紙の本
あの天才が原点に戻ってきた、それだけでも凄いというのに、このパワーアップぶりは。それにしても30年ぶりというのは、ご立派
2005/06/25 22:31
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
変な始まり方で恐縮だけれど、最初に、山田正紀のあとがきから引用しよう。
「その結果、自分では「カッコいい」SFに回帰できた、と思います。(中略)どうやらブーメランは三十年かかって、またぼくのもとに戻ってきたようです。もうぼくにはあまり時間がない。戻ってきたブーメランをすぐに投げ返したいと思います。SFに、ミステリーに、時代小説に、そのほかありとあらゆる素晴らしい小説に向かって・・・・・・行ってこい、そして帰ってこい、僕のブーメラン」
そう、私が山田の天才ぶりに驚いたのは、彼に『神狩り』という作品があることを知ったときである。その作品は、1974年、24歳の山田のデビュー作として出版されたという。私がそれを読んだのは何時のことか、内容ともども忘れてはしまったけれど、ここに天才がいる、という衝撃だけは頭の中に残った。何といっても『神狩り』である。これほどに挑戦的なタイトルを思いつくだけでも、エライ。
その作者が自身をもって、自信の天才振りを初めて人前に見せた世界に戻ってきたと宣言する作品。SF japan vol.4掲載の「神狩り2 リッパー 第一部」約200枚をベースに書き下ろし、1600枚は書いたという原稿を1100枚まで削った作品で、3年をかけてしまったという。しかも、カバーは「あの」生頼範義「我々の所産」である。期待するな、というほうが無理だろう。
で、目次の前に、前作『神狩り』あらすじ、というのがあって、私はこれを読み過ごしてしまったけれど、できれば読んでおいたほうがいいかもしれない。勿論、ベストは前作を読んで、今回の作品と言うことになるけれど、なんと言っても30年である。取り巻く世界も、私たちの認識も変わった。(ま、相変わらず日本は神国、天皇は神、という明治期に生まれた根拠薄弱な認識を変えずに、私たちを戦争に狩り立てようという頑迷な人たちも、それに影響されている人たちも健在だけれど)。気にせず、独立した作品として読んでもいい気がする。はい、私、前作を読み返さなかったけれどお釣が繰るくらいに楽しみましたです。
プロローグで早速、凄い光景が読者を待っている。沖縄の宮古島のレーダーサイトが捉えた未確認飛行物体の知らせに、日本側への情報提供をしないままに緊急発進をした二機のF-2戦闘機が見たのは、長いサフラン色の髪の毛と、軽やかな純白の衣をなびかせ、四枚の翼を優雅に波うたせて飛んでいる・・・・・・
ということになる。でタイトルの『神狩り2』の横に小さく書かれた「リッパー」だけれど、それは「赤い色」ということになる。
話は大きく三つ。一つは、高速道路でワゴン車と銃撃戦を繰り広げることになる安永学と江藤貴史。一つは、連続する一家殺人事件を担当する西村希久男、警視庁・第二強行犯捜査三係所属の警部補。最後が、その現場で西村が見かけた27歳の女、理亜であり、彼女と13歳違いの牧師・富樫ということになる。
勿論、これらは最初からまったく独立した流れではなく、安永学たちと西村、西村と理亜、理亜と江藤、と言った具合に繋がっている。で、ちょっと短絡的に言えば、その要の位置にいるのが島津圭介ということになる。S大学大学院の情報工学科に属し、天才と呼ばれながら、あまりに人々の先を歩んだために理解されず、《古代文字》の研究に打ち込み、そして忘れ去られた男である。
ハードな活劇が壮大なイメージとともに、展開する。決して観念論的なSFではない。まさに冒険SF小説である。しかも、重厚。扱うのは最新の脳科学に裏付けられたヴァーチャルな、人類史の謎に迫る、ある意味、宗教的な香すらする世界なのだ。まさにパワーアップ。それは主人公の一人が最後に発する絶叫に繋がる。
山田の歩みは、もう一人の天才神林長平を思わせずにはいない。あと十年でこの二人が何を生み出すか、楽しみである。
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作家の中の作家「山田正紀」が23歳にして衝撃のデビューをなした「神狩り」。その28年目にしての続編。これは、もはや多言無用。これを読まずにどうするの?
神、脳、クオリア、天使、ナチス、公安、米軍、死・・・・・そして、かつていかなる文学宗教思想も到達し得なかった局面へ!!
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「『神』はすなわち『隠れた神』であって、人間の脳構造、視覚構造は-遺伝的に-神を見ないように作られている」一方、「“現実”の外部のどこかに、…一望監視装置(パプテイコン)がはるかに聳えたっているのだろう」。「触れてはならないものに」に触れてしまったとき、「『神』が許せない」こととなるのか。「神狩り」から30年、この本は「カッコいいSF」だ。極めて面白い。
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山田正紀のデビュー作「神狩り」の出版から30年の記念作だそうです(笑)
前作の登場人物も見事に30年の年月を経てしまっております…前作の、あのカッコ良かった主人公も…造物主(ダマサキ)は本当に容赦ないです(涙)
いやもう素直に面白かった〜☆
久しぶりに読み応えのあるSFを読んだ!って満足感で一杯です(笑)
てか今まさに、ワタクシの元に遅い韓流ブームが来ましたか?来ましたね?(誰に聞いてますか)
安永学(アンヒョンハク)超カッコいいーーーーーーー!!!!(絶叫)
スターウォズ柄のアロハを着た裏稼業チンピラって何ですかソレ!むっちゃ最高なんですが!?
