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紙の本
眠りが丘の奇妙な住人達に幸あれ!
2005/01/18 01:56
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投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
装画は、桃吐マキル氏のものである。
この絵柄が実にいい。
特に、この赤いミニスカートから伸びている、太腿からふくらはぎ、赤いハイヒールに至るまでの、セミロングの美女の脚線には、思わず目を奪われてしまう。
この本は、1998年から2004年にかけて、作者が、文芸誌や週刊誌に載せた短編をまとめたものである(一部改題あり)。
目次を見てみよう。
初級篇
0 苛酷な感覚
1 美脚に捧ぐ
2 夢のレコード
3 決闘
4 町内美化
5 幻の娘
6 あゆみちゃんのお母さん
7 聖人の三角関係
8 北海道産
中級篇
9 古風の遺言
10 幻の女優
11 オナニスト一輝の詩
上級篇
12 私が岩石だった頃
13 燃えつきたユリシーズ
となっている。
3の「決闘」は、こんな話だ。
眠りが丘中学校に通っていた、輝夫と恭治は犬猿の仲で、いがみあっていた。高校は別になったせいもあって、その三年間は口を利かなかった二人だが、卒業してから、駅前の美容院でシャンプーのアルバイトをする中学の同級生ヒロミをめぐって、恋の鞘当てを始める。二人とも、その美容院を利用していたのだ。
10の「幻の女優」は、こんな話だ。
眠りが丘に住む私の近所のマンションには女優が住んでいた。何でもその女優は、一作の映画にしか出演したことのない幻の女優らしい。唯一の出演作は、全編にぼかしが入っており、ぼかしなしのそれを見るためには、外国に行かねばならないくらい、過激な内容になっているということだ。私は、中学の友人達とともに、仲良しグループ『退屈クラブ』を結成し、女優の住んでいるマンションの張り込みを始めた。
11など、女性の自分では、わかりづらい感覚が伴う記述の作品も幾つかあったが、男性が読むと、実感をともなって、いっそう楽しく読めるのではないだろうか。
軽快に進む流れの中に、あっけらかんとしたエロティシズムが時折顔を覗かせる、ユニークな短編集である。
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