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政治哲学 みんなのレビュー
- デイヴィッド・ミラー (著), 山岡 龍一 (訳), 森 達也 (訳)
- 税込価格:1,870円(17pt)
- 出版社:岩波書店
- 発売日:2005/03/01
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紙の本
いい本に巡り会うということ
2007/07/04 19:54
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
キョロ、キョロ。
「ん?どうしたね。遠慮しないで入りたまえよ」
「あ、美良先生、こんにちは。僕、出人といいます。ちょっとのぞきに来ました」
「ほお〜、よく私の名前を知っているね」
「名札に書いてあるじゃないですか。ところでここ、あんまり人がいませんね」
「まあね。カビの生えたような思想史をあまり重視しない、理論寄りの政治哲学は、日本ではまだそんなに盛んではないからね。これからじゃよ、これから。どうかね、君はこの講義を受けてみる気はあるかね」
「う〜んと、まだ迷っていて・・・それで、どんなことを学ぶのでしょうか?」
「それなら、この本を貸してあげるから、読んでみてから判断してはどうかな」
「えっ、『1冊でわかる』のか。ふーん、すごいなあ。じゃあ、遠慮なくお借りします。ありがとうございます」
「待ちなさい。宿題を出しておこう。君は政府がいろんな活動をすればするほど、個人の自由は減少すると思うかね。この本を読んで考えてきてくれたまえ」
「あの、まだ選択すると決めたわけではないですけど・・・一応考えてきますね」
「先生、この間はどうも。相変わらず人がいませんね」
「君の気にすることではないよ。それでどうだったかな、感想のほうは」
「分かりやすかったです。コンパクトな本なのに、基礎的なことから最近の話題まで幅広くカバーしていますね。それなのに、たくさん人名がでてこないのがいいですよ」
「そうじゃな。この本にはフーコーやハーバーマスやアレントはおろか、ニーチェもヘーゲルも出てこない。それなりの扱いを受けているのは、ホッブスとミルくらいなものじゃ。歴史上の人物が何を言ったかを学ぶことにも意義はあるが、著者は分析哲学の流れを汲んでいることもあって、われらの生活世界により密着した主題を哲学的に洗練させて考えるのじゃ。形而上学的な哲学とは一線を画しているということじゃな。先人からの引用は最小限だが、決して独りよがりにはなっていない。ここでは登場しない人も含め、多くの思想家達の成果を批判的・発展的に吸収しながら、自分のテキストとして書いているね。入門書の中でも比較的やさしい部類だろうが、中級者が読んでも得るところがあるだろう」
「そうですか。キツネ狩りは是か非かなんて話も面白かったですね。政治哲学って、難しい言葉をこねくり回してるお堅いだけの学問かと思ってましたが、けっこう身近に感じられました」
「かといって、卑近なケースだけを取り上げるわけでもないがね。それで宿題はどうだったかね」
「はい、初めは自由を妨げるほうに働くと思っていました。でもこれを読んで考えが変わりました。医療などで、コストがかかるから不可能だった選択肢が、政府の活動により僕たちに与えられることで自由が増加するということがあるんですね」
「そのとおりじゃが、それが最終的な結論というわけでもない。政府がわしらの自由を制限する例は依然として多いし、それをどのケースなら、どの範囲までなら正当化できるのかは時代によっても違う。永続的な課題じゃろうな。この本に書かれていることが全て正しいわけでもない。君らが議論に加わってくれるのを待っているのじゃ」
「奥が深いですね。この本のおかげでいっそう興味が湧いてきました。なんとかついていけそうな気もしますし。受講させてください。よろしくお願いします、美良先生」
「おお、そうかね。やはり、[いい本に巡り会う]という最初が肝心じゃな。こちらこそよろしくお願いするよ。それでは、早速次の本だが・・・」
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