紙の本
待ちに待った一冊です。
2004/10/21 23:45
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投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の天城一については、いろいろと噂を聞いていました。「短いながらも切れのある短編を書く」だとか「時刻表をつかったトリックの佳品がある」だとか良い噂ばかりを。しかし、作品はあちこちのアンソロジーに収録されているものの、それ自体が手に入れにくくなっていて、読んでみたくともなかなか読めない作家の一人でした。
そんな、私にとって『幻の作家』だった天城一の短編をまとめて読めるなんて! こんなうれしいことはありません。デビューが1947年ながら、天城一の名前での本はなんとこれがはじめて(私家版などは何冊かでているようですが、まず手に入りません)というから、私が『幻の作家』と呼ぶのも、とてもよろこんでいるのもわかってもらえると思います。
内容は、噂に聞いていたとおり、ムダなものはいっさいはぶいたとても短いものでありながら、短いからサッと読めるかと思うとそうでもなく、熟読が必要です。まあ、ずっと待っていたものをサッと読んでしまったんではもったいないですから、じっくりじっくりと読みましょう。
本書に収録されなかった作品もまだあるようなので、それらもぜひぜひ出版してほしいものです。
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幻の作家と言われていた天城一のはじめての作品集(デビューから約半世紀後!!)。いい紙を使ってあって、スキマなく短編が入っているかと思うと、今から読むのが楽しみです!
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いや、感動した。凄い。肉を限界まで切り捨て、トリックとそれを魅せるための最小限の装置のみを付けただけというパズラーの極致といった印象を受けた。確かにあっさりしすぎて「おいおい」みたいなのもあるし、今の目から見ればちょっと微妙な作品もあるけれど、その姿勢が凄いと思うし、また「密室犯罪学教程」のほうの理論/実践は本当に感心して読んだ。もっと読みたい。
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(収録作品) 密室犯罪学教程 実践編(星の時間の殺人/村のUFO/夏炎/遠雷/火の島の花/朝凪の悲歌/怨みが浦/むだ騒ぎ/影の影)/密室犯罪学教程 理論編(抜け穴密室/機械密室/事故自殺密室/内出血密室/時間差密室/逆密室/超純密室)/毒草・摩耶の場合(不思議の国の犯罪/鬼面の犯罪/奇蹟の犯罪/高天原の犯罪/夢の中の犯罪/明日のための犯罪/ポツダム犯罪/黒幕・十時に死す/冬の時代の犯罪)
本格ミステリ大賞(2005/5回)
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三部構成からなる密室教科書。初心者がこれを読むのは酷でもあり、後々の楽しみが半減するのでお勧めは出来ない。短編による「実践編」を詳しく解説する「理論編」は興味深く読めた。各密室パターンの代表作を挙げてあるのはネタバレではあるが、それが逆に、いかに多くの巨匠たちがこのテーマに勝負を挑んできたかを思い知らされ、「密室犯罪はメルヘン」と断言する作者の考えに同調せざるを得なくなる。「教程」の部分をスルーしても、名手の描く短編小説の数々は一読に値する。
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★乱歩評が秀逸★著者は数学教授の傍ら推理小説を書く。切れ味のいい(感じ)の短編小説は雰囲気はあるが、エンターテイメント性を欠くためかそれほど素人には面白くない。ただ探偵小説の姿やトリックの解説をした部分は素晴らしい。師匠とした江戸川乱歩がトリック至上主義になったことを批判。探偵小説とはトリックで成り立つものではないと説明し、トリックそのものを作るのは難しくないとして例として自作を示すのは、科学者の客観性と嫌らしさが同居する。乱歩の真骨頂は耽美主義にあり、明智小五郎の創造は「先生の最大の失敗ではなかったか」と指摘するのが、この本の眼目に違いない。
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「実践編」や「理論編」など名前のついた3部構成になっているが、良作短編集の詰まった一冊として読めました。色々なトリックを使った10Pほどの短編が収められている。「講義」の嫌いな人は、そこの部分を飛ばして読んでも楽しめる一冊になると思います。
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難解だ。
真剣に読まないと、その行間の意味合いや
時間の流れを理解できなくなる。
( -_ゝ-)<あたしには合わないナ
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巻末の「密室作法」が白眉。数学者の著者だけあって場合分けがなかなかきっちりしている。トリックの案出に役立ちそうだな、という印象。小説作品の中では「高天原の犯罪」が一番かな。
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「密室はメルヘン」説、素敵です。この本、推理小説の創作をしている人には一読をお勧めする良書です。
「密室作法」として、推理小説における密室のバリエーションを数学者らしく整理しているところも、トリックを考えるときなど役立ちそうです。
突然「実践編」でエッセンスだけの作品を読んで「何じゃこりゃ」と思わずに、そのまま読みきって引き続き「理論編」を読んで欲しい。そうすると「実践編」で行われていたことの狙いや、この作者のアイディアを作品に膨らませる推理小説創作の手法が見えてきて再度「実践編」を読みたくなるという、非常に面白い趣向になっていてとても刺激的。
ただし「理論編」では古典名作のネタバレ(…というか、類似のトリックとして例示に引用している)が頻出するので、そこが気になる人は気をつけて。私は既読のモノしかなかったので問題なしでしたが。
あくまで実践編は「教程」のための習作でしかないので、普通の「作品」を読みたい人はPart3の短編集の部分から読めば良いと思います。
収録されているモノのうち何編かはアンソロジー集で読んだことがありますが、まとまった本が出たのはありがたいですね。
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このミスベスト10、2006年版3位。これはキツかったです。一行一行話が飛んでいて読み進めるためには、行間を埋める必要があります。その上、本の構成がまた凝っていて、あ、そういう構成なのって理解したら楽になると思いきや全く楽にならず、苦行でした。解説にも、推理小説を手軽な娯楽読み物として楽しんでる向きには、本書はお勧めしにくい。と書いてますが全くその通りで、娯楽至上主義の自分にとっては評価低いです。作者は東北大学理学部数学出身で別の大学で数学科の教授をしながら細々と文筆活動をしておられたようです。論理的に密室もののトリックを分類するところなどは面白かったのですが、思索的なとことこか哲学的なところはもういけません。このミスというか宝島社は哲学オタク的なところがあるので、結構そういうのが上位に来てるので要注意です。あと、文庫化されてなくってハードカバーで購入したけど、高いわ、持ち運びにくいわで、わやでした。まあ、そんなところで。