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紙の本
索引からご覧ください─「通貨から見た現代史」
2005/02/21 10:44
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投稿者:谷口智彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は通貨と通貨体制を題材にしながら、数式はおろか、こむずかしい経済学は一切出てきません。そのかわり、ニクソンショック前後のドラマや、かの偉大な経済学者ケインズが大英帝国を背負って米国と渡りあった戦争中の大会議の話は、「見てきたように」書いています。通貨から見た現代史の試みです。
死んだ人に鞭打ってしまってもいます。一九七一年八月世界を驚かせた「ニクソンショック」とは、実は完全に予見可能なものでした。ドイツが被りつつあった状態、米国内の激しい議論に目と耳を傾けていれば、必ず準備しておくことができたものです。それがなぜ、わが官僚諸氏には全く見えなかったのか。
通貨とは、権力が作る、権力のみが作ることのできる、特殊な商品です。権力なきところ、通貨なし。この素朴な、しかし緊張に満ちた現実を忘れていると、再び何か「ショック」に見舞われないとは限りません。ドルは、米国という地上最大の権力が生み、維持している通貨です。ドルの行方を読むことは、米国の政治、権力意思が国内外でどう動くかを見て、初めて可能になるものです。
通貨体制とは「覇権分析」を経てこそ論じることができるものだという、強い信念に動かされるようにして、書いてみました。動機のひとつは、米国の覇権とは何か考えようとすることです。日本はその米国と、どんな立場に立つのが望ましいのか、考察しようとすることでもありました。グルジアや、ジブチといった辺境からみえるドル体制——。通貨と権力の織りなす現代史をお楽しみ下さい。
同じ理由によって、中国通貨・人民元を経済「だけ」から見ようとすることほど、事の本質を外してしまう議論はないと言えます。中国共産党分析を伴わずして中国経済の将来を論じることはできず、まして人民元の行方を予測することなどできない——。そう立場を据えて書かれた人民元論議は、その当否は別としてこれまでなかったものでしょう。
まずは索引をめくってご覧になってください(そうです、この本には索引がついているのです!)。登場人物の多彩、扱う事象の幅にご着目のほどを。
通貨とは権力の自己表現であって、時として燃えたぎる何かを体現したものだというなまなましい実感を共有していただけたなら、著者の喜びこれに過ぎるものなしです。
著者 谷口智彦
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