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ユージニア みんなのレビュー

第59回日本推理作家協会賞 受賞作品

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みんなのレビュー246件

みんなの評価3.8

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/07/10 19:30

かかわった人物の数だけ、真実はある

投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いやぁ、面白かったです。
この本をまだ、読んでいないあなたは、幸せ者ですよ
(↑キザだけど、一度使ってみたかったフレーズ)
今まで、読んだ恩田陸作品の中で、ベストです。
(「光の帝国」が、めちゃめちゃおもしろいそうだけれど、、)

 事件は、とある地方(北陸地方みたいです)の名家のお医者さん宅で、
ジュースやビールへの飲料物への毒物混入で
十何人殺害の一家惨殺事件が起きます。
この事件で、一人生き残る人物がいるのですが、
 それは、なんとここの家の盲目の娘さん。
盲目の娘さんが、どんな証言をするのか、、、、。
又、容疑者と目される人物が、その後、自殺。
 果たして、事件の真相は、、、、。
というのが、概ねのプロットですが、
 各章、各章、語り手の話者が、変わり、
それぞれ、この事件について、語っています。
 それが、微妙に食い違っているわけです。
人間の数だけ、真実があると、言う感じです。
 養老さんの、「バカの壁」もどんな事実も、
受け取り手によって、少しづつ違い完全に一致して共有することは、
出来ないと、いう主旨でしたが、それを小説として表現しています。
 ちょっと、怖い感じもしました。
 この本、カヴァーなんかの、装丁も凝っているのですが、
(最近、カヴァーなんかの、凝った本が多くなりましたね)
豊崎さんによると、この本、活字の版組みも微妙に凝っていて、
読者を幻惑させるように、ちょっとずれて活字組みがしてあるのだとか、、
(気付かなかった、、、、汗)
(そんな、サブリミナルなテクニックは、ちょっと辞めて欲しい
 酔うじゃないですか、、)
読んでてなんか、行間が、広いなぁ、程度でした。
私の、読書力もこの程度と、いうことですが、
逆に、それぐらい面白かったんですよ、、。
兎に角「えー、もう終わっちゃうの〜(泣)」という感じでした。
 ラストも色々賛否あるみたいですが、
いつもの恩田節だ思えば、なんのそのです。

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低い評価の役に立ったレビュー

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2006/01/05 09:30

謎は謎のままに終わるということを覚悟したほうが良い小説

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

石川県の名家で行なわれた祝い事の席で、毒物による大量殺人事件が起こる。後に自殺してしまった容疑者の動機は判然としない。また難を逃れた当主の娘は眼が見えず、現場にいながらも事件を目撃してはいない。
 それから十数年が経ち、事件の関係者たちは当時を改めて振り返るのだが…。

 人間の理知を超えた衝撃的な事件が発生し、その場に居合わせた人々による回想を積み重ねて事の次第を炙り出す。そんな手法で恩田陸は既に「Q&A」(幻冬舎)という大変面白い小説を物しています。本書「ユージニア」もその手法を踏襲していて、一つの事件を複眼的に描く、いわゆる「羅生門」スタイルの構成を用いています。

 しかし私は本書を「Q&A」ほどには楽しむ事ができませんでした。恩田陸は本書に関するあるインタビューで「『ツイン・ピークス』みたいな話」を考えていたと話しています。確かに「ツイン・ピークス」のような、ある閉鎖的な小さな町で<あやかし>の出来事が起こり、一癖も二癖もある登場人物が切り結んでいく、という物語の「ただならぬ雰囲気」はこの「ユージニア」の全編に漂っています。

 それでも恩田陸が目指した「ツイン・ピークス」が結局のところ、そういう雰囲気以上に味わえるものを与えてくれなかったのは、ひとえにあのテレビ・ドラマの関係者に、物語をしっかりと最後まで構成するだけの力量がなかったからです。構成のほころびを「謎が謎を呼ぶ」という言葉で言いつくろうだけで結局収拾がつかなくなったため、あのドラマは放送中止に追い込まれました。

