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紙の本
津原がその力を発揮し始めるのは、この作品以降ではないでしょうか。でも、この架空の都市の崩壊を描く手腕は、文章共々中々のものです
2006/09/25 20:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「頻発する少年達の犯罪。容疑者の少年達に犯罪を指示したというトレチアとは。埋立地に作られた人工都市緋沼サテライトの伝説」幻想ホラー小説。
個人的には、この小説以降の津原作品が好きです。幻想味とちょっとユーモアも混じるようになった、今の作風。でも、この人の本領は、ホラーにあるんでしょうね。ただし、単に恐いお話かっていうと、幻想的な要素がしっかりしています。ま、ファンタジックでないホラーなんて、実際にはありえないんでしょうが・・・。
埋立地に作られた巨大な人工都市緋沼サテライトですが、今、この都市に崩壊の兆しが現れています。
一つは住民の心の中に。特に子供たちの残虐な犯罪が。そう、子供たちへのではありません、小学生たちによる動物の殺害、成人女性への残虐行為、あるいはホームレスへの攻撃がそれです。彼らを犯罪に導くといわれるトレチアとは何でしょうか。
そのトレチアの伝説は引き継がれ、かつてトレチアに導かれ罪を犯したものたちに、新しいトレチアが制裁を加え始めるのです。謎の言葉「キジツダ」。襲われ病院に眠る竜介。彼と仲間となって犯罪に手を染めた崇。その妹で、夢ではちまん池に生きる謎の魚 まからを見るあかね。幻獣は存在するのでしょうか。
もう一つは、物理的な崩壊の話です。都市の風景を、静かにフィルムに収めるのは佐久間七代です。精神安定剤を飲みながら135キロの巨体をダイエットして落としつつある七代がフィルムにおさめたあかねの姿。その七代と語り合う蠣崎旺児が告げるのが、緋沼サテライトの持つ構造的欠陥です。
話は都市伝説を中心にしながらも、東京都緋沼市新興衛星住宅団地、通称緋沼サテライトの崩壊を描く小説でしょう。だから、血みどろの描写ですらあまり、グロテスクにはならず、犯罪も重い意味をなさしません。むしろ聖書の世界を見るような、ある意味黙示的な感すら漂うのです。
暗い、湿り気のある、いつも夕暮れのような不思議な団地の風景。視点を様々に変化させながら、何かが浮かび上がってくるさまは、なかなかの描写力です。小説なかに綾辻行人や小野不由美のことが実名で入ってきたりと、作品の構造も凝っています。
津原やすみ名義のジュニア小説を書き、1996年でそのジャンルから引退、現在の名前で幻想小説などを発表し始めたそうですが、いい作家が大人の小説世界にやってきてくれたものです。1964年生まれといいますから、私の大好きな女流黄金の世代に、また新たな星が現れたという感じです。
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