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紙の本

語られざる傑作とでもいうのだろうか。人民戦線=正義といった単純なスペイン内戦観を25歳の女性がぶち壊す

2005/02/18 20:01

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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作
スペイン市民戦争が終結し、ようやく平和を得たマドリードの裏町で、内戦に勝利した国民軍の治安警備隊員が殺害された。駆けつけたテハダ軍曹は、たまたま現場に居合わせた女性を容疑者として射殺する。だが、被害者がなぜ殺されたかは謎として残り、彼は独自に事件の背景を探りはじめる。いっぽう、射殺された女性の恋人で、内戦に敗れた共和側の元兵士ゴンサロも事件を追っていた。恋人の復讐を成し遂げるために……戦争の爪痕の残る街に交錯するふたつの捜査線。その交点に浮かび上がる事件の真相とは? 25歳の新鋭が放つ秀作サスペンス」

さて、まず本の後の著者写真を見てみよう。25歳、とはとても思えぬ老成した感じの女性である。数ある著者ポートレートの中でもかなり悪いほうのもの。鼻の形も特長があるものだから、ハウルの城に出てくる老婆を連想させる。これを使った出版社も、OKを出したレベッカも偉い。

いやいや、容姿を取り上げたのには実はふかーい、深ーい(不快、ではありませぬ)理由がある。実は、この小説、250頁足らずの分量の割にかなり面白いのだ。とても20代の、しかもアメリカの女性が書いたとは思えないほど。某国の逢坂某がスペインを舞台に長篇を書く、そのながーいだけの小説の影が薄くなるほどなのだ。

最初に登場人物を書いておこう。

本の案内にも書かれている治安警備隊軍曹のカルロス・テハダ・アロンソ・イ・レオンがいる。テハダは士官学校ではなく大学出の優秀な男である。その対極に、彼に恋人のビビアナを殺され、頭に血が上り何も見えなくなってしまう身勝手な男ゴンサロ・リョレンテがいる。この男の無思慮、無分別、無能ぶりはまさに現代のぶち切れ若者そのもの。

そして、その悲劇の原因を作り、そのことを反省し様ともしない頑固な、というか年相応に愚かな少女アレハ、その母で弟のゴンサロに振り回されるカルメンがいる。この小説で生き生きとしている女性をもう一人書けば、アレハの担任教師であるエレナ・フェルナンデスがいる。

ちなみにタイトルの青は国民軍(フランコ派)、赤は人民戦線(共和国政府派)の民兵の色ということになる。ちなみに“赤”という言葉は繰り返し文中に出てくるけれど、“青”は出てこないところが愛嬌。

なぜこの本が新鮮か、それは主人公に国民軍(フランコ派)の人間をあてたことによる。どこの国の人間もそうだろうけれど、特に日本人は、マスコミに操作されやすい。そのせいか、いつまで経っても、ベトコンは正しく、レーニンは美しく、ケネディは気高く、人民戦線は正しいという幻想というか、一度作り上げてしまった観念から逃れることができない。

それはスペイン内戦でも同じで、いつまでたっても国民軍=悪、人民戦線=正といった呪縛から逃れることができない。そのような一面的なものの見方がいかに世界を歪め、視野狭め冷静さを失わせるか。日本人の作家が描くスペイン内戦は、殆どが共和国政府の目でしかものごとを見ていない。あの逢坂剛にしても、その呪縛を逃れてはいない。

そこを25歳のパウエルはさらりと潜り抜ける。しかも、主人公は単純な動きをしない。平然と殺人を犯したかと思えば、殆ど身勝手な罪の償いをする。一方、人民戦線側の人間は愚かである。自分のことしか考えることが出来ない。無論、国民軍側では軍事物資の横流しなど当たり前である。そう、政治や軍事において、どちらか一方が絶対的に正しいなどということ自体が馬鹿げた幻想だろう。この小説は、痛快ではないものの、まさに人間を描き切る。こうなったら、日本代表として船戸与一あたりにスペインを描いて欲しいものだ。レベッカよ、そのときはぶっ飛ぶぞ!

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