 「ユージニア」でも残念ながら謎は謎のまま終わってしまいます。読者はもやもやとした思いと共にあえなく放り出されたという感を強くするか、それとも「謎が謎を呼ぶ」という永遠に終わることのない閉じた系の中でいっとき浮世離れした思いに遊べたことに満足するか、読者自身の選択に任される小説だというのが私の感想です。

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246 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

かかわった人物の数だけ、真実はある

2006/07/10 19:30

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いやぁ、面白かったです。
この本をまだ、読んでいないあなたは、幸せ者ですよ
(↑キザだけど、一度使ってみたかったフレーズ)
今まで、読んだ恩田陸作品の中で、ベストです。
(「光の帝国」が、めちゃめちゃおもしろいそうだけれど、、)

 事件は、とある地方(北陸地方みたいです)の名家のお医者さん宅で、
ジュースやビールへの飲料物への毒物混入で
十何人殺害の一家惨殺事件が起きます。
この事件で、一人生き残る人物がいるのですが、
 それは、なんとここの家の盲目の娘さん。
盲目の娘さんが、どんな証言をするのか、、、、。
又、容疑者と目される人物が、その後、自殺。
 果たして、事件の真相は、、、、。
というのが、概ねのプロットですが、
 各章、各章、語り手の話者が、変わり、
それぞれ、この事件について、語っています。
 それが、微妙に食い違っているわけです。
人間の数だけ、真実があると、言う感じです。
 養老さんの、「バカの壁」もどんな事実も、
受け取り手によって、少しづつ違い完全に一致して共有することは、
出来ないと、いう主旨でしたが、それを小説として表現しています。
 ちょっと、怖い感じもしました。
 この本、カヴァーなんかの、装丁も凝っているのですが、
(最近、カヴァーなんかの、凝った本が多くなりましたね)
豊崎さんによると、この本、活字の版組みも微妙に凝っていて、
読者を幻惑させるように、ちょっとずれて活字組みがしてあるのだとか、、
(気付かなかった、、、、汗)
(そんな、サブリミナルなテクニックは、ちょっと辞めて欲しい
 酔うじゃないですか、、)
読んでてなんか、行間が、広いなぁ、程度でした。
私の、読書力もこの程度と、いうことですが、
逆に、それぐらい面白かったんですよ、、。
兎に角「えー、もう終わっちゃうの〜(泣)」という感じでした。
 ラストも色々賛否あるみたいですが、
いつもの恩田節だ思えば、なんのそのです。

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紙の本

■遠い夏の『祝』の記憶。

2005/03/27 22:07

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:秋月真夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る

■目にしたときには、帯は凝っているけど(レイアウトというか、抜き出した文章が的確というか)、今回の装丁はシンプルなのねと思ったのですが、気のせいでした。
開くとわかります。あんな、サイズ変えるなんて面倒そうなこと(笑)!

語り・作中作・記事・取材記録…幾人かの視点が何度も切り替わるからか、陰惨な事件を追っている割に淡々としていて、明確にすべてがさらされるわけではないけれど、恩田さんらしい綺麗な物語だなと思いました。

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紙の本

ぞっとするわけでもない。引き込まれてしまう。飲み込まれてしまう。この世界に。

2005/02/22 00:41

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:いわさち - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず装丁と冒頭の数ページに心引かれた。
誰が世界を手にしたの?
大きな字で書かれたそれにわたしはやられた。

発端は地方都市の名家で起こった17人もの犠牲者が出た殺人事件である。
犯人は若い男。しかしこの家の者とは関係が全くない。
一方向から事件を見つめているわけではない。
さまざまな人の視線で描かれている。
それは『忘れられた祝祭』という本で事件をまた明るみに出した女であったり、
殺人現場となった家のたった一人の生き残りの女であったり、
事件を追いかけた刑事であったり、
犯人とされている男であったりする。
時間も全く違ってくる。事件当時であったり、何年もたった後であったり。

