紙の本
この「暗黒」に侵食されてください
2004/10/26 22:52
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投稿者:祐樹一依 - この投稿者のレビュー一覧を見る
綾辻行人といえば「館シリーズ」。と答える人は多いでしょう。氏のミステリはまさにそこから始まったのであり、本作はその集大成とも呼べる大作。上下巻、計1300ページにも及ぶ膨大な物語は、世にも奇妙な漆黒の館「暗黒館」にて繰り広げられる殺人事件が語られた巨編であります。
手にとって見ればずしりと響く重さそのままに、長大な物語は隅から隅まで綾辻氏の「館」の雰囲気に満ち満ちています。雰囲気作りから物語が始まり、どの場面においても雰囲気が前面に押し出されている印象は拭えません。「普通ではない」ことが明らかである、どろどろとした、そしてもやもやとした不可思議な空気は、幻想綺談を思わせるものでもあるのだけれど、読者はまさに「暗黒館」の空気にどっぷりと浸かることから、物語を「体験」することになるのです。これは誇張ではなくて、この本に「侵食」される度合が大きければ大きいほど、後々の感慨は深くなること必至です。
何せ「館シリーズ」ですから、用いられるメイントリックがどんな種類のものなのか、分かる人は分かると思われます。しかし、先述のように幻想ミステリの要素が色濃く主張されている本作においては、何処から何処までが明確に現実に起こっている事実なのか、読者の判断に惑いもさせる効力を持たせることによって、終盤までその正体をはっきりとさせません。それゆえに、動機が全く不明な殺人事件に科せられた「無意味の意味」には嘆息させられました(それは事件の動機とも繋がっていたので)。作中に起こるのは大まかに分けて「現在の事件」と「過去の事件」ということになると思いますが、その二者が微妙な…、接近とも拮抗とも呼べるような結びつきを持つことにより、本作そのものの安定性をもギリギリの状態で保つことに成功しているようです。
最終的に示される、物語全体を生かした仕掛けは、人によっては受け入れがたい種類のものであるかもしれないけれど、これは読者の「視点」を作中にどう生かすか、を綾辻氏が吟味した形でしょうね、きっと。
また、本作が「館シリーズ」の集大成であることを綾辻氏が一番意識したに違いない「ある真相」。これもまた、そういうことか、という驚きは大きいでしょう。その意味で、万人に勧めるには至らないのですが、これまでのシリーズ作を読んでいて、けれど本作はこの分量のせいで読むことを躊躇っている、という人は是非とも読んで頂きたい、と一押ししたい一冊です。
(初出:CANARYCAGE)
紙の本
館シリーズ7巻目の下巻
2018/10/31 22:16
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投稿者:沢田 - この投稿者のレビュー一覧を見る
記憶喪失についてやけに引っ張るから、江南くんの正体については驚かなかったけど、数十年にわたる年月トリックにはさすがに読めなかった。
面白く読めたけど浦登一族を描いた小説という側面が強く出すぎていたので、次回作は十角館みたいなミステリーを期待したい
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推理小説というよりはホラー(SF?ファンタジー?)小説と言った方が適切かも。謎解きを楽しみながら読むような本じゃないです。でも、最後の最後のどんでん返しはドキッとしました。
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長かった、というより長すぎた、という感があります。
『囁き』シリーズ、『霧越邸殺人事件』、『殺人鬼』などのテイストがあちらこちらにちりばめられていて、綾辻ファンにしてみれば懐かしい感覚も覚えたのですが。(特に『囁き』シリーズのテイストが強かった気がします。)
重厚な雰囲気、そして狂気じみた宴、異形の人々、と面白くなる素材はまんべんにあったのに、殺人事件の真相があまりにお粗末だったんじゃないかと思います。特に動機が。
ところでネタバレは避けますが、あちこちに伏線が張られていたことに後から気付いて悔しい思いをさせられました。中也の名前が呼ばれるシーンでは、とても驚きましたし。
で、上記のようなことを書いていて言うのは何ですが、館シリーズを今まで読んできた人にはやっぱり読んで欲しいかな、と思いました。集大成、という意味で。
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(上巻の続き)あの「時計館の殺人」(講談社文庫、857円)を初めて読んだ時の驚きのようなものを期待してたし、多分、綾辻さんは、それに応えるだけの物語を書いているだけに、本当に残念。今となっては、何故普通にそう思ったのか、自分でも分からないが、小説内で語られる「そこかしこにある小さな違和感」を普通に受け止めていたのだろうと思う。そのあたり、徹底してフェアにこだわる綾辻さんだからこそ、俺にも読めてしまったということだろう。でも、それを抜きに考えれば、館シリーズで最も感動的な物語ではあると思うし、これまでのシリーズ全体を一旦総括する話でもあると思う。思わず「十角館の殺人」(講談社文庫、590円)から読み直したくなったもんなあ。とりあえず、今回やたら登場する藤沼一成の物語「水車館の殺人」(講談社文庫、590円)は読み直してしまった。で、ホラー的な処理の部分とか、主人公二人の関係の描写とか、暗黒館という館の謎などは、よく出来てるし、処理も上手いし、読んでる間、ずーっと面白かったし、肩すかしもなかったし、「これ、どう処理すんだ」という謎解きに関わる部分も、納得できる感じだったし、8年待っただけのことはあるのではないかと思う。
