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紙の本
文学が人に生きる「力」を与えるとき
2005/03/12 17:43
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投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
朝日新聞大阪本社文化面に連載された文学論の単行本化。昨年7月に朝日新聞を退職した著者の連載を一冊にまとめた本である。
収入と安定のためにひきまわされる「危険からのがれることをなしとげた珍しい記者」、つねに「内心の主題と取り組ん」だとの鶴見俊輔のコメントが帯に記されている。
鶴見俊輔のコメントにあるように、稀有な内容を含んでいる。権力に抗し戦争に反対した戦中の文学者を共感をもって描く筆に迷いがない。
権力に抗せざるを得なかった社会との関係がしっかりと把握されている。
もともとジャーナリズムとは、そんな精神をもっていたはずだが、昨今のジャーナリズム精神の退廃に危惧を表明するものも多い。そんなジャーナリストの多くは新聞社から独立し、フリーのジャーナリストへと転進している。
そんなマスコミ界の中で、自己の主張を貫いた著者は、やはり珍しい存在なのかも知れない。
本書のサブタイトルは「戦争の傷痕を追って」となっているが、戦争の問題を戦後の文学からも読み解こうとする。
それも、日本の問題だけでなく、植民地にされた人民の文学をも描くことによって、日本の侵略問題にも迫ろうとする。
中野重治に関することなど、いくつかの違和感があるが、著者が迫ろうとした方向と、それを追求する情熱には共感できる。
金石範の『火山島』への数編の論稿は、侵略された国の人々の苦しみを我が事のように感じようとする著者の想いが滲み出いる。
文学とは何か?を考えるとき、著者の視点は一つの方向を示している。人間とは何か、どう生きるべきか、そんな強い想いが伝わってくる。戦後60年の今年、あらためて考えるべき内容が示されている。
「文学」が、人が生きるということに「力」を与えるものであって欲しいと願うものにとって、一石を投じる作品である。
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