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中国の歴史 04 三国志の世界 みんなのレビュー
- 礪波 護 (ほか編集委員), 金 文京 (著)
- 税込価格:2,860円(26pt)
- 出版社:講談社
- 発行年月:2005.1
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紙の本
新しい三国時代の概説書
2005/08/18 22:42
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:江葉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
4巻は三国志演義のえがく時期(党錮の禁〜呉の滅亡)までをきれいに扱っている。
本書の特徴は文献学的な見地だけでなく、最新の考古学的な発見まで
カバーしている所にある。
1984年に発掘された呉の朱然の墓などはその際たるものである。
いままでの三国志の概説書が魏もしくは蜀に着目されてきたが、
本書は呉に注目して論が展開する。
三国が鼎立するのは呉がキャスティングボードを握っていたわけであり、
その呉を軽視した演義の影響を払拭できる内容となっている。
中でも、魯粛が高評価されている。演義の魯粛のイメージしか
ない人には新鮮であろう。
オーソドックスに流れを追い、さらに三宗教の鼎立の話、文学、
邪馬台国とおさえてある。
紙の普及→手紙の普及→名士たちのネットワーク→各国の熾烈な外交
このような分裂期の外交論だけみても小説以上に
歴史としての三国志は面白いことに気付くのではないだろうか。
小説しか読んだことのない初心者でも十分楽しめると思います。
難しそうと遠慮なさらずに。
ちなみに、今回の中国の歴史シリーズは、今までの概説書をある程度
読んでいることを前提として作られているように思われます。
それでも、三国志を扱った本書は比較的初心者にもとっつきやすく、
中級者にも読み込めるようなつくりになっています。
(他巻より扱う時代が狭いわりに、頁数が多いのです)
紙の本
著者の透徹した史観で明らかになった三国志時代の真の姿!終章では、現代東アジアが直面している諸問題の淵源がこの時代にあることを解明している。
2005/05/18 20:55
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、漢帝国滅亡後に相次いで建国された魏・蜀・呉の三つ巴の激しい攻防と滅亡を描いた通史である。著者は、紀元2世紀末から3世紀末にかけての動乱の歴史を最新の研究や考古学的な知見を盛り込みながら丹念に描く一方、以下のような独自の視点からこの時代に切り込もうとしている。
第一の視点は、日本でも広く親しまれている小説「三国志演義」(以下演義と略)の大衆的な魅力を認めながらも、遥か後代の明の時代に成ったこの小説の中のフィクショナルな部分と史実を峻別して、この激動の時代の本来の姿を描いていることである。
第二の視点は、この時代は政治的・軍事的にホットであるばかりでなく、文化的・宗教的にも後世に大きな影響を与えた時代であるとしていることである。
第三の視点は、歴史書の「三国志」は魏を、小説の「演義」は蜀を中心に描いているために、いずれももう一つの大国の呉が見過ごされがちであったが、本書では時代のキャスティングボードを握る存在として呉から見た三国志の時代を描いていることである。
第一の視点について具体的に言えば、演義の世界では劉備や孔明・関羽・張飛などの英雄がクローズアップされために、歴史上を動かした真の立役者がややもすれば陰に隠れてしまいがちであったが、本書ではそのような人物に光が当てられていることである。
例えば、魏の曹操が蜀と呉の連合軍に大敗した「赤壁の戦い」は史上名高いが、強国魏に対する勝因となった蜀と呉の同盟を成立させたのは「演義」では孔明としているが、著者は魯粛という呉の老臣が真の功労者として、その先見の明を讃えている。この人物のことは、本書で初めて知ったが、このような知られざる人物を史実に基づいて復権させるのも歴史書の大きな使命の一つと言えるであろう。
第二の視点について具体的に言えば、著者がこの時代を儒教・仏教・道教の三教鼎立の時代としていることが注目される。著者によれば、この時代に、儒教は有力な注釈書が著されことで広く経典が流布し、仏教は多くの僧が中国を訪れることで訳経や布教活動が活発となり、中国固有の民間宗教の道教は教団活動が本格化するという。この儒・仏・道の三教の定着化に伴う三者間の論争と交流は、諸子百家が活躍した春秋戦国時代と並ぶ文化的に熱い時代を出現させたとしている。
本書の最終章では、「三国時代と現代の東アジア」と題して、現代的な視点からこの時代が孕む問題が考察されている。
現代の東アジアは、中国と韓国・北朝鮮・日本・台湾などの国際関係が入り組んでおり、様々な問題を抱えているが、そのような諸問題の淵源となっているのがこの三国時代であると著者は位置付けている。この時代は、倭や百済・新羅・高句麗が競って先進国の魏や呉に朝貢して、その存在を認められようとし、周辺国から朝貢を受ける中国側の王朝も、三国に分かれているが故に激しく正当論を展開し周辺国を政治的・文化的に差別化した。このような朝貢体制や正当論は、周辺国の国家形成のモデルとなり、周辺国がミニ中国することに繋がり、例えば日本では政権に服属しない国内の人々を夷狄と呼び、海外の新羅などを蕃国として朝貢を求めるようになった。
以上のような歴史的事実は、20世紀における日本の韓国・台湾植民地化や、戦後の中国と台湾の間で繰り広げられた激しい正当論の応酬にも繋がり、現代にまで影を投げかけていると著者は論じている。
本書は、今から1800年前に遡る激動の時代の史実をただ描くのではなく、東アジアの地政学的・国際的な諸問題の原点が三国時代にあることを明瞭に指摘し、改めて歴史を学ぶ意義を実感させる力作と評することができる。
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