実はキリスト教徒で首から十字架下げてたりするトコとか(韓国はキリスト教徒が多いんですよね…4割でしたっけ?)外見に合わずかなりのインテリなトコとか、ワタシの好みにストライクゾーンどころか頭部デッドボールばりに直撃です(爆)
日本人のオタク風ヒョロ長学者青年(27歳童貞)との、ほのぼのとした掛け合いも面白いです〜(号泣。何故泣く)つかこの2人キャラが立ちすぎ!……うっかり萌えるトコロだったじゃないですか;(自爆)ふー…危ない危ない。神の作品では萌えられぬ(何そのこだわり)
ストーリーは、えー……神様を狩る話です(爆)前作「神狩り」では、タイトル程は狩ってるカンジはなかったような気がしますが、今回はかなり頑張って狩ってます(?)敵は人間だったり神様だったり天使だったりですが、その辺は山田理論で押し切ってるのでファンタジーっぽくはないです(笑)
読んでいると場面が映像になって浮かんでくるような、何と言うか「絵になる小説」だと思います。
途中途中の世界観説明を上手いコトやれば、マンガ映画に向いているような気がします(笑)
機神兵団以来の映像化作品(←女囮捜査官もありますがジャンルが違うので;)になりませんかねぇ…。ファンタジー全盛の世の中ですが、ワタシはSFが大好きなんだー!!!
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著者自らあとがきで書かれているように、かつての彼のSF小説はカッコよかった。「神狩り」に始まり「デッド・エンド」「宝石泥棒」などなど高校、大学の頃、痺れたものである。残念ながら、今作は本人が思っているほどカッコよくない。多分、10代のおいらが読んでも痺れたりはしないだろう。
なんだか文章が粘っこいし、理屈っぽい。理屈っぽいっていうのはSF小説の常套なんだろうけど、仮説からフィクションに至る過程があまりに強引で、ちょっときつかったです。それに、結局は神を狩るわけにはいかないので、こんな風に終わらざるを得ないのも判るけど、前作はその様がもっと潔かった気がするんだけどなあ。
それと、どうなんでしょう。1970年代後半以降の優れたSF漫画や、近頃のCGを使った映画などにより、小説という手法でSFを語るのが段々難しくなっているような気がする。文章から初めて喚起されるはずのイメージが既に画や映像で描かれてしまっているような、そんな難しさです。
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前作が神の実在の理論化だとすれば、今回は神に対抗する手段の理論化。前作が理屈を超えたセンス・オブ・ワンダーだとすれば、今回はそれに理論付けを試みるハードSFだったなという印象。つまり30年前の作者のイマジネーションに、科学がようやく追いついたということか。人物造形だとか物語の盛り上げ方など不満はあるが、よくぞ書き上げてくれたなぁという感慨のほうが大きい。
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知的好奇心が大いに刺激された。私の理解の範疇を超えることもあったけれどもね。けど、何より読んでておもしろかった。
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前作より評価を下げる人が多いようだが、最近2作を続けて読んだ向きから見ると、十分に成り立っていると思う。
小説としてはストーリーの動きが少ないが、脳科学のトピックに、日本的に宗教解釈を当てはめていく試みには素直に賞賛を送りたい。
続きをまだ書ける気力があるかな。
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作品解説(帯より):人間の脳は、その主たる機能は――、人間に対して事実を隠蔽することにある。そう、《神》を隠すために……。 デビューのその瞬間、すでにして日本SFを代表する名作であることを証明した、前作『神狩り』。あれから30年。読者はもう一度、あの衝撃に出会うことができる。
作家生活30周年記念作品
全体を通して複雑な事象を説明する際に噛み砕いて説明しているのだが、噛み砕きすぎてかなりテンポが悪くなっている。理解するまで何度も同じ個所を読まなければならないという影響もあるのだろうが、1600枚の原稿が1100枚に削減されてなお長く感じる。
哲学好きにはたまらないだろうが一般受けはしそうにはない。「神狩り」という名のバトルアクションが少なくラストも曖昧だが、「神の存在」を哲学的に証明しうる段階(聖言語障害の章)は前作同様面白い。
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1の言葉の構造から神の存在を知るというのもよかったけど、今回の、脳は神を隠ぺいするためにある…とか、記憶は体と別のところにあるという発想も面白かった。最後はちょっとドタバタで終わりだったのが残念だけど、まとめようがないからしょうがないか。
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脳の扱い方が面白い。何かを把握すると言うよりも把握させられているとでもいうのか~しかも神という監視付きで…。