紙の本
19世紀のオーストリアを代表する作家、ザッヘル=マゾッホ氏の作品集です!
2020/07/05 11:00
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、19世紀のオーストリアで活躍し、マゾヒズムの語源としてあまりに有名な『毛皮を着たヴィーナス』を著した作家ザッヘル=マゾッホ氏の数多くの長短編小説の中から、軽妙な滑稽味と不気味さを兼ね備えた珠玉の短編8作を収めた作品集です。同書は、8人の紳士をそれぞれ熊皮に入れ檻の中で調教する侯爵夫人を主人公とした表題作「残酷な女たち」のほか、女帝マリア・テレジアを主人公とした「風紀委員会」、御伽噺のような奇譚「醜の美学」などが収録されています。読者に奇妙な感覚を起こさせる一冊です!
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『毛皮を着たヴィーナス』のマゾッホによる短編集。マゾッホといえばマゾヒズムの語源。おどろおどろしい物を想像していらっしゃいませんか?馬上から鞭を振り下ろす毛皮を纏った鬼のような美女、鈍臭く逃げ惑う醜男。説明してもやっぱり恐ろしい限りなのだけれど、意外に軽やかでコミカルなマゾッホの小作品集です。マゾッホの作品には愛がありますから
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マゾッホの短編集。マゾヒズムの語源になったからって変な先入観持って読むと裏切られます。恐ろしい描写はあるけどとても軽やかだし、上品な感じです。そしておもしろい。
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マゾッホと言う名から先行する私の中でのイメージとは、実際に読んでみるとかなり違っていました。
強烈な個性溢れるヒロイン達、それに振り回される男達。
だけどはたして本当に振り回しているのは彼女達なのか?は、読んでみてからだと思います。
ある種の恋愛ものとも、捉えれる短編集となっておりました。
個人的には中々に好きなヒロイン達です。
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マゾッホが『毛皮を着たヴィーナス』だけではなく、
寓話、喜劇など幅を持った文学者であったことを証明する一冊。
もちろんマゾヒスティックな部分も多いにある。
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毛皮を着たヴィーナス」で有名なマゾッホの短編集。どの作品も、居丈高な女丈夫が哀れな男共を屈服させる。よく言えば鉄板の展開。悪く言えば紋切り型。だがしかし、タイトルとは裏腹に、朗らかに、明るく、澄み切った空気を感じさせる作品ばかりだ。マゾヒズム文学と呼ばれているが、とても読みやすく一般的な文学としても十分通用するものだろう。
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19世紀オーストリアの作家、「マゾヒスト」の語源となった
レーオポルト・フォン・ザッヘル=マゾッホの
ウィットとユーモアに富んだ短中編集。
『毛皮を着たヴィーナス』のような倒錯的な雰囲気はなく、
意外に明るい。
■残酷な女たち
残酷というより、傲慢かつエレガントで、
自身の美を守ること、及び美意識に忠実に行動することを
是とする八人の女の肖像――といった趣の短編連作。
侮辱への報復、揉めごとに対するけじめのつけ方、また、
自分と同等かそれ以上に愛する人物がいれば、
その人を守るために死力を尽くすといった
勇猛果敢な女性の姿が美しく活写されている。
紳士たちを手玉に取る淑女「ルボミルスカ侯爵夫人の熊」、
自白を強要するための拷問具 thumbscrews を使って
拷問廃止反対主義者を改心させるという
アイロニーに満ちた話「指責め」が殊に秀逸。
■風紀委員会
18世紀オーストリアの女帝マリア・テレジアが、
夫の浮気を封じるため、また、
ウィーン全体の性の乱れを正すべく設立した風紀委員会のせいで起こった
珍騒動。
平凡な母と娘が暮らす家に様々な貴人が出入りしたため、
とんだ誤解が……というコメディ。
真面目で賢く若いカップルが幸福を掴む、爽やかな物語。
演劇になっても面白そうなドタバタ感。
■醜の美学
見目麗しい人物が高潔とは限らないし、逆もまた然り。
「“人は見た目が100%”ではない」というお話。
乳児期に小間使いのミスでケガを負ったため、
障碍を持つことになった画家パウルの愛の物語。
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マゾヒズムの語源となったマゾッホの短編集。タイトルの「残酷な女たち」とは裏腹にどの作品もカラリとしたユーモアがあって楽しめました。出てくる美女皆、毛皮のコートを着ているのは彼の趣味(実際に「毛皮を着たヴィーナス」という作品もあるくらい)。面白かったのは不穏な始まりからラストは喜劇的な大団円を迎える「風紀委員会」と醜い容姿の男が主人公の「醜の美学」。人の美しさとは何であるかを改めて感じさせる作品で、面白く読みました。マゾッホについての本も積読しているので近いうちに読みたい。