伝子とは決定なのではなく“可能性”だ、ということになる。

素直な感想を言えば、本書はむちゃくちゃおもしろい。出てくる科学史的なエピソードや具体的な数々の調査の結果などは、いちいち興味深く、とにかく読み応えがある。遺伝子、遺伝というもの、生まれか育ちかという議論に興味があるという人には是非とも読まれることを勧める。読んでみれば、読者の人間観に多かれ少なかれ確実な変化を与えるだろう。

また、扱っている話題が話題なだけに、ただ読んで面白いというだけではなく、きわめて考えさせる本でもある。私が最初に書いたような紛糾しがちな議論を少しでもましなものにするのにも役に立つだろう。

人間にとって遺伝子とは何か、ということについてとても刺激的な議論を提供する一冊。傑作。しかし、取り扱い注意。

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紙の本

公平な社会は理想的か

2005/10/05 11:28

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:桑畑三十郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 人格形成に強い影響を与えるのは、「生まれ」(遺伝)なのか「育ち」(環境)なのか。人間はタブララサ(白紙状態)で生まれてきて、その後の環境によっていかなる人間にもなり得るのか。古来よりあるこの論争に、本書は最近の研究結果をもとに正面から答えようとしている。
 結論からいえば、原題のとおり、「生まれは育ちを通して」(nature via nurture)ということになるようだ。IQや性格への遺伝の影響は予想以上に強いが、遺伝子には柔軟性があり、環境によって眠っていた遺伝子がオンになる可能性もあるという。いろいろなことを経験し、努力を積み重ねることも大事ということなんだろう。
 では将来、理想的な社会となってすべての子供に同じ教育を受けさせたらどうなるのだろうか。
「あらゆる人間が等しい教育を受けるとすれば、能力の差異は先天的なものになる。真に機会の平等な社会は、生来の才能のある者を最高の仕事で報い、残りの者を卑しい仕事に追いやるのである。」
「奇妙な話だが、公平な社会にするほど、遺伝性が高くなり、遺伝子の重要性が増すことになる。」
はてさて困ったことになってきた。こんな社会は果たしていいものなのか、悪いものなのか、考えさせられる。なんでも機会均等にすればいいというものでもなさそうだ。出世しないのは親からもらった遺伝子が悪いのだという、そんな救いようがない社会よりも多少不公平さが残った社会のほうが、自分に言い訳が出来ていいのかもしれない。
 俺の人生がうまく行かなかったのは社会が悪かったのさ、と。

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2007/04/27 08:59

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2009/08/27 22:14

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2009/11/26 13:34

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2010/10/05 06:59

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2013/01/24 00:21

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2014/09/19 16:36

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2017/04/30 22:11

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