面白いと思う。飽きがやってこない。
生き残りの女の怖さが前面に響いている。
誰の視点で話が進んでいるのかなんて気にしなくても読める。
全てばらばらに見えるけれど、事件や生き残りの女の青澤緋紗子を描くといった点で一つの流れを形成している。
幾分不可解な点が見られるが、それもこの作品の味である。

ユージニアの意味は最後にわかる。
ほうなるほど、そういう意味か。
妙に納得してしまった。

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紙の本

恩田陸お得意の尻切れトンボ。これを文学的と高く評価する向きもあれば、私のように、もしかしてオトセナカッタ?と思う人もいる。でも、面白い

2005/04/13 20:32

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

久しぶりに凝った造本に出合ったな、という感じだろうか。勿論、カバーに薄い紙がもう一枚かかる、というのは偶にある。それが縦縞を持っているというのも、今までにないわけではない。それにタイトルが印刷されていて、下のカバーと一体化する、というのも空前というわけではない。
しかしだ、本を開いて驚かない人はいないだろう。まず、私は手紙か何かが挟まっているのかと思った。いや、最近めっきり見なくなったけれど月報みたいなものか、とも思った。でも、違う。これって製本屋さん泣かせだろうなあ、そう思う。だって、しっかり綴じられていて、しかもその位置がズレることが出来ない。どうやって製本したのかなあ、これって空前だけじゃなくて絶後でもあるよな、そう思う。
しかもだ、各章ごとの扉の頁の裏、これが微妙な模様つき。で、本文の紙、これが最近の本ではあまり見かけない薄くて、かなりすべすべした女性の肌を思わせるもの。無論、裏の字が透けるようなものではないけれど、角川書店はあまりこの手の紙を使ったことはないはずだ。で、薄い紙ということは柔らかいということでもあって、本を開いた感じがとても気持ちがいい。で、着痩せするタイプっていうか、本の厚みの割に頁数は多い。
で、カバー写真は松本コウシ、ブックデザインは、あの、祖父江慎+cozfish、フォントディレクターが紺野慎一(凸版印刷株式会社)である。うーむ、まさに総合デザイン力の勝利か。
しかもだ、この話、各章の語りが実にいいのだ。いかにも恩田らしい湿り気のある饒舌。無論、視点は微妙に移動していく。一人称だけで押し切るかと思ったら、そうでもない。核になる部分が、様々な角度から光を当てられることで徐々に姿を見せてくる。そのテンポのゆったりしたこと。しかしだEugeniaである。英和辞書を引けば、そっけなく「女子の名前」とだけ。いったい、どう結びつくというのだろう。そんな心配を孕みながら物語りは展開する。
さて、話の内容だ。大量殺人事件の核心は、とだけ言っておこう。ただし、私は恩田は江戸川乱歩のように、とりあえず書いてしまう、そしてそのうちになんとなく話がまとまってくるというタイプの作家で、最初から話の骨格を緻密に作り上げて作品に取り掛かるのではない、そういう気がするのだけれど、どうだろう。
お、うまいなあ、気づかなかったぞ、という伏線がある。ふむふむ、と感心する。でも、どこかスッキリしない。引導を渡してないんじゃないの?と思う部分がある気がしてならない。それを、いかにも閉じない話として歓迎するムキもあるのだけれど、どうも恩田は纏めるのが苦手なのではないか、そう思うことが多い。
ベストの呼び声高い作品にケチをつけるのか、とファンに叱られることは承知で、でも「やっぱ、尻切れトンボじゃん」といっておこう。無論、それでも面白い小説であることは確かだけれど。
遅くなったけれど、各章のタイトルをあげておけば、プロローグに続いて第一章「海より来るもの」、以下「二つの川と一つの丘」「遠くて深い国からの使者」「電話と玩具」「夢の通い路(一)」「見えない人間」「幽霊の絵」「花の声」「幾つかの断片」「午後の古書店街にて」「夢の通い路(二)」「ファイルからの抜粋」「潮騒の町」「紅い花、白い花」の全14章。
タイトルから何も見えてこないのがいい。正直、ここだけみれば短篇集だ、と言い張っても納得するかもしれない。約450頁、KADOKAWAミステリに2002.8〜2003.05、本の旅人に2003.7〜2004.9連載とある。二つの雑誌にどのような形で出たのか、せめてそのくらいの情報はあってもいいのではないだろうか。ちなみに角川書店は文庫本などでも作品の履歴を載せなかったり、改題してもダンマリヲ決め込むなど老舗にあるまじき行いをする。反省すること。

