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紙の本
多くの京極作品のブックデザインを手掛けていた辰巳四郎が亡くなったという。この本を読んでいたとき、娘が教えてくれた。今は亡き巨匠に捧げるかのような分かりやすく、それでいて俗に堕ちない中編連作
2004/09/19 20:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
我が家の長女のアイドル、京極夏彦の作品である。ただし、私はこの本に収められている『五徳猫』を読んだところで、乃南アサの上下本を読んだり、イーザウのファンタジーを読まなければならず、おいしい餌を前に轆轤首のように首を長くしている長女に、明渡すことにした。で、読み終わった長女の感想「やっぱ、夏彦さんだね」の声に、再び『百器徒然袋』の世界に戻ってきたのである。
ブックデザイン=熊谷博人、カバーデザイン=坂野公一、カバー挿画=石黒亜矢子。この昔の妖怪ものみたいな絵を描いたのが石黒なのだろうか。それはさておき、凄いのはそのあとの注である。組版レイアウト=京極夏彦、使用フォント明朝W3+游築五号W3、ヒラギノ明朝W3+ヒラギノ行書W8、ヒラギノ角ゴW6である。うーむ、京極はこんなことまでやっているのか。
でだ、知らなかったこととはいえ、能天気にカバーデザインのことなど書いてきたが、今、反省中である。長女がいうのである「あのね、石井ユミが言うにはね、京極のカバーデザインをやってた人、亡くなったんだって」と。この本は坂野公一でしょ、知らないけど。熊谷博人のこと?でも、その後も講談社ノベルズやってるしなあ、じゃあ石黒さん?
というわけでネット・サーフィン。で、どれも空振り。勝手に鬼籍にいれて済みません、熊谷、坂野、石黒のご三方。と思った矢先に見つけてしまったのである。なんと、あのブックデザイン界の巨匠、辰巳四郎さんがなんと昨年亡くなっていらしたと。衝撃である。私が絶賛した、森博嗣『四季』の美しさ、殊能将之『ハサミ男』のキレのある不気味さ、島田荘司の光文社文庫の全てを集めたくなるようなモダンさ。勿論、講談社から出ている京極作品の殆どを手がけているのだ。しかも、辰巳は単なるコーディネーターではない。装画も含めたブックデザイン全体を自分ひとりでやっていたというのである。
私が愛読者から愛書家になり、ブックカバーのデザインの美しさに心惹かれるようになってから、ずっと辰巳四郎は指標であり、模範でもあった。私の持っている本のどれだけが辰巳の手になるものか。その技を、過去の成果は別にして、もう見ることが出来ない。寂しい。悲しい、彼の訃報すら知らずにカバーデザインを語っていた厚顔、恥じ入るばかりである。彼と縁が深かった京極作品を語る場を借りて、ご冥福を祈ります、そして天国を素敵にデザインしてくれることを願っています。
というわけで、本題に戻る。これは、初めて「探偵小説」と銘打たれた京極本ではないだろうか。
「調査も捜査も推理もしない。ただ真相あるのみ!眉目秀麗、腕力最強、天下無敵の薔薇十字探偵・榎木津礼二郎が関わる事件は、必ず即解決するという。探偵を陥れようと、「下僕」の益田や本島らに仕掛けられた巧妙な罠。榎木津は完全粉砕できるのか?天才の行動力が炸裂する『五徳猫』『雲外鏡』『面霊気』の3編。」
榎木津の下僕である本島が、隣人で紙芝居絵師である近藤の頼みで買った招き猫、それが意外な事件に『五徳猫』。榎木津に挑戦者が現れた。監禁されていた本島が巻き込まれた殺人事件と霊感探偵『雲外鏡』。近藤の家から何かが盗まれた。本島たちが住む文化住宅に連続する盗難事件『面霊気』。
まさに探偵榎木津を描く本である。だから「探偵小説」。いわゆる昔懐かしい本格推理小説としての探偵小説ではないのである。ただし、本格推理としても実によく出来ている。名実共に本物の「探偵小説」である。しかもよく読むと連作である。メフィストで一度読んだから、と流して読んだ長女は、そこを見落としたのである。ははは、バカメ!榎木津をなんと心得る、である。
