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アフターダーク みんなのレビュー

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みんなのレビュー414件

みんなの評価3.4

評価内訳

397 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

夜の濃密さの中に小さな灯がともってる

2004/09/27 21:30

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トパーズ - この投稿者のレビュー一覧を見る

大概の人が眠りにつく頃に、物語ははじまる。
夜明けなら息がほんのりと白くなってしまうような、冬が駆け出し始めたような遅い秋。なんて、この小説にぴたりと似合う季節なんだろう。
 私は依然に、夜働いてた事があるので(小説の中での職業とは違うのだが)コオロギとマリの会話は、心の中にぽつんと小さな灯が、ともるように素直に受入れる事が出来た。それまで親しくなかった人と急に交わす思ってた以上に深刻でリアルな話。これは夜にしかあり得ない、夜の濃い空気でなければ、こんなに近い距離感で、誰かの話に真剣に耳をたてる事もなく、饒舌に話す事さえないだろう。ギュギュッと抱き締められたように濃密な距離で他人の話を感じる機会が、私にもあったことを思い出させてくれた。
 登場人物はそれなりにみんな孤独で、夜の中で静かに呼吸してる。
 本文の中に以下のフレーズがあって
「部屋全体は暗く、彼の机のある部分だけを、蛍光灯の光が天井から照らしてる。『孤独』という題でエドワード・ホッパーが絵に描きそうな光景だ」
 そこまで読んでやっと気付いた。この箇所だけではなく、この物語の風景全体ががまるで、エドワード・ホッパーの絵みたいなのだと。登場人物でさえ旅行者で、街路の中から明るいネオンのともった室内の中で行われてる事を傍観してる、ついそんなホッパーの絵をイメージしてしまった。大概の登場人物は物語の針が進んでいく街に住んでいるのではなく、そこを目指して他所からやって来た人がほとんどだから。
 いろいろな予感や淡い期待を抱いてしまうのも、ホッパーの絵をイメージしてしまうのかも知れない。
 今となっては、マリもエリも絵の中に描かれても、不思議でないような気さえするくらいだ。ホッパーの絵の中に、メランコリーな表情をした若い女が、映画館の壁にひっそりと佇んでいる絵があるのだが(タイトルはニューヨークの映画館といいます)彼女達はなんとなく、具体的にその絵をイメージしてしまう。外見は違えども、ふたりともよく似てる。今は不安で押し潰されそうな彼女達だけど、10年後はどうなっているのだろう。特にマリの事が気になった。私はファミレスのコーヒーを前にして、いじけて不安げに佇むマリの事が大好きになってしまったから。
 夜も段々と長くなり、もう2ヶ月もすれば、地面に落ち葉が一杯で、それをふみしめるとカサコソと言う乾いたような、でもまだ中心は湿っているような小説の中の季節がやってくる。
今年は秋が来るのが待ち遠しい。

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紙の本

“らしい”作品

2004/10/22 20:33

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:R2 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ここ10年くらいの間で、待ち遠しいのは、
村上春樹の新作とスターウォーズの封切りです。

評価が★★★★★か…?
悩んだ…。
“評価”=“私が満足”だったかというと★★★★かなー。
だけど、
“新作でた”というだけで★★★★★(好きなのでしようがない)。

前作(カフカ)がハラハラワクワクものだったので、
今回のは、なんだろー、なあ。
(村上春樹)“らしい”って感じでしょうか。

街の描写がよかった(印象に残ってる)。
“新宿”がね。

★★★★★ね。

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紙の本

巨大な監視カメラ

2004/09/26 19:05

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上春樹の才能には舌を巻く。(最近は顔までかっこよく見えてきた)
何でもない言葉を格言のように感じさせるハルキ節も健在。
何よりも、これほど多用な読み方がなされ得る作品は、現時点では彼にしか書けないだろう。以下も、数多ある「アフターダークの読み方」のうちの一つとして提示したい。

本作の「視点」についてどう捉えるか。それが本作を読む際のポイントとなるだろう。
「宇宙人の視点」「神の視点」「鳥の視点」…すでに数々の書評家によって論じられているが、本作にちりばめられた符号から「監視カメラの視点」と名づけた中島一夫氏の論(週刊読書人9/17号)に追随しつつ、「安心のファシズム」に絡めて読んでみると、本作がより深いものに感じられた。

