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星の歌を聞きながら みんなのレビュー
- ティム・ボウラー (著), 入江 真佐子 (訳), 伊勢 英子 (絵)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:早川書房
- 発行年月:2005.3
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紙の本
老人にむかってYOUという、これを「おばあさん」と訳すか「あんた」と訳すかで、言った人間が悪人かそうでないかがよくわかる。で、この本の最大のミスは訳者のセンスだと思うんだね
2005/07/24 20:44
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
原題は STARSEEKER で、これから日本語の題が出てきたのでしょうが、まず何処に星があるんだ、ルークは夜空だって見上げることはないぞ、などと思ってしまいます。
分からないのは、主人公の悪ガキが最愛の人間を失ったから不良になることを選んだという部分です。引きこもる、これなら分かります。自分の音楽上の師を失ったから迷う、それも理解できます。で、不良?わかんねえよ。しかも、そこまで世を拗ねながら、せっせと音楽のレッスンには通うのです。しかもルークの言葉遣い、これが酷い、というか矛盾だらけ。これは翻訳者のセンス、それをそのまま放置する早川書房の問題でもあります。
私がなぜルークを悪ガキと書くか、その原因が彼の言葉遣いにあります。14歳の少年は、不良仲間であるスキンを恐れ、彼に殺されそうになると思いこむ一方で、友だちであるミランダをの演奏会での発表に協力します。そして、父の死後も音楽の師であるハーディング先生のことも、父親ほどではないまでも大切にします。そう、ここに見えるルークは、あくまで不良に巻き込まれたた善良な少年です。
しかし、実際にはルークは苛められて、或いは誘われて不良になったのではなく、自らすすんで悪の道に走ったのです。しかも、少年は仲間の犯罪に協力することはあっても、拒絶することはないし、警察や周囲の大人に気持ちを告げることもしません。ただただ逃げる、自分の罪の発覚を恐れるだけで、不良の目をかわすのにあろうことかミランダを利用したりします。もし、不良が彼女に襲い掛かったら、というような頭はありません。
彼は、忍び込んだ家の少女に「こんばんは」というくせに、その少女を前に老婆に向かっては「おれはこの子になにもしないよ」「なんでみんなでおれのことを話してるんだよ」と恫喝し、それは後半でも「だまれ」「なんだと」「あんたはおれは押し入ってないっていったら、警察はなんていった」と続いていきます。
ここで「あんた」「おれ」とあるのは、原文では単に YOU であり I であるはずです。もしそれが「おばあさんは」「ぼく」と約されたら、どうでしょう。少なくとも、ルークは愚かではあるものの決して粗暴な少年ではありません。だから、自分の母親にだってその愛人にだって、ちゃんとした口をきいています。独りの孤独な老人に「あんた」であり「おれ」は、どう考えても似合わねー、です。
それなら、なぜ自分を見捨てて愛人との生活を選ぼうとする母親に「あんた」あるいは「お前」と呼びかけないのでしょう?いやそんなことのできない少年なら、なぜ老婆にむかっていつもでも「あんた」といい、娘を失って哀しんでいる両親に「だまれ」「なんだと」というのでしょう。
反抗期の少年の言葉なら真っ先に矛先が向けられるのは、常識的に家族です。その家族を破壊しようとする愛人であってもおかしくありません。しかし、そこには当たり前の言葉遣いで、弱者には乱暴?天童荒太『幻世の祈り』(『家族狩り』のリメイク版文庫)に亜衣という少女が出てきます。彼女は、本当は優しい子ですが、言葉遣いは外に対するのと対照的に家族に対しては乱暴です。話自体にリアリティは感じませんが、少なくとも亜衣の言動には説得力があります。私も、そうでしたから。
それに比べれば、ルークの言動は滅茶苦茶でしょう、いやその訳文がいい加減なのです。人間の矛盾は、若さ故、で補えるかもしれません。しかし、あえて結婚などしなくてもいいのに、再婚を選ぼうとする母親や、子供の心そっちのけで父親の座に座ろうとする恋人の存在、しかも彼らが善意の人である、とする話自体が実テキトーです。全体としてミスマッチが際立つ本、それが私の印象です。
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