紙の本
本格推理にリアリティがなくていい、なんていわれると、あんた考え間違ってんじゃあないの、そんなこと言う前に面白い小説をお書き!って言いたくなりません?
2005/08/09 21:29
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回は目次を飾る「教師」と「刑事」を紹介します。まず教師ですが、名前は辻恭一、結婚して八年、奥さんの名前はひとみ、二人の仲は冷え切っていますが、その原因というのが、恭一が自分の勤める高校の生徒に手を出してしまったことです。この三年間、二人は同じ家に住んでいるだけの生活を送っています。そして、ひとみが姿を消しました。これが一つの事件です。ちなみに、登場人物の年齢が特定されないのが、この話の特徴ではあります。
次は刑事です。蝦原篤史、奥さんの名前は和子。再婚で、前妻とのあいだに設けた娘二人は静香、亜美、この二人は珍しく年齢が出ていて18と16、ただし話の中ではチョイ役です。こちらは夫婦仲もいいし、娘たちと新しい母親との関係も良好です。で、ある日、和子の死体がラブホテルで発見されます。そのとき、篤史は自分の仕事に絡んで汚い取引をしていました。
大技があります。それをどう見るかで、この作品への評価が決まります。ちなみに、私は同じミステリマスターズシリーズの歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』を思い出しました。多分、これと似た評価が下されるのでしょう。ただ私などは中町信『新人賞殺人事件』、或は逢坂剛『水中眼鏡の女』の切れ味のほうに軍配をあげたい、そうとだけ言っておきます。
で、気になった点が一つ。といっても、トリックの話ではなく登場人物の性格についてです。私は今、天童荒太『幻世の祈り』の五部作を読んでいるのですが、それに巣藤浚介という高校教諭が出てきます。ともかく、女と見れば心が騒ぎ女学生を見れば下半身がうずく、それでいて現実を見ようとしないどうしようもない男ですが、この愚かものと辻恭一がかぶるんですね。年齢や性格、社会との距離のとりかた。
ま、学校の先生というのがいかに世間知らずであるか、というのは大学教授あたりの話を聞いたり、本を読めばすぐ分ることですが、これが実際か?あるいは、男性作家の願望か?と正直、作家先生たちの姿勢を疑いたくなってしまいます。それに比べれば、まだ蝦原の粗暴さのほうが好ましい。
で、リアリティの話になってしまいます。我孫子がミステリに登場する人間に何を求めているか、それは難しい文章で正直、辟易したくなる「物語・世界解釈・アイデンティティー 我孫子武丸作品をめぐって(岩松正洋)」に詳しいので、読んでいただくとして、でも私はリアリティのない話は所詮、読むに値しないと思うのですね。逆に、どんなにシリアスを装っても、あまりの奇麗事や大げさな悪事には、ケッ、で終わってしまいます。
で、この最近の小説に頻繁に登場するダメ男ですが、どうもこれは世の男たちの甘えではないか、そういう気がするのですね。だって、そういう男を描くのは殆どが現在40代以下の男性作家です。でも、私の周りには、そんな男、殆どいません。ま、教師たちは屑ですね、とくに校長や教頭。でも、余に多いと、現在の殺人報道もですが、バイアスかかってんじゃあないの、結局それって社会に無力感だけを与えるよね、そう思うのです。例えばこれと古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』を読み比べると、文章の力はかくも違うのか、そう思います。
岩松正洋の解説はとてもためになります。ただ、博覧強記ではないですが、しなくてもいいような引用で読者を圧倒しようとするのはどうでしょう。いかにも、らしいマニアックな人の名前をバンバン出しますが、いかにも「お前ら知らないだろう」とばかり名前を示す、そんなケレンをみせる必要は全くありません。言っていることは簡単で、それでいて目からウロコものの立派な論です。私もエラソーなことは言えませんが、文章は人格の表れ、虚勢を張るのはやめましょう。
投稿元:
レビューを見る
「殺戮にいたる病」から13年ぶりの書下ろしということです。長編と言うけどちょうどいいくらいの長さでサクサク読める感じでした。
愛する妻を殺された上に、汚職の疑いまでかけられたベテラン刑事の蛯原。妻が失踪し、途方に暮れる高校教師の辻。この2人が否応なく事件の渦中に巻き込まれていくのだけど、やがてある新興宗教団体の関与を疑い、ともに捜査を開始することになるのだけど……。
待ち受けるのは唖然呆然、驚天動地の大破局!
ってうたい文句の本。なるほど、すごい結末だった。。。だったけど、どうしたものだろう。なぜか驚かないのです(^^;。頭では結末を驚いているのだけど、感情で驚かないのです。これはどうしたことでしょう?
