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紙の本
裁き手のいない花園
2007/06/21 21:54
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
学友で、今はロンドン郊外のレイズ体育大学で学長を務めるヘンリエッタの招きに応じ、学舎を訪れたルーシー・ピム。ふとしたきっかけで出版した心理学に関する著書がベストセラーとなり、にわか権威に祭り上げられたルーシーにとって、旧友との再会は楽しみだった。 居心地の良さに長居して、卒業試験監督まで引き受けるが、試験中ある学生のカンニングを目撃。この事件を未遂に防いだルーシーだが、学園では次々と事件が起こる。真犯人は誰なのか?
シリーズ探偵アレン・グランドが登場しない、長編第3作目。
カンニング未遂、不可解な選抜選考、そして或る女生徒の死。
「制服の下の狂気」という、女学生ものにはありがちなモチーフが登場し、物語はコミカルな前半から中盤、終盤と次第にシリアス味を増してゆく。
本書でも、ジョセフィン・ティが固執した「冤罪」のテーマが凝った形に変えて隠されている。ティ作品では、主人公グラント警部に、王位継承者を暗殺したとされるリチャード三世の無実を証明させようとした、『時の娘』がつとに有名だ。ティは本作でも、登場人物の一人であるラックスに、シェークスピアの『リチャード三世』を「高潔な人物を誹謗中傷する馬鹿げた戯曲」と言わせている。
だが、邦題の「裁かれる」というのは、内容に則していない。何せ、普通ならもっと早く真相に気づいていなければならない主人公が、ラスト近くで、「私は何もわかっていなかった」と悟るのは、ミステリでは異例と言って良い。そして、事件の真相に気づいた人間はいるが、当の知り得た人物は、真犯人を公的に断罪していない。裁く人間がいないのだから、裁かれる人間もいない。よって、「謎は全て解け、罪人は捕えられる」というお馴染みのラストによるすっきり感がないので、本格ミステリファンには、ティ作品は向かないかもしれない。
その代わりといっては何だが、人物造形には見所がある。
学園に対して何の先入観も持たないが、人間心理には詳しいミス=ピム。この「まれびと」の視点によって、我々は物語世界を見てゆく事になる。
学園にやってきた無味乾燥な生活を送っているように見えて実は満ち足りているキャサリン=ラックス。一見軽薄だが人の本質を見抜くナッツ=タルト。容姿はプレイボーイ風なのに思慮深いリチャード。彼女達の描写には、学生、教師として長年体育大学で過ごした経験が生かされている。
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