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紙の本

人間の「罪深さ」を問うミステリーの原点?

2005/02/21 09:56

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:戸隠かれん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 これは暑い、暑い夏。
 頭もぼんやりとするような、暑い夏の話だ。
 町のシンボルである青い丸窓の家で毒殺事件が起こる。
 その日はちょうど米寿の祝いの席であり、家族と親類縁者のみならず、
 近所の大人から子供といった祝いに訪れた人々を無差別に毒殺するという
 悪質なものであった。
 死亡したのは17人。生き残ったのは2人。
 犯人が特定できず事件は難航し、
 結局、自分が犯人だという遺書を残して死んだ男によって、
 あっさり事件は幕を引かれる。
 現場に残された謎の言葉を綴ったメモ用紙の意味、
 そして事件の動機も男の素顔も謎のまま…。

 物語は、事件当時まだ子供だった雑賀満喜子がその事件を書いた本、
 『忘れられた祝祭』が世に出されてから20数年後。
 何者かがこれに関わる人たちを尋ね歩くという視点ですすめられている。
 途中までは、この人物が何を探しているのかがわからない。
 ただページを追うごとに、
 私も『忘れられた祝祭』が読みたくてたまらなくなった。 
 もしかしてここらへんなのかも、と目星をつけるのだが曖昧で、
 どこかに記載してあるのかも、と危うく先を覗きそうになった。
 ちなみに。
 『忘れられた祝祭』の本文だと断った記事はどこにも記載されていないから、
 やきもきしながらも物語に従って進むしかない。

 そうこうしてようやく辿りついた結末。
 謎だった事件の背景と事件の犯人が分かるのだが、
 著者の投げかける問いの重さをそのまま受け止めると、
 どうも爽快感がない(笑)。
 何となくモヤモヤっとしている。
 実はそれがポイント。
 本を閉じ最初に戻ったそのときにすべての謎が解けるんだな。
 『壊れかかった不安定な本』というコンセプトで作られた本。
 いざ手にとってみれば、想像していた以上に異質で、
 これまで出会った本のどれにも似ていない。
 しかし、読み終えれば本の作りの謎も解ける。
 あとは読んでのお楽しみ。 

 途中、既刊されている作品のような既視感を覚えるものの、
 身に染みるラストはそれを補って余りあるし、
 ノンフィクションとフィクションを上手く織り込むことで、
 読者を物語に参加させてしまう話の進め方。
 どれをとっても、彼女の持ち味が生きている。

 裏返せば明らかになる記憶の扉。
 露草に留められた見開きの二枚メモ用紙を手に、
 物語だけでなく表紙や雰囲気、著者の情熱(?)など、
 余すところなく堪能して欲しい。
 読むたびに表情の変わる至極の一品。

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紙の本

恩田陸の作品を読むのはこれが初めてです。推理小説を読むつもりでした。売れっ子作家のしかも直木賞候補となった作品ですからいろいろと期待したくなります。期待は外れましたが