「安心のファシズム」(岩波新書)の内容について触れたい。
監視カメラ・携帯電話・ネット家電・住基ネット…これらのおかげで、私たちの生活は飛躍的に便利になってきているし、「安心感」も与えてくれる。たとえば、監視カメラ。監視カメラを設置するということは即ち、自分も監視されるということに他ならない。「自由」か「安心」かを天秤にかけたとき、多少の不自由を感じても、「安心」の方を大多数の現代人は選択する。だが、犠牲にした「自由」と同じだけの「安心」は、実は与えられていない…言わば管理社会への警鐘を鳴らしている本である。

本作「アフターダーク」の俯瞰の視点から、エリとマリという2人の姉妹にそれぞれ焦点が定まっていく方法は、都会に生息する無数の人間の中から、巨大な監視カメラが無作為に選んだ者の一夜を、淡々と映しているかのように感じられる。
「視点」からすれば、彼らは、「一人一人違った顔と精神を持つ人間であると同時に、集合体の名もなき部分だ。ひとつの総体であるのと同時に、ただの部品だ。」とされている。

監視カメラが映し出す、人間性を排除した無機質な世界の中で光るのが、マリがこの夜出会った「高橋」や「コオロギ」の存在だ。
—「でも君なら大丈夫だよ。うまくやれる。僕もここで帰りを待ってるし」
—「世の中にはね、一人でしかできんこともあるし、二人でしかできんこともあるんよ」
ほんの短い時間を共にしただけなのに、彼らはマリに貴重な言葉を残していく。
他人を信じてもいい、そう思わせてくれる人物たちだ。
彼らと出会った後のマリは確実に変わっている。

ラストの一行は、次に監視カメラに選ばれるのは自分なのではないか、という恐怖感にも似た思いを抱かせるが、信じられる人間がまだ夜のどこかにいるかもしれない、という希望が、孤独な暗闇に一筋の光明をもたらせてくれる。

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紙の本

気になる視点

2004/09/24 18:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アイレ - この投稿者のレビュー一覧を見る

昼と夜の長さが同じという秋分の日に一気に読み終えた。様々な角度からの視点によって見られる側と見る側に、あちら側とこちら側の世界に、どちらにでも意外と簡単に行き来できてしまう。回線はたやすく繋がれてしまう。そんな人の危うさ、眠らない街の闇の淵に、自分自身が足を踏み入れてしまったような錯覚に陥る。それは戯曲っぽい文体のせいなのか…? それにしても『私たち』が気になります。観念的な視点だというこの『私たち』に、やはり劇場の観客の目を想像してしまったりもする。見られる側と見る側のどちらが真実の世界なのか、追う者と追われる者のどちらが正義なのか境界線が非常にあやふやで、答えがない。だからこそ「ゆっくり歩いて、たくさん水を飲もう」という高橋君の言葉にほっとします。救われます。最後にアルファヴィルのカオルさんと海辺のカフカの星野さんは、知り合いのような気がするのは私だけ? 村上ワールドは健在だと思う。これもひとつの視点であり、アフターダーク…私は好きです。

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紙の本

会話・クリシェ・固有名詞・そしてカメラ・アイズ

2004/09/17 23:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:脇博道 - この投稿者のレビュー一覧を見る

素敵なプロローグだ。クールな夜の始まりが一糸乱れないカメラワーク
のように活写されている。動き出すアナザー・ワールド。いつもの作品
とは少々スピード感が早いとはいえ、それはきっとカメラが移動する速
度が早いからだろう。夜は闇。だが街の夜は光で満たされた白日の闇だ。
そして24時間均一の光で満たされたファミレスにおいて物語は始まる。