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嵐の山荘、謎の館、奇妙な登場人物、異形の美少女、せむしの大男、出生の秘密、人間消失、秘密の抜け穴、etc. これでもかと盛り込まれる「胸をわくわくさせる」要素に、それだけで大満足。
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上巻の途中からネタ(というか仕込みというかトリックというか)がうすうすわかるので、あんまし驚かなかったかなぁ…。
館シリーズを読んだ人用って感じがします。
おもしろいっちゃ面白いけど、初挑戦がこれだと印象悪い(というかあんまし面白くない)かも…
これだけ読んで、館シリーズってこんなもん?つまらん!
とか思った人は、他の館ものも読みましょう。
そしたら、少しはこの作品の印象も変わってくるかも?
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『館』シリーズ最新作。前作発売から待っただけのことはありました。
『あの方』がもっと登場して欲しかったな…最後だけじゃなくて
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館シリーズ2部の1作め・下巻。まぁ、読んでてなんとなく真相が見えるひとは多いと思うけど。第1部おさらい+第2部イントロダクションって印象ですな。
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連載だから仕方がないかもしれないけど、『そのうち教える→教えてもらう前に薄々読者と主人公は気づく』が多すぎです。上下巻にしなくても、とまでは言いませんがもうちょっと薄い上下巻にできたと思う。内容は囁きシリーズノリも混じってファンなら楽しめる感じです。
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謎めいた住人たちと奇妙な儀式に彩られた妖の館で、ついに事件は勃発する。犯人の狂気はさらなる犠牲者を求め、物語は哀しくも凄絶な破局へと突き進む! 次々と起きる惨劇の背後に隠されたものとは何か?
【感想】
http://plaza.rakuten.co.jp/tarotadasuke/diary/200502170000/
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内容は、本格的な推理もの(探偵が謎解きをするようなもの)が好きな人にはあまり薦められないかな。館シリーズしか読んだことのない人は、同じ綾辻行人の、囁きシリーズや、最後の記憶を読んでおくと入りやすいでしょう。どちらかというと、作者VS読者といった感じの作品です。と、ここまでは表向きの話。実はすっごい手が込んでいて、メインの話の他にもいくつか(っていうか沢山)謎が潜んでます。そのすべてが最後に解明されているわけではないですが、きちんと読めばわかると思います。
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十角館や時計館のほどの衝撃や感嘆はないけれど、人形館のようながっかり感はない。館シリーズを最初から読んでいないと、楽しめないと思う。登場人物は現実味がないけれど、不思議な魅力に印象深い人が何人かいる。
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暗黒館終了。えー…とりあえず、がんばったね、綾辻!
館シリーズを延々読んできた人にとっては、色々と面白いこともあるのですが、果たして読んでない人はどうなんだろう? あんなことやこんなことを「そうだったのかー!」と思えなくても楽しい…のかな? 自分で読んでしまっているので、そのあたりは正確にジャッジできません。でも、とりあえずシリーズファンは読むと色々と楽しいです。
[2005/04/05読了]
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中盤で明かされる秘密は読者にも予想しやすい内容だったと思います。ここの部分をひたすら勿体ぶって教えてくれないのは作中の「私」同様にかなり焦らされました。しかし終盤の怒涛の展開、そしてそれを可能にするために緻密に絡み合わされたトリックは非常に素晴らしく評価がググッと上がりました。これで中だるみさえ無ければ時計館を越えれたかもしれませんね・・・惜しかったです。
亡びてしまつたのは 僕の心であつたろうか 亡びてしまつたのは 僕の夢であつたろうか 記憶といふものが もうまるでない 往来を歩きながら めまひがするやう