しかも、今回は実に分かりやすい。その分かりやすさが足を引っ張らない、それが京極夏彦の上手さでありセンスである。それは、ある意味、辰巳四郎のデザインに似ていると言っていいのかもしれない。
紙の本
妖怪のなす伏線を楽しもう
2004/10/11 00:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yostos - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズも本編同様妖怪をモチーフにとしその妖怪のなす怪異現象を物語のストーリーの伏線としつつ、謎を解き明かしていく過程が非常に楽しい。本書の妖怪は「五徳猫」「雲外鏡」「面霊気」。本編に比べると短編であるため、やや食い足りない感じはするが、その分は主役が敵を「殲滅」していく痛快さで本編とは異なる読み応えあるシリーズとなっている。
今回は、本島俊夫という電気技師の目を通して、彼の語りで物語が進んでいく。これは、このシリーズでは新しい試みであろうか。この電気技師は、本編か本シリーズに以前脇役としてでていた節があるが、全く思い出せない。本当に脇役だっただろう。この徹底的な一般人を通して見た「榎木津一味」のもある面々の一癖も二癖もあるありようが異様なおかしさを醸し出している。本書における関口の役所であろうが、彼のような陰気さがないのがこのコミカルさに通じている。
「五徳猫」では招き猫の手の上げ方の由来についてのうんちくが語られるが、これがやはり鍵となる。
「雲外鏡」は、100年以上たった古鏡の妖怪になり 鏡の中に怪しい顔を移すという。適役の神無月が持つ鏡のことだが、よく考えると神無月が犯した重大な失敗のことの伏線とも、果ては榎木津自身を暗示しているともとれる。深い……
紙の本
榎木津スペシャル
2004/09/06 21:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桜木渉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
榎木津ファンが待っていた百鬼徒然袋の続編が、ついにお目見えした。
今回の百鬼徒然袋—風の印象は、やはり榎木津一色だった。
めちゃくちゃである。
型破りである。
読者の予想なんておかまいなしである。
そんな今回、個人的に一番印象深かったのは、榎木津がまともにしゃべったことである。
榎木津というキャラクターを知っている人にとってみれば、これは驚愕に値する。あの、榎木津が、外見に見合った口調で喋ったのである。
これは見ものだ。
榎木津ファン必見。
もう一つ、話にはよくでる彼の父も、今回顔を出す。
まさに、百鬼徒然袋は榎木津一色の一冊だった。
紙の本
痛快!爽快!馬鹿ばっか!
2004/07/31 21:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YASU - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズは関口君にとってかわり本島君が活躍…といった感が強く、従来の重苦しい感じも無く心から楽しめる中短編の集まり。何度人前で笑いを堪え、読みふけったことか。もちろん本シリーズの方も面白く良いのだが、その合間にこちらを読むことで救われている様な気にもなってくる。是非、あのご一行様達の馬鹿っぷり(京極堂も結構イッてしまっていると私は思うのだが…)をご一読あれ。
紙の本
大暴れ!
2004/07/14 14:40
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投稿者:ayafk - この投稿者のレビュー一覧を見る
前回大活躍(?)した本島君が、今回もそれはみごとな巻き込まれっぷりを見せます。本編とは全く関係ないけど、気になって仕方ない謎は「本島君の下の名前」です。前回は最後に本島という名前が明らかになりましたが、今回は下の名前を推理しながら読むと2倍楽しめること請け合いです。榎木津探偵の暴れっぷりは相変わらず爽快な程ですが、今回はちょっとカッコイイ所も見せています。榎木津ファンならずとも必見! 間違いなしでしょう。