2005/07/19 16:56

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

十七人毒殺という無差別大量殺戮事件。本文でも比較のため帝銀事件を例に挙げているところがあります。帝銀事件の謎の一つはいっぺんに大勢の人に毒を飲ませるテクニックが素人離れしているところでした。もちろん青酸化合物の入手経路も問題になりました。その記憶から私はこの問題についてどのような独創的工夫があるのかなと興味を持ったわけです。
何人もの事件関係者が登場しそれぞれの立場を述べるスタイルで戦後の庶民生活にスポットにあてた戦後史、宮部みゆきに『理由』を連想しました。
このスタイルでしかも「作中作」という技法を使っているのですから、叙述トリックのパズル型本格推理小説だ、どこに作者の仕掛けがあるかと丹念に読み、ラストのどんでん返しで騙される楽しさを味わおうと読み進めたわけです。
これが恩田の作風なのか、期待は全部外されました。ミステリーとしては欠陥商品というのが率直なところです。
登場人物全員が社会の構成員として生活していることの現実感が全くないところもオヤジ族が読む小説ではなさそう。
だがトリックを再確認しようと読み返してみました。すると何人もの登場人物の語りにはギクリとさせられる共通したものがあって、トリックの巧拙や縦軸である大量殺人事件の真犯人探しとは直接関わりがないのですが、全体を引き締め、読むものをとらえていることに気づかされます。つまり視点を変えて見つめますと、今の社会に密かに蔓延しつつある薄気味悪い状況について無理な解釈を加えず、きわめて率直に感覚的に核心をついていることがわかります。
なぜあの容疑者は人殺しをしたのだろう?なぜあの人は自殺をしなければならなかったのだろう?なぜ携帯電話だけでいとも簡単に心中ができるのだろう?不可解としか言いようのないゾッとする事件が毎日のように起こっています。欲望か嫉妬か怨恨かと殺人の動機を解釈したくなりますが一筋縄ではいかない事件が多すぎます。自殺や心中にしてもこれまでの「理由」の多く、耐えられない生活苦とか愛の到達への絶望とか、哲学的死などという解釈ではとらえようがありません。われわれの知っているあるいは予想する「生活の現実感」とは無縁なところで彼らは死を実行している。それが今日的現実なのでしょう。「何か理不尽なことが起きた時、人々は皆、理由を求めるのだ」しかしそれはフィクションにおいても説明しようがない。恩田はこの不気味な状況をそのまま描いたのではないでしょうか。
恩田は一つだけ受けとめようによってはかなり冒険的な示唆をしているようです。それは宗教にかかわることです。「神の啓示」、「悪魔の誘惑」。私には信仰心はありません。神と悪魔は表裏にあると考えていますから恩田の示唆を壮大だとして歓迎します。
「○○○は何かをしなければならなかった。何か大きな、重要なことを成し遂げなければならなかった。仕方がなかったのだ。あの事件が起きなければ、もっと違う、もっと大きな何かが起きていただろうから」
恩田は単に日常化した不可解事件だけではなくオーム真理教の無差別大量殺人を、さらには地球規模で拡散しているキリスト教対イスラム教の宗教戦争・テロまでも含めた得体の知れない恐怖・不安の共通性を言いたいのではないでしょうか。
「○○は幼い日、このブランコの上で誰かと取引をしたのだ。誰かが、ブランコを漕いでいる○○に、おまえの何かと引き換えに世界をやるがどうだい、と○○に話しかけたのだ」
「そして○○は取引に合意し、次の瞬間自らの手を放したのだ」
恩田には「マタイの福音書」があったのだろうと推定します。
そこには
「さらにサタンは、イエスを全世界が見渡せる高い山の神殿に連れて行き、地上の栄耀栄華を見せて、もしおまえが私にひれ伏すならこれをすべておまえに与えよう」
とあります。
うがちすぎかな。

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紙の本

真実の不確かさ

2020/01/10 22:18

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

ドキュメンタリータッチで進行していくために、語り手の思い込みに騙されてしまいます。事件の真相が闇に葬り去られていく、後味の悪さもありました。

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紙の本

謎は謎のままに終わるということを覚悟したほうが良い小説

2006/01/05 09:30

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る

石川県の名家で行なわれた祝い事の席で、毒物による大量殺人事件が起こる。後に自殺してしまった容疑者の動機は判然としない。また難を逃れた当主の娘は眼が見えず、現場にいながらも事件を目撃してはいない。
 それから十数年が経ち、事件の関係者たちは当時を改めて振り返るのだが…。