村上氏は、どうでもいいこと、を描写することにおいて超一級品の作家
である。評価が分かれた(小生は好きな作品であるが)ねじまき鳥クロ
ニクル、まではそれが徹底的につらぬかれていたと思う。がその後の作
品においてはどうでもいいこと、は影をひそめ、どうでもよくはないこ
とに除々にシフトしていったように思われる。しかし再び本作品におい
て、資本主義の極北において明滅を繰返すどうでもいいこととしての記
号に満たされた世界に文体が帰還した。こうでなくてはと思う。事物の
等価性、微妙な相違、それらが生成する軋み。そして、その軋みは大き
なクレバスに少しずつ変化していく。それらを会話とクリシェと固有名
詞のみをツールとして徹底的にクールに描写しつくすこと。文体の方法
として洗練の極みに本作は達している。

となれば、使用されるツールは初期作品において使用されていた固有名
詞が2004年現在における街において的確にサンプリングされたもの
に限定されるだけのことであるし、会話やバックグラウンドミュージッ
クは、そう変わりばえのしない初期作品からの反復であるとしてもさし
て驚くには当たらない。むしろ反復が快楽と連動しているのが氏の小説
の真骨頂であるのだから。あえていえば、カメラ・アイズという第3の
視点を導入したことが目新しいといえばいえるが、氏が音楽とともに映
画フリークであることを思いおこせば、たいした発見ではないことは自
明であると思われる。

読み進むうちにひとつの些細なことに気付いた。数字、である。氏の作
品においてツールとして重要な役目を果たしてきたどうでもいい数字(
例えば煙草の本数)が登場してこない。すこし考えた。答えらしきもの
が見つかった。それは本作をつらぬく、時間、である。何時何分何秒、
資本主義的世界においてこれほど重要な意味を持つナンバーは存在しな
い。これだけは、どうでもはよくないこと、の範疇に入るだろう。小道
具として使用されていた数字が、本作では大道具として使われているの
である。とはいえ、現在時刻が午前3時37分25秒であったとして、
この数字に重要な意味があるかたもいれば、どうでもいい時間であるか
たももちろん居るだろう。世界はそれぞれに進行しているだけなのだ。

第1作「風の歌を聴け」は深夜の台所で書かれたという話がある。そ
れでは本作は深夜のファミレスで書かれたのかもしれない。もちろん、
どうでもいいことではある。が、そう思いつつ読むと快感である。
多分、本作は、氏にとって特異点に位置づけられる作品であると私には
感じられた。とっさに浮かぶ同様の作品としては「国境の南 太陽の西」
がある。そして私にとってはどちらも無類に面白かったのはまぎれもな
い事実である。

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紙の本

公平性ということ

2004/09/11 00:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:非出来 - この投稿者のレビュー一覧を見る

一般に社会とか世間とよんでいる場所は、公平にできていない。そのことを踏まえた上で、著者はだからこそ、公平性を主張する。著者は自分と関わる物事に対しては、公平性を保とうと、この『アフターダーク』は成立させている。
『海辺のカフカ』で村上春樹は想像することに責任が生じると主張した。
『アフターダーク』においては、その責任のあり方を問う内容になっている。責任のあり方も公平ではないのだけれど、公平性を保ちたい、と。
村上春樹は一人称で書くことが多かったが、25年を経て、小説の新しい視点を切り開こうとしている。俯瞰的な視点は阿部和重『シンセミア』、ジョン・アービング『第四の手』を彷彿させる。『シンセミア』は視点をあらゆるモノに変化させ、『第四の手』は視点からの距離感は一定である。
しかしながら、村上春樹は『アフターダーク』において、まるで衛星から地上を捉えるかのように書いている(小説の中では違う表現を使っているけれど)。小説という手法は同時多発的に発生する事象を捉えることができない。主人公は「わたしたち」であり、空間を移動することは出来るが、同時にそれを俯瞰することはできない。
なんだか、難しいことばかり書いてしまったけど、僕の最大の焦点は、誰がシャツのアイロンをあてるかで、それは読んでのお楽しみ。
もうひとつ、小説の大きな楽しみは、レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ』探しだ。主人公の高橋は頬に傷がある。ここで、『長いお別れ』を思い出すともう罠にはまる。『アフターダーク』はレイモンド・チャンドラーへのオマージュが散りばめられた小説なのだ。

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2004/09/20 16:36

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2004/09/21 12:06

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2004/09/22 18:51

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2004/09/23 22:57

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2004/09/27 22:03

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2004/09/30 00:48

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2004/10/03 16:32

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