あまりにあっさりと、結末が提示されたからでしょうか?サクサク読めたのはいいのだけど、どうも、こちらの感情が追いつく前に(もしくは感情がどっぷり浸かる前に)次の展開をされたみたいな感じ。
アイディアとしては面白かっただけになあ。「このミステリーがすごい」で20位以内くらいかな?(^^)
投稿元:
レビューを見る
この人の人形シリーズとか結構好き。
で、宗教がらみのこの本。
あまり男の人達は好きになれず・・。
なんて自分勝手なんだと・・。
思っちゃうね。
最後はやられたなーと思った。
投稿元:
レビューを見る
高校教師、辻の妻が失踪した。彼の家庭は崩壊寸前だったので辻はあえて失踪の届けを出さなかった。一方、刑事蛯原の妻はラブホテルで死体で発見される。
二つの話が交差して二人が協力して、そして大団円。
結局、みんな弥勒様の掌の上で転がされていたのさ、という結末
投稿元:
レビューを見る
宗教を扱っている話の割りにう〜ん、終わりがいまひとつ納得いかないです。難しい微妙なテーマだったのかも。
投稿元:
レビューを見る
ただの警察ものとは違います。
宗教研究(?)が趣味の私としては、こういう宗教絡みのミステリはたまりません。
二つの事件があるときから絡み合います。
宗教団体に潜入した高校教師が、だんだんと宗教に取り込まれていきます。
しかし刑事の活躍もあって、宗教団体の化けの皮をはがすところまでくるのですが・・・。
結末がなんとも良いです。
かなりひねってあります。
こういう結末も、ありかなと。
本格ミステリを望む方は、肩透かしを食らうかもしれません。
でも、こういうの大好きです。
投稿元:
レビューを見る
これはまた、、。うーん。宗教に計らずしも関係した人たちの話なんだけど。なんか出来事に関連性がなくて、あんまりしっくりこなかった。
投稿元:
レビューを見る
図書館から借りてきました。
話題になってたし、面白いかなーと思ったんですが、後味があまり良くなくて個人的にはショック。
ミステリーでもサスペンスでもホラーでも、悪人はばっさりやられて欲しいタイプなので…。
一応ミステリー、なのかな?
内容的には犯人とかもびっくりするような感じではありましたが、やっぱり最後が納得いかないというか何というか。
我孫子さんの本はこれが初めてだったのですが、全部こんな感じなのかな?
投稿元:
レビューを見る
この解決編……けっこう異色だなあ、と思ってしまった。まさかまさか、こういうオチでしたか~。もちろん、詳しく述べるわけにはいきませんねえ(笑)。
主人公二人が何だかな……妙に気に食わない気がするのだけれど(たぶん女性から見ると好感覚えないキャラだよねえ)。物語としてのリーダビリティは抜群なので、あまり気にならなかった。ラストも……こういうのは嫌いじゃないしね。結果、綺麗に騙されました、と。
投稿元:
レビューを見る
続きが気になって一気に読んでしまった。
感想はおもしろかった・・・、とは思うが、少々ラストが物足りない気がする。
うまく落としているなぁとは思うし、あれ以上のオチはないのかもしれないけど解決編が短すぎて、あれ?もう終わり?という感じが否めない。まあ、ネタバレしたあとにくどくど書くのも興ざめなのかもしれないけど。
投稿元:
レビューを見る
妻を殺され汚職の疑いまでかけられた刑事。失踪した妻を捜して宗教団体に接触する高校教師。錯綜する事件、やがて驚愕の真相が…。書き下ろし。我孫子武丸スペシャル・インタヴューも収録する。(amazonより抜粋)
投稿元:
レビューを見る
最初から読者を騙すために書かれてあるので、ある意味、当然の結末ではあろうが、突飛過ぎて私的には好みでなく、面白くなかった。
ただ、途中までの新興宗教のくだりは興味深かった。自分は騙されないと思いつつも、宗教に嵌まりかけていく教師の様子がリアル。全く同様の経験があるだけに(私は嵌まらずに逃げたけど)、背筋が寒くなる思いだった。
投稿元:
レビューを見る
辻恭一は高校の教師をしている。ある日、帰宅すると妻の姿がない。実は三年前、生徒と不祥事を起こしてから夫婦仲は冷え切っていた。
ついにこの日が来たかとほうっておいたところ、妻の友人の出した捜索願によって警察がやってきた。あろうことか妻殺しの容疑をかけられているらしい。
刑事の蛯原篤史は元ヤクザとの癒着を疑われていた。そしてある日、蛯原の妻がラブホテルの一室で殺害されているのが発見された。
妻の行方を捜す辻と妻の仇を捜す蛯原は新興宗教団体<救いの御手>に辿り着くが、その矢先辻の妻の遺体が発見される。
二つの事件の驚くべき関係とは?
我孫子さん、2作目なんですが今回も驚きました!真相!そうなの!?です。
あ~、びっくりしました。でもなんかあっさりって感じです。
残りページを見るとまだ残っていたのでもう一捻りあるかと思いましたが。
残りはインタビューとかだったのですね。
もうちょっとじっくり描いてもよかったのでは?ちょっともったいないと感じました。
いや~、釈迦の掌ならぬ弥勒の掌ですか。まさに。
でもそれにしては救いがないんですけど。。。
投稿元:
レビューを見る
よくできたミステリ。
でも、やたらすごいという評判を聞いてから読んでしまったので、そこまで期待したほどではなかった。
シンプルな大仕掛けで、面白い。
投稿元:
レビューを見る
文庫版が、数年前本屋さんに平積みしてあったけど「宗教団体を扱う本格小説!」みたいなふれこみで、中身と全然違った~ 解説がとても面白かったです(引用参照)