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紙の本
うなる、という結論ではない気がする。ただし、わたしは思いもしなかった。そうか、だからモナ・リザは気持ち悪いんだ、そう思った
2005/03/25 22:06
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
カバー・扉作品制作 北川健次、カバー・扉撮影 坪田大、装幀 新潮社装幀室。もう、いかにもこれしかない、というほどに決まったデザイン。ま、タイトルにあるように、モナ・リザを使う以上、ある程度の制約はあるだろうけれど、見事、といいたいくらいに決まっている。ただし、できすぎたデザインのせいか、意外性がないっていうのが問題だろうか。
実は、その意外性のなさ、というのがこの本の最大の特徴、といったら北川は怒るだろうか。ただし、ひねくれやの私のこと、貶しているわけではない。面白く読んだのである。せいぜい二時間もあれば読み終わるだろうという予想は覆され、かなりじっくり読まなければならないという羽目に陥ったのにはちょっと困惑したけれど、ふむふむと納得はしたのである。
この本、タイトルから「モナ・リザ」だけを扱ったものだとばかり思っている人がいるといけないので、目次を引用しながら断っておく。まず書きおろしの表題作「「モナ・リザ」ミステリー」がある。本文183頁中124頁だから、当然メイン。その次にダリを中心に、ピカソ、デュシャンを語る「停止する永遠の正午 カダケス」がある。
その次に、なんと私の大好きなフェルメールを扱った「デルフトの暗い部屋」が続く。そして、あとがきにかえて「「モナ・リザ」遺文、参考文献で終わる。ちなみに、「停止する永遠の正午」は1996年の「新潮」に掲載された文に加筆、「デルフトの暗い部屋」は2001年の同誌に載った作品に手を加えたものだそうだ。
で、一応、断っておけば、北川健次は現代版画家であり、私の印象では彼は写真を上手く利用した現代的版画、或いはオブジェを作る人で、その感心はかなり文学、或いは哲学的なもので、彼の最近の代表的な仕事にはくりかえしカフカの肖像写真が使われている。そのシャープなモノクロの世界は、ヨーロッパ文学が好きな人間であれば思わず手にしたくなるようなものばかり。
私は、冒頭に意外性がない、と書いた。詳しくは述べないけれど、基本的には北川と同じ結論に達した先人がいる。それを北川は隠さずに書く。ただし、結論に至る経路は、同じ部分もあれば異なるところもある。その違いが北川の職業によるものであることは、この本を読めばよく分かる。だから、驚きは、ない。ただ、読んで納得する、そういう説である。
特に気に入った点を上げておこう。モナ・リザについて北川は世界で最も美しい女性の絵、と一度として書かない。無論、それは北川が出す結論故のものかもしれない。しかし、私は自分がモナ・リザを一度として美しいと感じたことはなく、むしろ薄気味悪いなあと思っているだけに、多分、北川の見方も私と同じに違いないと信じたい。
彼はモナ・リザについて「レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた美術史上もっとも謎めいた絵画といわれる」と書く。そして七つの謎をあげる。
1、モデルは果たして誰なのか?
2、描かれた時期は何時なのか?
3、絵の注文主は実在したのか?
4、背景に描かれた現実とかけ離れたような幻想的な風景は、何かの暗喩なのか?
5、下腹部が僅かに膨らんだ妊婦と覚しきこの女性の着衣が、なぜ黒衣の喪服であるのか?
6、口元に浮かんだ不気味ともいえる微笑の意味は何なのか?
7、そもそも画家は、この絵に何を描こうとしたのか?
そして、この疑問に全て答えを与える。一つ一つの答えには、過去に似通った例があり、最終的な結論も同様。ただし、ここまで総合的に論じた例はないかもしれない。だから、意外性はないけれど、納得できる。
むしろ、私にとって、意外性という点では「停止する永遠の正午 カダケス」のほうが上かもしれない。昔好きだったダリ、今、改めて感心しているピカソ、今でも大嫌いなデュシャン、この三人が意外なことに結び付く。北川の発見をヨーロッパの人はどう受け止めるのだろう。
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