紙の本
人間の五感を文章化しようと試みた中短編集
2006/10/21 18:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くろみみずく - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は、特に小説を読むときは、頭の中に映像を作りながら読むたちなんですが、この中短編集の作品群は、難しくて、あまり映像化できなかったものばかりでした。
人間の五感を言葉で表現するというのは難しいとおもうのですが、飛浩隆氏はこれをこの小説で挑戦しようとしているように私には思えます。しかし、どうも私にはうまく伝わらないようです。
そういったところを、まあ、いいかとあきらめて読み進めれば、普通には読める小説群でした。
特に、音楽ネタのサイコホラーの「デュオ」と、表題作で、人間に力を発揮させるスイッチが図形の形で存在する(これを見ることによって発動する。)というのがなかなか秀逸なアイディアの「象られた力」が良いです。
繰り返しになりますが、この小説群は、イメージの奔流といった感じの表現が多く、私にはそのイメージングがうまくいかず、難しい小説でした。
でも、好きな人は好きなんでしょうね、飛ワールド。
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これほど文章の豊潤なSFを読んだのは初めて。饒舌ではない、むしろ無駄のない文体なのに、想像もつかない世界を言葉の力で鮮明に浮き上がらせてくれる。
言葉も、世界もとても魅力的。物語に浸る歓びがじっくり味わえる。
表題作が特に印象強かった。
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SF大賞受賞ということで読んでみた。短編集。中編込み。全体として感覚がとろけて持って行かれるような興味深さがあった。文章で架空の世界を描くことで、そんな風になるというのは素晴らしい。世界の終わりを感じさせるようで、それでもまだ続く。SFってすげえなと思わされる。ひっくり返る伏線と、毎度驚いて手に汗握る自分。SFを書くべくして生まれた優れた作家の作品がここにある。あまりに面白いので、読んでいる途中ですでに他の作品も購入してしまった。
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例えば大友克洋の「AKIRA」で鉄雄の力が暴走するところ、僕はそれを外側から一つの現象として見るわけです。一方で「象られた力」では、ホテル・シジックの崩壊を圓として体験することが出来る。こういうことこそが、マンガや映画とは違う活字の力であり、小説家に求められる資質なんだと僕は思う。飛さんの小説を読むと、そういうことを強く感じてしまう。
それから飛さんの小説の登場人物は見事なまでに饒舌である。これはきっと、SFであるからなんだろうと思うけど、読んでいる途中はほとんどそうである事を感じさせない、巧さなんでしょうね。
もう一つ感じるのは、面白いSFって良く出来たミステリーになっているってことですね。
今のところ「夜と泥の」が一番好きです。誰かの何かに比較したりするの良くないのだろうけど、漆原友紀「蟲師」とか、大友克洋「彼女の想いで...」などを視覚的に思い浮かべながら堪能しました。
ところで、この本を去年の秋頃に松江のある書店で買ったんですが、その日ちょうどその店で飛さんを見かけたんですね。で、声かけようかと思ったけど、手にはまだレジを通していない現物を持っているし、「今から買うところなんですよ」っていうのもマヌケだよね。なんて思っているうちに見失ってしまいました。こう見えて、小心者なんですよ、おいら。
そうだ、今、思い付いたんだけど、「面白いSFって良く出来たミステリーになっている」ではないですね。小説ってもともとがミステリーなんだよね、きっと。ミステリーっていうのは、ジャンルではない、きっぱりと言い切ってしまうのだ(何故、今?)。
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五感を刺激する精緻で豊穣な文体を駆使して、思弁的アイデアによって構築された世界での人々の意識の変容を描く作品4編を収録。表題作と「デュオ」はオールタイムベスト級の傑作。イーガン、チャンの最高作に比肩しうるレベルに達している。
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「デュオ」はSF幻想怪奇小説とでも呼ぶべきか。私には一番しっくり来た作品で、その末尾に提示されている世界観は、やがて『グラン・ヴァカンス』を産むことになる胎盤ではないかと思われた。表題作も、いったん精緻に築き上げた世界を、圧倒的な無残さで崩壊させていくところが、『グラン・ヴァカンス』と通じるのではないかと思った。もちろん、こうした想像力の「核」のようなものこそ、作品の(作家の)力の源泉なのだろう。「夜と泥の」は、宇宙進出に伴う人類の希釈化という概念ないしテーマを据えつつ、地霊めいた沼・泥・有機体の世界が不思議な美しさを放つ。植民地主義批判という政治的な側面もあるのかもしれない(中国系の人物が主要人物であることとも、関係ありそう)。「呪界のほとり」は、そういう理屈をあまり感じさせない、ユーモラスな作。書き手にとっての息抜き、という気がして、それはそれで、のびのびした読み心地が悪くはない。
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普段は全く読まないSF小説。
サイエンスに興味がないからなぁ、と思ってたら
そっか、SFもフィクションだよな、と気付かされました。
最初の「デュオ」が一番面白かった。
シャム双生児の神童ピアニストと調律師の話。
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グラン・ヴァカンス 廃園の天使 を読んでもの凄い衝撃を受けたので、購入。
グラフェナウアーズ怖いよグラフェナウアーズ。
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未知かつ良くわからないものを描くことと、単純に文章自体を「上手い」と思わせる作品。批評家気取りではないですが、技巧派っていうのはこういう作品のことでしょうか。短編の中の1つ「呪界のほとり」に登場する老人のある言葉に鳥肌が立った。
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飛浩隆パート2。
つらい現実から逃げるためには、描写力に優れた作家の作品って、雅に良薬。
私は、それほど文章を映像化して読むタイプの読み手ってわけではないのだが、否応無しに映像が流れ込んでくる、作家という人たちがいる。
まさに希有な才能の持ち主。
秋山瑞人と、この飛浩隆は二大描写力作家。もちろん文章力も半端無い。
山尾悠子も似てるんだけど、彼女は一瞬焼き付いたような絵が浮かぶことがあるんだけど、なかなか動き出さないんだよな〜
このタイプとは別に「文章」「情報」が頭に流れ込んでくるというタイプの作家もいて、冲方丁がその筆頭だし五代ゆうもそのタイプな気がする。
どちらも好きなんだけどね〜
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余裕がある時に再読したい感じだなあ。SFはやっぱし密度が濃いっていうか消化するのに時間がかかる。ということで星みっつ。
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表題作を含む四編の中篇集はどれも良質でした。緻密で芸術的な表現は読んでいるとある種の酩酊感すら喚起されてきます。音楽や図形といった文字で表現する事の難しい事象を綿密に形容する本書は独特の風味を醸し出していました。
表題作である「象られた力」そのもののように、まるで文字が意思を持って力となって読者を圧倒してきます。それが先を読みたいという思いになって、読む手を進めさせられるような感じ。そして読み終わった後には、独特な、爽快感とも言うべき印象を与えてくれる一冊でした。
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バラエティに富んだ中短編集?でした。
作品ごとに印象が違うので、まぁ良く分からないけど、もしかすると好みかもしれない(漠然としすぎだろ
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4篇が収められたSF中・短編集。文体も描かれている世界も幻想的で美しい。聴覚や視覚などが感じる「美」を言語化しようとする描写力に五感と想像力が強烈に刺激される。表題作が特に良かったかな。
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文句なしの星5つ!めちゃくちゃ面白いです。たしかにSFなので難しい部分もあったりですが(そこが格好いいのかもしれませんけど)分かんないながらにどんどん読み進めたくなるストーリーの面白さ、キャラクターの魅せ方、情景描写の美しさ。他の作品も読んでみたい!