 人間の理知を超えた衝撃的な事件が発生し、その場に居合わせた人々による回想を積み重ねて事の次第を炙り出す。そんな手法で恩田陸は既に「Q&A」(幻冬舎)という大変面白い小説を物しています。本書「ユージニア」もその手法を踏襲していて、一つの事件を複眼的に描く、いわゆる「羅生門」スタイルの構成を用いています。

 しかし私は本書を「Q&A」ほどには楽しむ事ができませんでした。恩田陸は本書に関するあるインタビューで「『ツイン・ピークス』みたいな話」を考えていたと話しています。確かに「ツイン・ピークス」のような、ある閉鎖的な小さな町で<あやかし>の出来事が起こり、一癖も二癖もある登場人物が切り結んでいく、という物語の「ただならぬ雰囲気」はこの「ユージニア」の全編に漂っています。

 それでも恩田陸が目指した「ツイン・ピークス」が結局のところ、そういう雰囲気以上に味わえるものを与えてくれなかったのは、ひとえにあのテレビ・ドラマの関係者に、物語をしっかりと最後まで構成するだけの力量がなかったからです。構成のほころびを「謎が謎を呼ぶ」という言葉で言いつくろうだけで結局収拾がつかなくなったため、あのドラマは放送中止に追い込まれました。

 「ユージニア」でも残念ながら謎は謎のまま終わってしまいます。読者はもやもやとした思いと共にあえなく放り出されたという感を強くするか、それとも「謎が謎を呼ぶ」という永遠に終わることのない閉じた系の中でいっとき浮世離れした思いに遊べたことに満足するか、読者自身の選択に任される小説だというのが私の感想です。

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紙の本

スリリングな展開ではあるが。。。

2005/07/28 05:09

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:楽天的暴君 - この投稿者のレビュー一覧を見る

昔の凶悪事件の真相に3階層の時空間で迫るミステリー小説。独白チッ
クなインタビュー形式を経て語られる数々の登場人物から見えた真実。
次々に変わる登場人物を把握するまでは、読者は混乱を余儀なくされる。
こういう描写なら、おそらく結末はあれだろうと予測したが、見事ハズレだった。
個人的には読みが浅かったのかクライマックスに置いていかれた感があり、消化しきれなかったのが正直なところだ。

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紙の本

装丁に惚れました。

2006/09/06 00:16

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:由季 - この投稿者のレビュー一覧を見る

今月号のダ・ヴィンチが「祖父江慎の装丁特集」でした。いや〜装丁ってスゴイ芸術の賜物だよ!!!
中身より、装丁をどのくらい眺め褒め称えていたか(笑)
このユージニアは、全体のパニック状態と不思議な感じを装丁で表現。かっこよし。
中身はたいしたことないっていうか(笑)これからどんどん面白くなるよ!!謎がいっぱいでしょ!?それが何だったか知りたいでしょ!?!的な進み方が、もうムカついてムカついて。作者自ら、もう高度な展開とラストの壁をぐいぐいぐいぐい高くして、結局自分ではうまいオチつけられなくて放り出した感じ。つまんない!!!!!
これ読むんだったら、断然「Q&A」とか「ドミノ」だね。
でも装丁は最高☆

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紙の本

内容紹介

2004/12/17 19:23

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る

あの夏、青沢家で催された米寿を祝う席で、 十七人が毒殺された。ある男の遺書によって、一応の解決をみたはずの事件。町の記憶の底に埋もれた大量殺人事件が、年月を経てさまざまな視点から再構成される。ツイン・ピークスに着想を得、著者自身が自らの「ターニング・ポイント」として挑んだ長編小説。

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2005/03/04 13:41

投稿元:ブクログ

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2005/03/31 09:22

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2005/03/24 21:36

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2005/05/18 22:04

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