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紙の本
落語家小説としても、充分面白い
2005/11/12 19:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
パンクロッカー(髪型より推察して)だった、竜二君が、
とある事情により、上方の落語界の重鎮
笑酔亭梅寿さんのところ、に弟子入り、
梅寿さんとともに、色んな謎を、解いていく、連作物です。
兎に角、展開的には、はちゃめちゃな面もありますが、
”くすぐり”(落語用語、今回習得)も含めて面白いです。
なにより、登場人物全員の、”キャラ立ち”が物凄いです。
師匠の、梅寿さんも、落語してなければ、
ただの、借金取りに追われるよっぱらいの我儘不良じいさんです。
出てくる人の、キャラ立ちもそうですが、
名まえも皆さん兎に角、それは、ちょっと、と思うぐらい過激!!。
出てくる人、多分あの人が、モデルだろうなぁ、と思いあたる
芸人さんは、居ますが、それを、二・三人くっつけて強力にした感じです。
落語の魅力、落語界、上方の芸能のその興行の事情も、
大変よく判るように出来ています。
ネットなんかでは、TBSのドラマと関連付けた
書き込みなんかが、ありましたが、そんなに気になりませんでした。
ドラマの舞台は、関東でしょう?
ミステリにせず、普通に
落語界の小説としても、成立したのでは、ないかと、
思うぐらい、謎解き以外も十分に面白い一冊です。
紙の本
落語という娯楽
2005/05/08 16:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
クドカンドラマの影響で、落語に興味を持ち始めた方は少なくないと思われる。
かく言う私もその一人。
さらにディープな落語の世界にいざ踏み込まん、という御仁にお薦めしたいのが、この「笑酔亭梅寿謎解噺」だ。
こちらは上方落語が舞台で、大酒飲みでハチャメチャな噺家、笑酔亭梅寿に弟子入りした(というか、させられた)竜二という元ヤンキーが主人公。
特に目が離せないのが、梅寿のキャラクター。
一見お下劣極まりない師匠だが、陰で見せる浪花節な一面が、読む者をしてほろりとさせる。
竜二の姉弟子・梅春とのエピソードは実にしみじみさせられる。
本書は、各章に「たちきり線香」「らくだ」「時うどん」等、落語の噺のタイトルが付けられ、その噺に因んだ事件が起こり、それを竜二が解決していく、という形式になっている。
その中で、「落語なんてしょうもない」と思っていた竜二が、次第に落語の魅力の虜になっていく過程が描かれている。
落語ビギナーにとっては、ストーリーも頭に入り、古典落語の良さも分かる。
一挙両得の一冊だ。
梅林刈、梅雨、梅毒…梅寿の弟子には必ず「梅」の字が入るが、はたして竜二はどんな芸名を付けられるのか?
本書を読んでご確認あれ。
紙の本
拾い物、といったら田中啓文に失礼だろうが、上手いものだ。大倉崇裕『やさしい死神』の解説で前島純子が、田中のこの本について触れざるを得なかったのがよく分かる。座布団、4枚!
2005/03/21 22:18
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まさに誤算本である。しかも、いい意味でだ。ただし、この装画はないだろう。安物の劇画ではないか。それさえ別にすれば、実に格調高いデザインなのである。例えばカバー右上のタイトル、この赤と黒を上手く利用しながら、タイトルの文字の周りを赤い色が纏わりつく、その様子が実にいい。それが背のデザインにも生きて来る。この本が平積みにならず、書棚に背だけを見せて置かれたとき、その佇まいはまさに川辺に立つ岩下志麻である(古いか)。
それが、なんでこの薄汚い絵なの?となる。しかしだ、このエグサ、私は好きではないけれど、この話に合うといえば、いえないこともないのだ。田中啓文のイメージと小説の内容の乖離、その距離に比例するほどにこの絵の与える印象と、中身のバランスは取れていない。繰り返す、いいのである。勿論小説の内容のことだけれど。
で、装画は成瀬國晴、装幀は妹尾浩也、監修が月亭八天(こんな人、実在するのでしょうか、上方落語に詳しくない私は、WEB検索する気もなく、勝手に誰かの仮の姿と思ってしまうわけですが、違っていたらごめん)。
でだ、この本は真向勝負の本格推理譚なのである。田中啓文の名前と成瀬の画さえなければ、買いたい、とは思わなくても手にしたいというミステリマニアはいるはずだ。しかしだ、本格推理の結末が駄洒落でおわる、などという馬鹿げたことがあってはならない、と思う読者は絶対に手をださない。なんといっても『私立伝奇学園高等学校民俗学研究会』『UMAハンター馬子』『蹴りたい田中』の作家なのだ。しかし、これが見事に裏切られる。凄いのである。しかも人情小説の趣すらある、どうした田中、ば、ば、化けたか!
いやいや、先走った。納められている作品は7編。「たちきり線香」「らくだ」「時うどん」「平林」「住吉駕籠」「子は鎹」「千両みかん」で、どれも古典落語を上手く話に取り入れている。ちなみに私がしっている「時蕎麦」が「時うどん」となっているのは、江戸落語と上方落語違いなのだろう。どの話にも、扉の裏に1頁、タイトルとなった噺の解説と駄洒落オチがついている。
主人公は、タイトルからは笑酔亭梅寿と言う感じだが、実際に事件を解決するのはその弟子で鶏冠頭が周囲の反発を呼ぶ星祭竜二、両親を交通事故で亡くし、親戚をたらい回しにされそれ故か、あるいは生まれつきか、誰にも相手にされなくなり、高校も中退してぐれている、まさに現在犯罪を起こしている青少年の鑑みたいな悪ガキである。勿論、落語など聞いたこともない。
その竜二が、元担任教師の手で無理矢理入門させられるはめになったのが、借金で首も廻らないのに何故か酒びたりで、その芸といったら、なんだかだ言われながらも文句を言う親父も黙るという古典落語の名人、笑酔亭梅寿65歳ということになる。そこに梅寿の息子で、家のことを周囲に気付かれないようにしている竹上刑事、大学出身の陰険な兄弟子梅雨、もと風俗出身の姉弟子梅春(この名前と元の職業を洒落るところが田中啓文)などが話に絡んでくる。
幽霊譚、密室、秘密、濡れ衣、裏切り、誘拐、季節ものと主題も様々で、それがタイトルの古典落語とうまーく溶け合いながら、解決に向かっていく。竜二が師匠の梅寿を立てながら謎解きをする場面は、ちょっと『名探偵コナン』を思わせて好きではないけれど、ヨイショも芸の内と思えば、許せる気がする。拾い物、とはこういう作品をいうのだろう。好調啓文に、チアーズ!