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賢者の国の魔法戦士 みんなのレビュー

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紙の本

懐かしき黎明期

2004/10/11 22:35

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:エリック@ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「魔法戦士リウイ」長編シリーズ4作目。
短編シリーズ終了後の長編であるため、ドタバタが多かった短編シリーズになれた読者には、少々違和感が残るであろう長編シリーズ。しかし、同時に長年「ソードワールド」作品の持つ、ある種ストイックな雰囲気に慣れ親しんでいる読者層からはさらに忌諱されかねない内容であり、両者のバランスを取ることが難しくなってきているのを感じる。

本作はシリーズの最終章に至るまでの序章的扱いであり、特にストーリー的な見所は見当たらない。本作の総ページ数の少なさは、装丁をみれば一目瞭然であるが、内容もそれに比して薄いものであるといわざるを得ない。
新たな登場人物も現れ、今後の伏線として幾つかパーツが散りばめられて入るものの、全般的に中途半端な出来で終わっているのが残念なところ。
シリーズを通して、冒険者としての明白なまでの成長を遂げた主人公や、同じく、政変・陰謀など一介の冒険者では遭遇することのない事件の数々に直面し、それを乗り越えてきた仲間たちの描写など、描くべき部分が全て置いてきぼりにされた内容であるため、作品としてはおざなりな感を否めず、相当期間を経て刊行されたことを考えると拍子抜けしてしまう。
相変わらず豪華な挿絵に支えられて、登場人物の魅力が良い意味で増幅されているものの、内容よりもビジュアル先行という近年の富士見ファンタジア文庫の弊害をまざまざと見せ付けられているようで、個人的には悲哀すら感じる。

唯一、本作で際立っているのは、ソードワールドシリーズ最大の事件のひとつである魔精霊アトン復活が物語の主軸として明確化したことであろう。ソードワールド黎明期1980年代にドラゴンマガジン誌上を飾ったこの大事件が、20数年を経て再び表舞台に戻ってきたことには、郷愁の念を禁じえないところである。

魔法戦士リウイシリーズのラストのみならず、ソードワールドシリーズの1つの幕引きとしての期待は、今後のシリーズ作品に寄せていくこととしたい。
(しかし、次回は呪われた島が舞台となるようであるが、もう1つの呪われた島は一体どこへいったのだろうか。)

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